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終業式
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「深水さん」
三学期の終業式の日のことだった。
帰ろうと鞄に持ち物をまとめていると、クラスで特に仲が良いわけでもなかった女子のグループに机をぐるりと取り囲まれた。
紺乃自身はクラスで特定の女子のグループに入っているわけでもなかったので、突然のことに内心驚いていた。
(私、何かやらかしたかな? それともこの人たちの興味をひいてしまうようなことをしたかな?)
表情を変えないまま思考を巡らせていると、グループの主である有坂琴音がニコニコしながら紺乃に顔を近づけてきた。
「深水さん、彼氏できたの?」
「は?」
思わぬ質問にどう対応したものか一瞬反応に困った。
「最近、図書館で会ってる人」
「勉強を教えてもらってるみたいだけど」
「大学生みたいだけど」
「深水さんにお兄さんっていたの?」
「従兄弟とか、親戚とかじゃないよね?」
一斉に琴音の取り巻きたちも興味深げに紺乃に話しかけてくる。
(ああ、そうか)
紺乃は琴音たちに囲まれたことに妙に納得した。
クラスの中で一番「誰と誰がつきあって、誰にはどんな彼氏がいて、どんな彼女がいて」という情報に詳しいグループだったことを思いだした。
いずれ図書館やカフェでカイリに勉強を教わっていることは、クラスメイトや学校の先生の誰かにはバレるだろうとは思っていた。
バレて何か困ることはないとも思っていたので、カイリとの関係を隠さなければとか秘密にしなければとヒヤヒヤしていたわけでもなかった。
ただここまで早くバレるとは思わなかった。
でも、まあ唯一の救いが今日が終業式で中学二年生のクラスが終わるということだった。
ここでカイリのことを琴音たち有坂グループに話したところで、四月にはクラス替えがある。
有坂グループも空中分解して、またそれぞれの新しいクラスでグループを作っていくのだろう。
だからここでカイリとの関係をどう思われようと、四月の新しいクラスになってしまえば関係ない。
そういう噂を流されたところで、そう面倒なことにもならないだろうと予測できた。
予測できたところで紺乃は静かに頷いた。
「どういうこと?」
「やっぱり彼氏なの?」
「つきあってるの?」
周囲の距離がさらに縮まってくる。
「今は高校受験もあるから勉強を教えてもらっているだけだけど」
「じゃあ彼氏なんだ?」
断定してくる。
「そうだね」
紺乃もあえて否定せずに頷いた。
「大学生?」
「そう」
「どこで知り合ったの?」
「知り合いのカフェ」
「どっちから告白したの?」
「向こうから」
「彼氏の名前は?」
「さすがにそれは……」
疾風怒濤の質問攻めが始まった。
紺乃はそれらに応えながらも呆れた。
(早く帰りたいのに)
面倒くさいことに巻き込まれたな。
と思ったが、後の祭りだった。
琴音自身が部活の練習で顧問に呼びだしをくらうまで質問応答ラリーは続いた。
三学期の終業式の日のことだった。
帰ろうと鞄に持ち物をまとめていると、クラスで特に仲が良いわけでもなかった女子のグループに机をぐるりと取り囲まれた。
紺乃自身はクラスで特定の女子のグループに入っているわけでもなかったので、突然のことに内心驚いていた。
(私、何かやらかしたかな? それともこの人たちの興味をひいてしまうようなことをしたかな?)
表情を変えないまま思考を巡らせていると、グループの主である有坂琴音がニコニコしながら紺乃に顔を近づけてきた。
「深水さん、彼氏できたの?」
「は?」
思わぬ質問にどう対応したものか一瞬反応に困った。
「最近、図書館で会ってる人」
「勉強を教えてもらってるみたいだけど」
「大学生みたいだけど」
「深水さんにお兄さんっていたの?」
「従兄弟とか、親戚とかじゃないよね?」
一斉に琴音の取り巻きたちも興味深げに紺乃に話しかけてくる。
(ああ、そうか)
紺乃は琴音たちに囲まれたことに妙に納得した。
クラスの中で一番「誰と誰がつきあって、誰にはどんな彼氏がいて、どんな彼女がいて」という情報に詳しいグループだったことを思いだした。
いずれ図書館やカフェでカイリに勉強を教わっていることは、クラスメイトや学校の先生の誰かにはバレるだろうとは思っていた。
バレて何か困ることはないとも思っていたので、カイリとの関係を隠さなければとか秘密にしなければとヒヤヒヤしていたわけでもなかった。
ただここまで早くバレるとは思わなかった。
でも、まあ唯一の救いが今日が終業式で中学二年生のクラスが終わるということだった。
ここでカイリのことを琴音たち有坂グループに話したところで、四月にはクラス替えがある。
有坂グループも空中分解して、またそれぞれの新しいクラスでグループを作っていくのだろう。
だからここでカイリとの関係をどう思われようと、四月の新しいクラスになってしまえば関係ない。
そういう噂を流されたところで、そう面倒なことにもならないだろうと予測できた。
予測できたところで紺乃は静かに頷いた。
「どういうこと?」
「やっぱり彼氏なの?」
「つきあってるの?」
周囲の距離がさらに縮まってくる。
「今は高校受験もあるから勉強を教えてもらっているだけだけど」
「じゃあ彼氏なんだ?」
断定してくる。
「そうだね」
紺乃もあえて否定せずに頷いた。
「大学生?」
「そう」
「どこで知り合ったの?」
「知り合いのカフェ」
「どっちから告白したの?」
「向こうから」
「彼氏の名前は?」
「さすがにそれは……」
疾風怒濤の質問攻めが始まった。
紺乃はそれらに応えながらも呆れた。
(早く帰りたいのに)
面倒くさいことに巻き込まれたな。
と思ったが、後の祭りだった。
琴音自身が部活の練習で顧問に呼びだしをくらうまで質問応答ラリーは続いた。
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