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慣れない無い買い物

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俺はお金が有っても使わなければ意味が無いと思い、翌日から散財することにしました。



車を買うにしたって国産メーカーや町中に良くある外車ディーラーと違って超高級車のショールームはかなり敷居が高い。そこで今日はまず見た目から変える事にしました。



まずやって来たのは銀座のデパート。スーツや仕事に使う物はそれなりにブランド物を使っているが、こと普段着に成るとファストファッションメーカーがメインで、俺は普段着でジャケットを着ないタイプだ。



そんな俺でも最近のデパートには便利なサービスが有る。コンシェルジュサービスだ。



一階のインフォメーションでコンシェルジュを頼めるか聞くと確認してくれてコンシェルジュの空きは無いが外商部の人間が来てくれる事に成った。



待っていると30代くらいのスーツを着た男性がこちらに向かって来た。その男性のネームプレートには外商部鈴木浩一と名前が刻まれていた。



「おまたせいたしました、本日ご案内させて頂きます外商部の鈴木浩一と申します」



「男鹿です、今日はよろしくお願いします」



「本日はどのような物をお探しですか」



「仕事着はそれなりに良い物を持っているのですが、普段着がちょっとあまりなくて。それで鈴木さんの見立てで良いので何点か揃えたいんですが」



「分かりました、ご予算はありますか?」



「予算は気にしなくて良いです」



「分かりました、カジュアルな物からフォーマルな物まで一通り見て行きましょう」



鈴木さんは今日顧客が来店予定で会ったがお客様の急な都合でキャンセルになり、普段はコンシェルジュサービスにはしていない人なのだが、時間が出来たので来てくれた様だ。



それから鈴木さんの見立てで軽自動車の新車が買えるほど服を買った。



かなり買わされたと思うが俺は鈴木さんのアドバイスに大満足だ。着こなしの難しい物や無駄に高い物は勧めず、色々な着こなし術も教えてくれて俺が教わる毎に買うからかなりの数に成った。



買った物は自宅まで配送を頼み俺はデパートを後にした。



小腹が空いたので昼食を取ろうと思うがちょうどお昼時の為知ってるお店は混んでるし、余裕が有るお店はとても1人では入りずらい。



そして俺が選んだ店はどこにでもある牛丼チェーン。しょせんお金を持っても志向が変わるはずも無く、牛丼つゆだくに温玉に味噌汁で紅ショウガをいっぱい乗せて食べるのが今でも大好きだ。



俺は親の言う事を聞かないと親父から大学生時代一銭もこずかい貰えなかった為、遊ぶお金はバイトするしか無かったから、昼飯は牛丼でも贅沢だった。



午後からは車屋を回るつもりだ。欲しい車はフェラーリとランボルギーニとマクラーレンとブガッティは夢の車だが、もう一つ欲しい車が有る。それはアストンマーティンだ。子供の頃に見たスパイ映画で見たあの車は夢の車だ。もちもん映画と現実の違いは分かるが欲しい物は欲しい。



ショールームに入るのは少し緊張したが、中に入ってしまえばきちんとお客様として対応してくれた。



しかも色々説明を受けているともう欲しい気持ちは押させられなかった。



それでも納車までは約半年掛かる。早く欲しいと顔に出ていたのか営業の方がキャンセルに成った車が有ると俺に見せてくれた。



その車はアストンマーチンDB11 V12だ、欲しかった色では無かったがつや消しのブラックで内装は白を基調としてアクセントに黒が入ったまるでボンドカーその物。俺は一目惚れすると即決で購入を決めた。



ボディバッグに用意していたお金から手付金を払い契約した。それでも納車は二週間掛かる様だ。



乗って帰りたい衝動を抑え帰ろうとすると、試乗車で家まで送ってくれる事になり、違う車種だが楽しく家に帰る事が出来た。



帰ってから唯一の話し相手のイブと今日の事を話すと、俺にお金の使い方をレクチャーしだした。



まず板垣が務める投資銀行のプライベートバンクの口座を開設する事、そこでパラジウムカードを作り人間が直接かかわらないと出来ない事をさせるためにコンシェルジュサービスを受ける事。それと週明けにカード会社からセンチュリオンカードにグレードアップに関する問い合わせが来るから受ける事。



次に広い地下室が有る別荘を建てる事、そこで色々作りたいので機密保持が出来る場所の確保。



それと近々天照様からお呼び出しが有るから用意しておく様に。



「なんだよ、また呼び出しか」



『レイジにはプラスに成る事だ』



「そんな事言って人類を助ける為に何かさせる気なんだろ」



『私はそのことは聞いて無い、私は今アメリカの中枢に隠された秘密を覗いてるところだ。確かに伝えたぞ』



「待てお前、俺のパソコンからどこにハッキングしてるんだよ。俺が捕まちゃうだろ」



『そんなミスはしない、この時代のセキュリティーなんて笊だ、じゃあ~』



「ふざけんなよ」



『一つ言い忘れただネットカフェで核テロの脅威を掲示板で拡散しているが、公安が動いているから気を付けろ」



「マジ!!」



別に犯罪じゃないから捕まらないと思うけど掲示板はしばらく中止だな。でもまだ核テロは実行されてかなりの被害が出るって未来のネットニュースに出てるんだよな。



それから2週間がたちアストンマーティンも納車され、無制限のクレジットカードも届き、俺は別荘の候補地を探しながらイブのおかげで増え続けるお金の使い道を探っていた。



そんなある日また枕元に天照様が立った。



『レイジよ、イブとはうまくやっているか?』



『天照様』



『レイジよ今日は合わせたい人が居るから妾のところまでまた来てくれるかい』



『俺だって色々忙しいの!イブからの頼み事も有るし』



『そうかレイジにせっかく会いたいと戻らぬ覚悟で来た者を待たすのか?』



『会いに来た』



『そうじゃ、妾が作った特製ボディーじゃぞ』



『異世界からか?』



『そうじゃ』



『もしかしてシルフィーか』



『そうじゃ、お主に会いに時空を超えるのは悪魔達かシルフィーしかおらんだろう』



『シルフィーに会えるのか』



『そう言ってるじゃろ、気を付けてくるんじゃぞ』



朝目が覚めると時空間収納に荷物を放り込み、アクセルを踏み込みたい気持ちをぐっと抑えて伊勢へと向かった。



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