元勇者の俺は、クラス転移された先で問答無用に殺されかけたので、魔王の部下になることにした

あおぞら

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第1章 魔王軍入隊

第3話 何故か反逆者になりました

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 俺の虚しい笑いのみが響く部屋の中で、アドルフが震えた声をあげた。

「……き、教皇様……このステータスは……」
 
 しかしその声はまるで何かを恐れる様な恐怖を孕んだ声だった。
 『何にビビったんだ……?』と俺が不思議に思っていると、教皇が口を開いた。
 
「……其方……名を浅井優斗と言ったな」
「え、あ、はい」

 いきなり話しかけられたことに驚き少し吃ってしまった。
 だがその後の教皇の言葉で俺は更に混乱することとなる。

「お主……何者だ……? もしや魔王のスパイでは無いだろうな?」
「は!? そんな訳ないじゃないですか! 今皆と転移させられてきたんですよ!?」
「なら何故チートスキルがないのだ?」

 ……知らんよ。
 いや可能性としては一つあるんだが……と言うか確実にそうなんだが、まだギリギリ確定してないじゃん。

 だがそんな俺の思いも虚しく、俺の事のはずなのに俺を無視してどんどん話が進んでいく。
 
「教皇様! コイツはもしかしたら魔族かもしれません! 魔族ならこの様におかしなステータスにする事も可能です!」
「だがお主よりもLevelが高くて鑑定がしにくいと言う可能性は?」

 教皇がそう問うも、アドルフは自信満々に否定する。 

「いえ、それはあり得ないでしょう。人族では私よりもLevelの高い者は五〇〇年前の魔王討伐同行者と三〇〇年前の同行者のみです。その中でも五〇〇年前の者は全員死んでおり、三〇〇年前の者も半分は死んでしまっているので、あり得ないでしょう」
「うむそうか……では此奴――浅井優斗を魔王軍のスパイとし、人類の反逆者とする! そこで……だ。勇者白川よ――」
「何でしょうか?」
「奴は元の世界ではどんな者であった?」

 おい、やめろよ。
 白川ですら俺の事なんて多分殆ど知らない背景モブの鏡だぞ。
 お前が言うと間違いなく疑いが晴れるどころかより真実味が増すじゃないか。

 そしてそんな俺の予感はピッタリと、それはもうドンピシャと言える程に当たる。

「彼は……目立たない地味な人でした。クラスに彼の友達がいない様ですし、話した所を授業以外で聞いたことがありません。なので彼に成りすまして潜入するのは十分可能かと」

 何で俺が魔王のスパイと断言したんだよ。
 もう少し俺が生きてる事を信じろよ。

 だがまたもや俺の思いなど届く事なく教皇は俺を指差して大声で命令する。
 
「これではっきりとしたな……」
「ちょ、ちょっと待って下さい! 俺は魔王のスパイではありません! も、もう一度鑑定をさせて下さい!」
「無理だな。反逆者の話を聞く必要などない」

 俺は教皇に頼み込むが、全然取り合ってくれなかった。
 それどころか処刑を楽しんでいるかの様に笑みを浮かべている。
 多分俺を処刑する事で勇者達に叛逆の意思を抱かせない様にさせているのだろうが、性格が悪いな。
 と言うか俺が魔族じゃないことに絶対気づいているだろコイツら。
 だからなのか知らないが、アドルフや顔は見えないが雰囲気で聖騎士達が笑っているのをビンビンに感じる。

「お前は人類の裏切り者だ、忌々しい魔王の手先め!! 勇者たちよ、最初の試練として反逆者――浅井優斗あさいゆうとを処刑せよ!!」

 その瞬間に聖騎士達だけでなく、何故か加虐の笑みを浮かべた勇者で元クラスメイト達も一斉に襲いかかってきた。
 しかしこいつらに操られた痕跡はない。
 大方俺で自分の力を試そうとしているんだろう。

 あーコイツらダメだな。

 こうして冒頭に戻る。

 




***





 俺は向かってくるクラスメイトを眺めながら頭をかく。

「あーめんどくせぇ……何で俺が救った世界の子孫にスパイとして処刑されないといけないんだよ……。はぁ……昔の仲間に会いたいなぁ……」

 俺は取り敢えず目の前で大剣を振り下ろす名も知らない男子生徒の大剣を軽々と掴む。
 まさか無能だと思っていた俺に軽々と受け止められた元クラスメイトは驚愕に目を見開く。

「なっ……ッッ!? どうしてお前如きが俺の大剣を受け止められるんだ!? 俺の筋力は160だぞ!?」
「お前ら勘違いしたんだよなぁ……」

 俺は大剣を握り潰すと死なない様に腹を軽く軽く・・・・デコピンで弾く。
 するとその元クラスメイトはまるで紙切れの様に吹き飛んで壁に激突してしまった。
 しかし俺はそれだけでは止まらず、近くにいた聖騎士や勇者共を片っ端から死なないように吹き飛ばしていく。
 すると勇者たちから「殺さないでくれ……攻撃しないでくれ……」と言い出すアホが出始めたので、そいつらを優先して吹き飛ばしながら怒鳴る。

「殺ろうとするなら殺られる覚悟もしておけどアホ共がッッ!!」

 その言葉に腰を抜かす勇者たち。
 いや聖騎士達の中にも何人か倒れている奴らが居るな。

 まさか自分が遊びで殺ろうとしているのに殺られるのは嫌と言うのはありえないだろ。

「まさかただチートスキルを持っていないだけで勝手に呼んでおきながら殺そうとするなんてな。これが俺の守った世界の子孫達か……」
「……おい貴様、一体何を言っている? お主の様な小童が守っただと? 前回の魔王討伐は三〇〇年前だぞ……?」

 怒りに打ち震えている教皇に俺は一つだけ聞く。

「三〇〇年前? 因みに今グラン歴何年だ?」
「今は四五〇〇年だが……何故人間界のこよみを知っておる? やはり魔王軍のスパイだからか?」
「違う違う。だって―――」
 
 俺は真実を告げる。




「―――俺がグラン歴四〇〇〇年に魔王を倒した元勇者だからな」





 それと同時に自身のステータスを公開する。
 勿論スキルなどは伏せて純粋なステータスのみだが。

————————————————
浅井優斗
人間 17歳(37歳)
称号:元勇者 大魔王討伐者 歴代最強の勇者 人外の努力家 容赦なき者

《スキル》
――  ――

ステータス
Level:1000(MAX)
総合値:3290000(GOD級)
体力:590000
魔力:980000
筋力:570000
防御力:520000
敏捷性:630000
————————————————

「「「「「「「「「「「「「「「………………は?」」」」」」」」」」」」」」」

 俺のその言葉とステータスに再び場の空気が凍る。
 しかしすぐに近くにいた聖騎士やアドルフは土下座でもするかの様な勢いで謝り出した。

「すいませんでした勇者様!!」
「ま、誠に申し訳ありませんでした!!」

 そう言ってくるが、そんな事俺が知ったことではない。
 第一俺を雑魚と決めつけて話を聞かなかったコイツらが悪いからな。

「お前達にはがっかりしたぞ。まさかこれ程腐っていたとはな……」

 決してこの場でのことだけを言っているわけではない。
 多分今この世界はそこまで魔王に何かされているわけではないと俺は感じている。
 その理由としては、俺が既に先程の時間でこの世界の半分を感知したのだが、人口が増えているだけで全然魔族の気配がない。
 これは魔王軍が侵略などしていないと言う決定的な証拠だ。
  
 だがそのくせして人がどんどん死んでいっている。
 多分何処かと戦争でもしていて勇者達を兵器として使いたかったのだろう。
 その為だけに勇者と煽てて召喚したと……ありえないな。
 もしもかつての仲間たちが居ればこんなことにはならなかったんだろうが……

「もうかつての仲間も死んでしまった様だし……クラスメイトは薄情にもすぐに俺を殺そうとする奴らにこの国の王は欲に飲まれた愚王」
「き、貴様……い、いえ、勇者様ッッ!! 申し訳ありませんでしたッッ!! まさか勇者様だったとは梅雨知らず……」
「もし勇者じゃなかったら殺したたんだろ? 使えない奴にお金を使いたくないもんな?」
「い、いえ別にそう言うわけでは……」
「黙れ」

 お前など話す価値もない。
 これがアイツの子孫だと考えたら鳥肌が立つ。

 俺はかつての友人の一人であった王の事を思い出しながら心の中で謝る。

 すまないエルド……今回は人間の味方は出来そうにない……。

 俺が懺悔していると、先程戦闘に参加していなかった白川が近づいてきた。
 その表情は微笑を浮かべており、正直言ってすごく気持ち悪い。
 キモい笑みを浮かべた白川は俺の目の前に来ると、

「別に君を疑っていたわけじゃないんだ。君が裏切り者じゃないか試していたのさ」

 そんな巫山戯たことをぬかす白川に俺はイラッとしながらも話を続ける。
 もし仮に、これが本当であったのなら俺も黙っていたのと暴力を振るったことを謝らないといけないかもしれないからな。

「ならどうして皆殺す気で来たんだ? 殺気が出まくってたぞ?」
「だから君を試すためさ」
「ならお前が俺と一対一で戦えばよかったじゃないか。お前が一番強いんだから」

 俺がそう言うと、奴はキョトンとした表情になる。
 そして次の瞬間に意味が分からないとでも言う風におかしな事を言い出した。

「何を言っているんだい? 何故真の勇者であるこの僕が戦わなければならない? そんなの雑魚どもにやらせておけばいいんだよ。だから――君も僕の駒になってよ。飽きるまで大切にするからさ」
「…………は? 何言ってんだお前。―――と言うかお前俺を本気で殺す気だったな? お前スキル使っただろ?」

 多分勇者のスキルには扇動系の物もあるんだろう。
 じゃないといきなり平和な世界にいた子供が殺人を行えるわけがない。

 俺が白川を睨んでいると、奴は突然無表情になり、今までもコイツと同一人物かと疑ってしまうほどの呪詛を吐き出し始めた。

「当たり前じゃないか。この世界に勇者は二人も要らないんだよ。君が勇者だってことは、僕の【真実の目】が見抜いていたんだよね。だから殺そうとした。この世界の主人公は僕一人で十分だ。君みたいな冴えない人間が同じ勇者とは思いたくない」
「……唯一まともだと思っていた奴が一番腐っていたか。此処で殺してもいいが……まだお前もこっちに来たばかりだし今回は見逃してやるが、次に俺の前に現れたら容赦しないからな?」

 俺はそう脅してから最後に白川を皆の倍くらいの力を込めて吹き飛ばし、転移でその場を後にした。











「……絶対に許さないぞ……浅井優斗……ッッ!!」



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