上 下
24 / 30

採掘場

しおりを挟む
 シャストラたちが向かった先はルビーの原石の採掘場であった。
 それも、良質の原石が採れる上流の東の採掘場だった。
「王子さま、こちらでございます」
 一番大きな仕掛けの前で村の若者が一人で待っていた。

「ありがとう。では始めよう」
「はい」
 そう言って手助けしようとした若者の手をシャストラは押しとどめた。

「これは僕が一人でやらなくてはいけないことだから、一人でやるよ。道具だけ置いておいて」
 シャストラは振り返った。
「というわけで、皆は村の国境線をなくすほうを手伝いに行ってくれてもいいよ」
「いえ、私は王子さまの護衛官です。王子さまをお一人で放っておくわけには参りません」
「もう村に敵はいないと思うんだけどなあ」
「いなくても、です」
「グラハ」
 呆れた顔で年上の頑固な従者を見上げる。

「ふふふ。王子さま、この従者は私よりもなかなか頑固者ですね。では、マルガ殿にはこの者たちを連れてパタたちと合流していただきましょう」
「そうすることにいたしましょう」
 マルガは少し不満そうな若者たちを連れて元来た道を帰っていった。

「じゃあ、グラハは少し離れていてくれないかな? 集中したいから」
「わかりました」
 グラハは川から数歩離れた。
 しかし、主との距離は剣で守れる範囲から決して逸脱してはいなかった。
 そしてさりげなく周囲へ気を配ることも忘れていなかった。
 
「じゃあ、始めるかな」
 シャストラは、仕掛けの底の泥水をざるでさらって引き上げる。
 そしてその中の泥水を川の横に置かれていた盥に入れた。
「よしっと」
 たらいの泥水を平らにすると、そこからさらに小石と原石と思われるものとを分けていく。
 一つ一つ丁寧に、選り分けていく。
「こっちは小石でっと」
 そうして何度も井戸から泥水を引き上げては、小石とルビーの原石を選別する。
 その細かい作業を延々と繰り返していった。
しおりを挟む

処理中です...