上 下
15 / 30

準備

しおりを挟む
 婚礼の宴前日、クティーは婚礼の宴に先だって、計画の遂行のために婚礼の儀式が行われる広場の飾りつけに、パタを始めとする村の青年や娘たちとともにやってきていた。
 パタが的確に指示して青年たちはどんどん、儀式に必要な祭壇を用意していく。
 そして娘たちは周囲に鮮やかな色の絹布をはっては、そこに花を飾っていく。
 
「クティー、あなたの支度は私たちが手伝うから心配しないで。さあやりましょう」
「はい」
 パタは柄杓を片手に持ち、もう片方に小さな木樽を抱えながら、クティーの後をついてくる。
 パタの後ろにいる青年たちは、クティーとパタを囲みながら周囲に目を配っていた。
 花婿側に何をしているのか悟られないようにするためなのだろう。
 
「大丈夫よ。一応、清めの水を撒いているだけっていってるから」
「ありがとうございます。でも、水とは言えない色ですけどね」
「いいのいいの。細かいことは気にしないで」
「もうデザインは考えてあるの?」
「はい。大体は」
「じゃあ後をついていくわね」
「わかりました」
 クティーは、自分が歩く後から樽の中身をまくようにとパタに言うと、手にした棒切れで細い線を描いて行った。

 それは植物をモチーフにした文様のようだった。
 丸くゆるやかに描かれていく線に沿って、パタは樽の液体を流していく。
 液体は何かの植物を煎じたようなどろどろとしたものだ。
 そして流された液体の線を、パタの後ろからついてくる村の青年が上から土を被せていく。
 幾つかの樽の中身を空にして、ようやく広場に描き終わった。

「これで終わりかしら?」
「そうですね。これで終わりです」
「上手くいくといいわね」
「本当に」
「文様が消えないように、広場に常に見張りを置いておくからね」
「お願いします」
 文様が消えてしまったり、めちゃくちゃにされてしまっては意味がなくなってしまうのだ。
 そこがこの計画の肝心要なところだった。
しおりを挟む

処理中です...