元勇者の俺は、クラス転移された先で問答無用に殺されかけたので、魔王の部下になることにした

あおぞら

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第1章 魔王軍入隊

第14話 魔王軍幹部との手合わせ(ルドルフ抜き)①

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「———【闘気解放リリース・オーラ】」
「あ?」
「あれ~?」
「如何言うことだ?」
「……舐められていますね」
「………」

 俺のこの技に幹部全員が顔を顰める。
 何故なら、これは【魔闘気】の下位互換で、誰でも習得できる【闘気】の中でも更に初期の技で、効果は単純に自身の身体能力を少し上げるだけだからだ。
 そのためオーラが身体の外に出ることはないので見た目は何も変わらない。
 側から見れば完全に舐められていると勘違いしてしまうだろう。

「ふざけやがって……! いくら元勇者だからって舐めんじゃねぇぞ!」
「流石に~それは~私たちを舐めすぎでは~?」
「舐めていると痛い目を見るぞ」
「……私達はこれでも魔界で最高峰の実力を持っていると自負しているのですが……?」

 そう言って俺を睨む幹部達だが、そんな事を言われても……

「魔闘気なんて使ったら皆重傷では済まない気がするんだよなぁ……」

 その言葉に更に殺気立つ幹部達。
 心なしか魔闘気のオーラが大きくなっている気がする。
 そんな事を感じていると、アリシアが戦闘で初めて口を出してきた。

「優斗、【魔闘気】を使いなさい。これは命令よ」
「い、いやだが……」
「もしもの時はシャナが治すわ。だから遠慮なくやりなさい」

 アリシアがそう言うので、幹部の方を見てみると、皆首をブンブンと縦に振っていた。
 まぁそこまで言うなら使うか。

 でも———

「——どうか壊れないでくれよ?」

 その瞬間に辺りを深淵を思わせる真っ黒なオーラが亜空間を包み込んだ。





***




 亜空間を包み込んでいたオーラは意識して己の中に閉じ込める。
 すると辺りは元通りの空間に戻り、俺の体の周りに薄く黒いオーラが漂っている。

「ふぅ……久しぶりだなこのスキルを使うのも」

 俺は自分の手をグーパーして力を確かめると共に、少し体を動かしてみる。
 自分の体ではなくなったかのように軽く何でもできそうな全能感が俺の体を包み込む。
 魔闘気とは、瘴気を完全に克服した超越者の証の様な物で瘴気を己の体に取り込み、魔物とならずに力だけを強化する特殊な闘気だ。
 ただ、この状態だと回復魔法は効きずらいし、精神が異常に脆くなると乗っ取られると言うデメリットもある。
 まぁ俺にはそんなデメリットなど微々たる物だが。

「それじゃあ……まずはお前からだな」
「———え?」

 俺は何の予備動作もせずに一瞬にしてフリーの背後に回り込むと、腕を首に回してすぐに気絶させる。
 これは実力が高いと殺してしまう可能性があるのだが、コイツら程度なら絶対に殺さない自信があるので問題なしだ。
 何故一番にフリーを倒したかと言うと、まず純粋に俺が魔法よりも近接戦闘のほうが得意なため魔法に対応するのが面倒なのと、彼女が幹部たちの指示役だったからだ。

 戦争で勝つのなら大将を殺った方が勝率が上がるだろ?
 それと同じで彼女以外は彼女の命令を聞く兵士なわけで……優先順位は勿論低い。
 しかし次は回復要員のシャナが邪魔だな。
 俺は次にターゲットをシャナに決めて背後に移動しようとすると……

「あはっ☆ 楽しくなってきちゃった☆」

 そう言って感知できていないはずの俺のいる背後に顔が向き、目が合うと突然体が動かなくなった。
 俺は体を動かそうとするがまるで全身を何処かに縫い付けられているかのようにびくともしない。

「あはははっ☆ つ~かま~えた! これから私が沢山愛してあげるからね?」

 そう言うと濁って光を失った目で俺を見ながら光悦とした表情を浮かべる。
 
「それはお断りしようか……なっ!」

 俺は体を触られそうになり、背筋がめちゃくちゃゾクゾクしたので、オーラを体内から溢れさせて、シャナの呪縛を無理矢理解く。
 そしてそのままの勢いで混乱中のシャナの鳩尾に一撃。
 シャナは声を出す間も無くぐったりとして気絶してしまった。

 ふぅ……危ねぇ……マジで怖かったぜ……。
 さすが狂愛とはよく言った物だ。
 だが一体どう言ったスキルだったんだ?
 魔眼のような感じだったが……まぁそれは後で聞くとするか。

「さて……次は誰にしようかな?」

 あと残っているのはどれも近接戦闘の得意な三人。
 流石に二人がやられたこともあって警戒しており、先程の二人のように簡単に気絶させることは難しい。
 まぁ二人に比べての話だが。

 俺は真正面からウルヘイムに突撃。
 そして渾身の一撃をお見舞いする。
 
「はぁぁぁぁ!! 【巨人の一撃】ッッ!!」
「ぐッ―――!?」

 この技は魔闘気を体重に変換して一時的に巨人と同等の重さにすることによってパワーを補い、その全体重を込めたパンチを繰り出す、謂わば反則技チートとすら言える破壊力を持っている。
 いくら巨人族とは言えど、圧倒的なステータス差もあるため、ウルヘイムが弾丸のような速度で吹き飛び亜空間の壁に激突。
 
「ウルヘイム!! しっかりしろ!」

 ゲルブがそう呼びかけるが反応はなく、既に気絶していた。

「くそッ―――オラッッ!!」

 ゲルブが俺に向かって回し蹴りを放ってくるが、俺はそれを片手で受け止めると地面に叩き落とす。 
 この亜空間の地面も壁も人間界や魔界とは比べ物にならないほど固く、先程のウルヘイムのように一度ぶつかるだけで気絶してしまうほどの強度を誇っている。
 その証拠に、今格好の力で叩きつけたにも関わらず、陥没どころか傷一つついていない。
 そのため幹部一防御力の高いウルヘイムですら一撃だったのに、勿論ゲルブが耐えきれるはずもなく……あっさりと気絶してしまった。
 
 俺がゲルブの足を離した瞬間――

「―――っ!」
「…………チッ」

 俺は物凄い速度で体を前に倒しなにかから回避する。
 しかし避けれたと思っていたら俺の後頭部から生暖かい物が流れていることに気づき、触れてみるとそこにはパックリと鋭利なもので斬られたような傷と共に血が俺の手にベットリとついていた。
 そしてその一瞬後に自分が斬られたことに気づく。
 振り向くと少し離れた所にタガーを二つ構えたエスラがおり、そのタガーには俺のものと思わしき赤い血がついている。

「マジか……ここまで完璧に気配を消せるとは」

 別に俺が警戒を解いていたわけじゃない。
 何なら感知も使っていた。
 それにも関わらず俺の感知網を潜り抜けて俺に攻撃を与えたのだ。

「やっぱり幹部最強の名は伊達じゃないんだな……なら此方も少しちゃんと戦わないとな―――【魔剣グラム】」
「…………ッ」

 俺は堕ちた聖剣――グラムを構えてその姿をタガーに変化させる。
 暗殺者系の敵にはリーチの長い剣はあまり相性が良くない。
 なのでグラムの性質の一つである【形状変化】を使って刃渡り三〇cm程の大きさまで小さくした。

 俺の剣が完成すると同時に再びテスラが音もなくごく自然な感じで姿を消す。
 それと同時に気配も消えるが、俺はテスラの進路を塞ぐように移動し、なにもない所にタガーを添えると、そこから驚いたように目を見開くテスラが現れた。

「ビンゴ。これで詰みだな」
「………どうして分かった?」

 初めてテスラの声を聞いたが、物凄く透き通った声をしていた。

「まぁ簡単だよ。この空間の中の全てを感知して見つけただけだ」
「…………そんな方法があったとは。完敗」

 そう言ってタガーを収めるテスラ。
 これで幹部との手合わせは終わりだ。
 次は―――

「――私の番ね。さぁやるわよ!」
「まったく……休憩もなしとか……とんだお転婆魔王様だな……」

 魔王であるアリシアとの対決だ。
 彼女は幹部とは強さの次元が違うので、流石の俺もフザケていたら負けかねない。
 ここは結構本気で行かないとな。


「「さあ行くぞ(行くわ)!! ―――【ファイアーボール】ッッ!!」


 極大の炎球が亜空間を呑み込んだ。
 
 

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