【完結】炎風、銀箭に変ず

黄永るり

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代理王①

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 シャアラの父・アルドたち一族の本拠地は草原の国・アジュジャール王国の王都にある。
 一族は代々、王族や貴族たちとも取引したりする大商人の家系だ。
 そのアジュジャールでは雨に恵まれた草原の国として有名だった。王都にも近くのかわから引かれた運河から大きな池が作られているくらいだ。  
 たまに雨が降らないことはあったが、今年は異常に降らない大旱魃の状態が続いていた。
 雨乞いの祭りや儀式が各地で相次いだが、一向に降らない。
 王都の水瓶と言われた貯水池も干上がりかけてしまい、近くの川も川なのか溝なのかよくわからない細さになってしまっていた。
 アジュジャール王は頭を悩ませ、臣下たちに過去の記録から旱魃が起こった際に、時の王が何をして雨を降らせたのか調べさせた。
 もちろん最後の手段は自分自身が祭壇を祭って雨乞いの祈祷をすることだが、それをしても一滴の雨も降らなかったら己の治世を糾弾されることになってしまう。
 だからおいそれとはその博打のような手段を使いたくなかった。
「このままでは国民全員が干上がってしまう」
 家臣たちも土木や農業関係に関係のない役人まで借り出して、過去録を洗い出した。
 結果、どうなるかはわからないがある記録を探し出した大臣がいた。
「それは何ですか?」
 天幕の中の誰もが嫌な予感しかしなかった。
「大臣が見つけたのは『代理王』の記録だったらしい」
「代理王?」
 首を傾げた。
「そうだ。実は大昔そのような制度があったらしい」
 現王朝になってからは一度も使われたことがなかったから、誰も知らなかったが。
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