無能な悪役貴族様は元最強大罪人

あおぞら

文字の大きさ
1 / 12
第1章 才能皆無の悪役貴族

第1話 大罪人は悪役貴族に転生する

しおりを挟む
 ———ああ……俺は死んでしまうのか……。

 俺、ブラッドはそんな事を解しながら目の前に迫る剣をぼんやりと眺める。
 周りには俺が殺した大量の人間が所狭しと転がっていた。
 それを見て自身がしたことへの罪悪感が湧き上がってくる。

 結局何も成し遂げる事が出来なかった。
 そしてまさか俺はかつて守っていた人間から殺される事になるとは夢にも思わなかったよ。

 それは長年人間種と戦争状態にあった魔族と手を取り合おうとしたのが全ての始まりだった。    
 今殺されそうになっている所でこんな事を言っても信じれないだろうが、これでも世界最強の名を冠していたんだ。

 だから戦争にもよく駆り出されていた。
 しかし誰も俺を殺す事どころか重傷を与える事も出来ないので、常に逃げ惑う魔族を殺すだけ。

 だが俺にはもう限界だった。
 どれだけ心を殺そうが俺が人間である限り感情は無くならない。
 どんどんと俺の心はすり減っていった。
 
 そこで俺はどうにかして戦争に行かないで済む方法を思案していたが、魔族と手を取り合うしか道がない事以外に存在しない。
 俺は必死に頑張ったが———

 その結果がこれだ。
 俺は魔族のスパイと見做されて大罪人となり、晴れて人間種の敵となった。
 始めは所属していた国のみだったが、僅か2年で全人間種の敵となっていた。
 生憎世界最強のため、基本の事では殺されないが、死なないわけでも無い。
 だからヤバそうになったらやむ無く人間を多く殺した。
 それを10年も続けていたら『世界最恐の大罪人』なんて名前まで貰ったよ。
 こうして20年必死に生き残これだが、それも此処までだ。

 まぁでもいいか。
 これで楽になるなら。
 ああ、でも———

「出来れば……もう1度やり直したいなぁ……人生」

 そこで俺の意識は冥府へと誘われた。





***
(三人称)



 
「おい、クソメイド! 何なんだこれはッ!」
「す、すいませんっっ! す、すぐに直させてもらいます!」

 とある豪邸の一角で1人の醜く太った少年が、壊れた椅子を指さしてメイドを怒鳴りつける。
 その椅子はつい先程、メイドが部屋の掃除を終えた後に少年が壊したものだ。
 
 そう——簡単に言えばただのいちゃもんである。

 しかしメイドにはそれを指摘することなど出来ない。
 なぜならこの少年が雇い主の息子だからだ。
 そのことを知っている少年——レイン・アークボルトは自分のしたいようにする。
 そのため何人ものメイドが辞めていった。
 しかしある日、そんなレインに遂にバチが当たった。

 それは突然起きた。

 何とも情けないことに、自身のお腹に付いた脂肪で階段が見えず、階段で足を踏み外してしまったのだ。
 そして更に不幸なことに階段を転がり落ちた後に壁に後頭部を強打して気絶。
 そのまま意識を覚醒させることなく20日が過ぎ、遂に目を覚ましたのだが——

「一体ここは……俺は何故……」

 既にレインの魂は存在せず、その代わりにブラッドの魂が肉体に宿ることとなった。





***
(レイン(ブラッド)視点)




 俺が気がつくとそこは何もないひたすらに暗い空間が広がっていた。 
 
  何処だここは……よもや冥府か?
 それにしては何もないな。
 ん? あの光は……だが何故だがあそこに行かなければならない気がする……。
 俺はその光に向かって歩いて行き———

「———はっ!?」

 俺が目を覚めると、そこは一度も見た事がない様な豪華な部屋だった、
 いやブラッドは知らないと言った方がいいか。
 だが一応レインの記憶としては知っている。
 
 此処は聖剣王国の公爵家であるアークボルト家のレインの部屋だ。
 そして目の前で心配そうにしているのが、レインが辛く当たっていたメイドだろう。
 
 正直何が何だかよく理解できていないが、取り敢えず俺は多分転生したのだろう。
 俺の頭に知らない人間の記憶があるし、自身の体でも無いからな。
 
「……俺がこうなってから何日経った?」

 俺がレインの記憶に名前はないメイドに聞く。
 本当の口調はこんな感じではないのだが、下手に変えて怪しまれないようにするため、今後もこれで行こうと思う。
 と言うか普通に言おうとしたら何かに口調を変更された感じがしたのも1つの理由だが。
 話しかけられたメイドは一瞬ビクッと体を震わせるもすぐに話し始めた。

「に、20日ですっ!」
「……そうか、ありがとな」
「は、はひっ! ……へ?」
 
 何故かめちゃくちゃ驚いていたメイド。
 だがそんな姿など目には入っておらず、聞いた後はずっとレインの記憶を漁っていた。

 コイツの記憶では10月3日を最後に記憶がないから、20日後と言うことは……23日か。
 俺はメイドの言葉を聞いて思わず苦虫を噛み潰したような顔になる。

 これは……少し不味いかもしれない。
 まずコイツの記憶では家族仲は最悪らしく、こうして何日も意識がなくても1度も見に来ないほどらしい。

 そして何故不味いかと言うと、1週間後にその家族の中の1人、レインの弟との決闘があるからだ。
 この家には無能な長男のレインと優秀な弟の2人しか子供がいないらしい。
 そしてその弟が俺に次期当主の座を賭けて決闘を申し込んだそうだ。
 そしてプライドの高いこの馬鹿レインはそれを受けてしまった。
 これでやらなければ更に馬鹿にされると思ったのだろう。
 例えそれが絶対に勝てない試合だったとしても。
 まぁ俺からすればそちらの判断の方が馬鹿だと思うが。

 だが俺が半ばコイツの体を奪ったと言う事だから、その感謝とせめてもの償いとしてこの決闘には勝ってみせるとしよう。
 そして精一杯第2の人生を楽しく生きてみせる。
 その為にはまず……

 俺は7日後にある負け確の決闘にどうやって勝とうか思案し始めた。







***







「女神様、大罪人の転生を完了しました」

 とある神の部屋で1人の天使が部屋に唯一の椅子に座っている女神に報告する。
 女神はその報告を聞いて女神とは思えない悪魔の様な笑みを浮かべる。

「ありがとう熾天使セラフィム。これで私たちに歯向かう大罪人は断罪されました。魔族などと言う下等生物と和解しようなどと馬鹿な事を考えるのがいけないのです」
「ですが……本当に大丈夫なのですか……?」
「ん? 何がですか?」

 熾天使セラフィムは遠慮がちに女神に吐露する。

「いえ……転生などさせてしまって良かったのですか……? 幾ら難易度がおかしいと言われる『星剣学院』でも彼は世界最強ですよ? 私よりも強かったのに……」

 だんだん尻すぼみになる熾天使セラフィム
 しかしそんな彼女に女神はにっこりと微笑むと断言する。

「彼はすぐに死ぬでしょう。何故なら彼の転生した体は、地球で難しすぎると話題の『星剣学院』の中で圧倒的に弱い。いえ、無能と言った方がいいでしょうか? あの体には才能が一欠片ほどしかないので彼は強くなれません。それに世界の影響力もありますからね」
「まぁ女神様がそう言うのでしたらいいのですけど……」

  しかしこの時はどちらも予想していなかった。
 ブラッドが世界の強制力や才能など諸共せず、ストーリーに多大な影響を与えるとは———


————————————————————————————
 ルビ打つの大変だった……。
 当分ルビ打ちたく無い……どうせ打つ事になるんだろうけど。

 お気に入り登録よろしくお願いします。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい

空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。 孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。 竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。 火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜? いやいや、ないでしょ……。 【お知らせ】2018/2/27 完結しました。 ◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

転生したら幽閉王子でした~これどうすんの?

サクラ近衛将監
ファンタジー
 神様の眷属の過失が原因の事故に遭って死んだ桜庭雄一が異世界に転生したら、とある国の忌避すべき王子として幽閉されていた。  転生にはチートがつきもののはずだが、事故で死んだ者が300名を超えるために、個別にチートは与えられず、転生先の者の能力を生かせと神に告げられている。  「神の加護」ではないけれど、「恩寵」が与えられているので、当該異世界では努力を為した分、通常に比べると成果があるらしい。  これはとある国の幽閉王子に転生した男の冒険譚である。  原則として、毎週月曜日20時に投稿予定です。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...