【完結】炎風、銀箭に変ず

黄永るり

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創世神話①

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 中央大陸に一つの伝説があった。
 その昔、世界に何もなかったころ天から二柱の男女の神が地上に降り立った。
 女神アラーディーはまずこの世に地上を大地を創りたもうた。
 そして男神ビハールは地上を取り巻く豊饒の海を創りたもうた。
 二神は協力して地上と海とに数多の命を生み出した。
 そうして太陽と月、星々も創りたもうた。
 最後に二神は夫婦となりて自らのエネルギーを交わらせ、間に一柱の女神をもうけた。
 しかし、その女神が生まれた途端、せっかく緑と命に満ち溢れていた大地に砂の大地が出現した。
 大地を創りたもうた女神は、生まれた不毛の大地に涙し、天へと還ってしまった。
 残された海の男神は、不毛の大地の中にも何とか水場をと水脈を砂の下に行きわたらせた。そして妻の後を追って天へと還っていった。
 地上に残された女神サハーリーは己のみを残していった親神を恨みに思った。
 しかし、母神が創りたもうた大地に不毛の地を創り出したのは己のせいだと自らを責め立てるようになった。
 何とか自らの力で不毛の大地がこれ以上広がらないように、周辺を風と緑で自然の柵を作った。
 そうして大地も海も砂漠も一定の命が生み出せるサイクルとなった時、残された女神は最後に地上に生まれた人間の中からふさわしいものを三人選んだ。
 一人は母神の大地のエネルギーを受け継がせ、二人目には父神の海のエネルギーを引き継がせ、そして三人目には自身の砂漠のエネルギーを引き継がせた。
 そうして三つに分かれた神の力を受け継いだそれぞれの一族に、大地、海、砂漠それぞれを見守らせることにした。
 三人の人間に神の力を分け与えた女神は、己の役目は終わったとばかりに天へと還っていった。
 これが今も残る三神による天地創造の話である。

 そこから大地の女神を奉じるアラーディー一族、海の男神を奉じるビハール一族、砂漠の女神を奉じるサハーリー一族と三つの一族が代々それぞれの神の力を受け継いでいる。
 シャアラはその大地の女神の一族アラーディー家の末裔だ。
 アラーディー家は代々、砂漠に近い草原の国を中心に世界中を駆け巡る商人の一族で、常に世界中を行き来するからこそ大地を見守ることができる。
 海のビハール一族は、大陸南部の港からさらに南下したところにある涙型の島に拠点を置いて海をいく船を守る傭兵団を家業としているらしい。
 そして砂漠のサハーリー一族は砂漠一帯の国々でも一番大きい国を統べる王と王族として砂漠の中央に位置し、唯一神と人間がやりとりできるという砦の管理人をしている。
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