1 / 289
序
しおりを挟む
高校生になったとたん、祖母が入院した。たった一人の身内であった徳成清子は、入院費と生活費を稼ぐために高校を辞めた。高校生であった時期は、三ヶ月。真新しい夏服は洗い替えも含めて二着あったのに、全てが無駄になってしまった。
昼間はバイトに精を出し、夜になれば祖母の元へ通った。援助してくれる人は居ない。聖子には両親が居なかったからだ。
「清子。人をあまり信じてはいけないよ。身内だってこんな調子なのだから、他人となれば尚更だ。」
祖母は入院先に行く度に清子にそう言い聞かせ、清子もそんなものなのだろうと思っていた。わずかな蓄えもなくなっても、誰も援助してくれるわけではない。
祖母が危篤になったと、連絡を受けた冬の終わりかけたある日。清子は病院に向かっていた。
だが自転車をこいでたどり着いた病院の一室で、祖母は動かなくなり顔には白い布がかけられていた。
葬儀はひっそりと行われ、参拝する人は近所の人や祖母が働いていたスーパーの人に限られた。近所づきあいもそんなに無かったし、人間関係も得意ではなかったからかもしれない。
そして清子は葬儀を終えると、その報告を身内にした。長男である叔父は、仕事が忙しいからと帰ってこなかった。次男の叔父は、地方へ仕事へ行っている。そして三男である清子の父親に限ってはどこにいるかもわからない。
結局そんなものなのだ。入院費と葬儀代、四十九日法要は、祖母が細々とかけていた保険金でまかなえた。正直、足りなかったら自分が貯めていたお金を出さないといけないと思っていたので、正直ほっとした。
そして納骨を済ませて、清子は家の片づけをしていた。祖母のものを処分して、この家と土地を売ってしまおうと思っていたから。自分のことを考えるとそうしてしまった方が良いと思う。ところがその家に電話がかかる。
「清子ちゃん。その家のことだけど……。」
葬儀にも四十九日にも出なかった叔父である長男が自分に権利があると主張してきたのだ。この田舎の二束三文の土地代が欲しいのだろう。
清子はその電話を切ったあと、何故か涙が出てきた。人間とは、結局そんなものなのだ。そう言われているようだった。
次の日。清子は自分で貯めたバイト代を手にして家を出た。祖母が亡くなれば、きっと長男は家の権利を主張してくる。それは想像していたことだった。だから少し前から、ある学校へ行くように手配をしていたのだ。
結局信じれるのは自分だけ。自分だけで生きて行くには、きっと資格が必要だ。そして都会であればあるほど、人間関係も希薄だと思う。もう関わりたくなかった。一人で生きていかなければいけない。この町を居なくなっても悲しむ人など誰もいないのだから。信じれるのは自分だけ。そう思って足を進める。
早朝の駅だった。朝靄がかかっているその駅にたどり着いて、清子はため息を付いた。
強がっていると思いながらも。
昼間はバイトに精を出し、夜になれば祖母の元へ通った。援助してくれる人は居ない。聖子には両親が居なかったからだ。
「清子。人をあまり信じてはいけないよ。身内だってこんな調子なのだから、他人となれば尚更だ。」
祖母は入院先に行く度に清子にそう言い聞かせ、清子もそんなものなのだろうと思っていた。わずかな蓄えもなくなっても、誰も援助してくれるわけではない。
祖母が危篤になったと、連絡を受けた冬の終わりかけたある日。清子は病院に向かっていた。
だが自転車をこいでたどり着いた病院の一室で、祖母は動かなくなり顔には白い布がかけられていた。
葬儀はひっそりと行われ、参拝する人は近所の人や祖母が働いていたスーパーの人に限られた。近所づきあいもそんなに無かったし、人間関係も得意ではなかったからかもしれない。
そして清子は葬儀を終えると、その報告を身内にした。長男である叔父は、仕事が忙しいからと帰ってこなかった。次男の叔父は、地方へ仕事へ行っている。そして三男である清子の父親に限ってはどこにいるかもわからない。
結局そんなものなのだ。入院費と葬儀代、四十九日法要は、祖母が細々とかけていた保険金でまかなえた。正直、足りなかったら自分が貯めていたお金を出さないといけないと思っていたので、正直ほっとした。
そして納骨を済ませて、清子は家の片づけをしていた。祖母のものを処分して、この家と土地を売ってしまおうと思っていたから。自分のことを考えるとそうしてしまった方が良いと思う。ところがその家に電話がかかる。
「清子ちゃん。その家のことだけど……。」
葬儀にも四十九日にも出なかった叔父である長男が自分に権利があると主張してきたのだ。この田舎の二束三文の土地代が欲しいのだろう。
清子はその電話を切ったあと、何故か涙が出てきた。人間とは、結局そんなものなのだ。そう言われているようだった。
次の日。清子は自分で貯めたバイト代を手にして家を出た。祖母が亡くなれば、きっと長男は家の権利を主張してくる。それは想像していたことだった。だから少し前から、ある学校へ行くように手配をしていたのだ。
結局信じれるのは自分だけ。自分だけで生きて行くには、きっと資格が必要だ。そして都会であればあるほど、人間関係も希薄だと思う。もう関わりたくなかった。一人で生きていかなければいけない。この町を居なくなっても悲しむ人など誰もいないのだから。信じれるのは自分だけ。そう思って足を進める。
早朝の駅だった。朝靄がかかっているその駅にたどり着いて、清子はため息を付いた。
強がっていると思いながらも。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる