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第1クエスト:勇者の幼馴染を連れ去られたと見せかけて救え

第2話 現状調査

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 転生したことを理解した俺は、次にここが何処なのか把握しなければならない。
 それによってこれからの生き方が左右されるからな。
 
 まず俺は自身の体を調べる。
 手は高校生の時よりも大分小さく、それでいて赤ちゃんよりは大きい。
 身長も100cmあるか無いかだろう。
 だから足も短いし勿論筋力もない。
 出来れば鏡で自分の姿を確認したいところだが……。

 パッと見たところ鏡らしきものはない。
 この世界では鏡は高価なものなのだろうか?
 仮にこの世界が【Brave Soul】の中なのだとしたら、鏡は諦めたほうがいいかもしれないな。
 見た感じこの家は平民の家なので、鏡があることは限りなく少ないのだ。

 なら取り敢えず自分の姿を見るのを諦めて、美人さんとこの体の子との関係を判明させるとしよう。
 俺は痛みを我慢しながら何かを探している美人さんに近づいて恐る恐る話しかける。

「お母さん……?」

 頼む、どうかお母さんであってくれ!
 そうじゃないと色々と面倒なことになるし、何より俺が恥ずかしい!

 俺は心の中で祈る。
 そんな俺の方を向く美人さんは、

「どうしたの、シンヤ? お母さん、今シンヤの痛みを取るための薬を探してるの。だから少し待っててね?」
 
 そう言って優しく頭を撫でてくれる。
 ふっ……どうやらこの賭けは俺の勝ちのようだ。
 しかし危なかったぁ……ほんとに違ったらどうしようかと思った……。

 俺は何度か深呼吸をして緊張を解す。
 さて、次は何を質問しようかな……。
 名前を聞くのは明らかに不審がられるだろうし、この家が平均的な機能を持っているのかなんて聞いたら子供っぽくないし……。
 あ、そうだ、俺たちが住んでいる場所と国を聞こう。
 それとついでに鏡がある場所も。
 そうと決まれば早速聞いてみよう。

「お母さん……今僕達が住んでる所って何処なんだっけ?」
「ん? どうしたの急に?」
「い、いや何となく気になっただけだよ」
「ふーん……まぁいいか。私達の家はブレイブ王国の王都にあるのよ。これでも平民の中では良いお家なのだからね?」
「へぇ~ありがとうお母さん!」

 成程成程、ブレイブ王国ね……【Brave Soul】の世界だなこれは。
 あのゲームでも主に舞台となるのはブレイブ王国だったし。
 でもまだこれだけで判断するのは早計かな?
 
「お母さん、この家に鏡ある?」
「ん? ああ、それなら洗面所にあるわよ」

 マジか!
 鏡は完全に諦めてたんだけどあるのか!

 俺は慣れない身体でトタトタと走る。
 うーん遅い、体が小さいから思ったように動かせないし一歩が小さい。

 俺は四苦八苦しながら何とか洗面所に着いた。
 そこには前世と同じとは言えないけれど、殆ど似ている様な洗面台とまぁまぁの大きさの鏡があった。
 俺は近くにあった台の様な物を使って鏡に映るところまで移動する。

 さぁ遂に俺の転生先とのご対面だ。 
 俺は鏡に目を向ける。

「…………転生前のアルバムの俺の顔に似てる……髪と眼の色以外」

 鏡には上の下くらいのまぁまぁ顔の整った前世で何度も見たことのある顔が写っていた。
 しかし目はお母さんと同じ赤っぽい色をしている。
 髪はお母さんの金髪と違って前世でも普通にいそうな茶髪だが。

 うーん、目も髪も色がぜんぜん違うのに違和感が殆どないな。
 こう……小さい頃からだからか、髪と眼の色が違うのもこう言う子なんだなと簡単に受け止められる感じだ。

 ペタペタと自分の顔を触ってみる。
 髪は前世とは違ってめちゃくちゃサラサラ。
 肌もニキビなんて1つもなく、もっちりプルプルで肌触り最高。
 まぁまだ子供だからそりゃそうな訳だが。
 
 俺は自分の顔をまじまじと見る。
 見た感じ5歳くらいか?
 だが何で5歳なんだろうか?
 転生と言えば、大体生まれて直ぐくらいがテンプレじゃ無い?
 まぁ俺にとってはどちらでも良いんだけどさ。

 俺は台から降りて再びお母さんのいるリビングに戻ってソファーに座る。
 ソファーも前世に比べて結構硬くて座り心地が悪い。
 こう思うと如何に前世で俺が恵まれていたかがよく分かる。
 まぁ全部親が亡くなった時の保険金と元々持っていた家具なんだけど。

 俺の親は俺が丁度5歳くらいの時に飛行機の墜落事故に巻き込まれて死んでしまった。
 その時はまだ良く意味がわかっていなかったから特にトラウマなどにはならなかったが、後5年遅かったら俺はきっと立ち直れなかっただろう。

 その後は親戚の家を転々として、叔母さん名義で俺が住んでいた実家を両親のお金で買い取ってそこで住んでいた。
 ずっと1人で寂しかったが、中1の時に【Brave Soul】に出会い、それからは殆ど寂しくはなくなった。
 
 そんな恩すら感じている世界に転生したかもしれない事に俺は今物凄く興奮している。  
 始めはめちゃくちゃ取り乱したけど。

 でももしあのゲームの世界なら、ステータスがあるはず。
 あれ? でもあれって10歳からしか見れないんだっけ?
 まぁ取り敢えず一度だけやってみるか。

 …………。

 俺はステータスを出そうとしたのだが、新たな問題に衝突した。
 ゲームでは画面の端にあるステータスの表示をクリックしたら見れてたけど、今はそんな物何もない。
 どうやって出すんだろう?

「『ステータスオープン』……なんちゃって。―――うわっ!?」

 巫山戯て言ったのに俺の視界にいきなりステータスが出てきた。
 俺は暫しの間放心してしまったが、お母さんに揺さぶられて元に戻る。
 
 あらら……出ちゃったよ。
 まぁでも見れる事はめちゃくちゃ嬉しいからいいか。

 俺は自身のステータスをガン見し始めた。
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