渚の一時

シィータソルト

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脚が……!!

第7話

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「やっぱり脚が生えた」

 冷静に自分の脚を見るテトラ。人魚のひれが人間の脚に変わった要因は何だろう。

「おそらく、人間のものに触れているからね。人間の食べ物を食べている。それに人間とキスをした。人間とキスをしたことが大きな要因だと思う。人間の体液が私の体で反応を起こして人間の脚が生えてきたのだと思う。有理紗との触れ合いが人間世界への道だとは。これで有理紗と地上で過ごすことができるのね。有理紗に言ったらどう思うかしら。けど、水に浸すと元の人魚のひれに戻るのよね、不思議。完全に人間になったわけではないのね」

 テトラは脚を岩に座りながら脚を水に浸したり、上げたりした。あと、自分の意志で地上でも人魚のひれのままにすることもできるようだ。今日、有理紗にバレなかったのは、テトラが人魚のひれのままにしていたからだ。明日、有理紗に言ったら驚いてくれるかな。どんな反応をしてくれるだろう。楽しみだ。今日も岩陰に隠れて流されないように海藻で巻き付けてお休みなさい。


 朝5時に目が覚める。テトラはふわぁとあくびをして伸びをする。今日も無事、何にも襲われることなく眠れた。どうしても無防備で寝ているから外敵から襲われる可能性も否めないのだ。さて、有理紗は何時に来るかな。いつも、7時くらいに来るからあと2時間はある。とりあえず、朝ごはんを食べることにしよう。海に潜り、海藻をちぎる。

「いただきます」

硬い海藻に齧りついてちぎり、よく咀嚼する。消化を良くするためだ。今日は小魚は取れなかったため、海藻だけを食べる。有理紗の弁当の味を知ってからは、海藻だけはひもじいと感じるようになった。今までは食に対して関心なんてなかったのに。お腹が膨れてくれさえ良かったものが、味が良いものを求めるようになった。海藻も旨味があるだけあるが、毎日食べていれば飽きが来る。あの卵焼きという甘くてふわふわしたのがお気に入りだ。ケーキも美味しかったなぁ。甘いものが好きなんだなきっと。あ、でも唐揚げも美味しかった。小魚とは違った肉感で。

 硬い海藻で歯を磨いて、珊瑚の櫛で髪をとかして身支度をする。そろそろ、6時。

歌を復習しよう。有理紗が教えてくれた歌を空いた時間で復習している。有理紗はすぐ覚えられるから天才だって言ってくれるけど、歌うのが好きだから何度でも歌う。私は本当歌無しでは生きられないくらい歌うのが好きだ。反復練習あるのみ、それが上達の道。何より好きだから。苦なんてない。時間は瞬間的に過ぎていく。


~♫

有理紗の歌声が聴こえる。

~♫

私もユニゾンをして応える。そして、最後まで一緒に歌いきる。

「おはよう、テトラ!!」

「おはよう、有理紗」

いつもの有理紗の挨拶だ。日に日に明るくなってきているのは私のおかげらしい。この脚のこと言ったら、もっと明るくなってくれるかな?

「あのね、有理紗。聞いて欲しいことがあるんだけど」

「ん? 何々??」

「実はね、脚が生えてきたの」

私は岩の上に乗り、脚を虹色に輝かせた。そして、私の人間の脚を見せた。有理紗はその場から飛びのけて驚いた。

「嘘!? テトラ、脚生えたの!?」

「うん、私が人間の脚が生えるようにと念じている間は人間の脚になることができるようになったの」

「すごいじゃん!! これで一緒に海以外に出かけることができるようになるね」

「私も有理紗と人間の世界を一緒に出掛けてみたいと思っていたんだ」

「触らせて、テトラ」

「いいよ」

手を伸ばして、有理紗は私の人間の脚を触ってくる。ピクン。くすぐったい。

「くすぐったいよ、有理紗」

「本物だ……薬飲んだの?? あれ? でも、そうしたら声と引き換えに……だよね?」

「うん、ある意味、薬飲んだかもね。有理紗とキスしていて唾液を交換しているから人間の体液が薬になったのかもしれない」

「そっか、口つけるだけでも唾液ってつくよね。舌を絡ませる大人なキスをしていないのに唾液交換って何だかえっちぃね……」

「ははは、確かに。でも、有理紗からの唾液、一緒に食べたものの味がしたよ」

「実はそれを狙って、ケーキ作ってきたというのもあるんだよね~えへへ」

「一緒に出かけられたら、ケーキみたいな美味しいものたくさん食べられる?」

「お小遣いがそんなにないから、たくさんはごちそうできないけど……」

「やった~。また未知なる美味しいものにありつけるのね。甘いものが一杯食べたいな」

「じゃあ、デザート巡りしよっか。今日はお金持ってきていないから明日からでも行く?」

「行く行く!!」

「決まりだね。何が良いかな。クレープ、タピオカジュース、パンケーキ……この辺ならこれくらいなら御馳走できるよ」

「どれが一番食べててお腹一杯になれるかしら?」

「ボリュームがあるって言ったら、パンケーキかな。生クリームが凄いメニューがあるんだ」

「そうなんだ。じゃあ、そこにしましょ」

「じゃあ、決まったことだし、歌おうか」

「うん。歌いましょう」
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