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同族
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送ったメールを見ながら、清子はため息を付いた。香子のAVを販売しているメーカーに動画の件を問い合わせてみたのだが、その名前だけで売れる単体女優と違って、一度しかAVに出ていない女優にそんなに気をかけていられないのだろう。
しかも送られたメールには、香子はもう一本出る予定にしていて契約をしていたのに急にドタキャンしたらしいのだ。そのために事前に支払われていた契約金の半額をメーカーに返している。メーカーとしてはそれでは満足しないのに、それだけでもう香子と連絡が取れなくなったというのだ。
そんな女優に動画をアップロードした主を訴えるような義理はないということだろう。
売れたソフトが未だに需要があるから良いモノの、売れなければ出るところを出ても良いというメーカーの言い分もわかる。これ以上メーカーと険悪になっても仕方がない。メーカーとは良好な関係でいないといけないのだから。
あと、どうしたらいいだろう。清子はホームページに画像の無断使用を禁止することを載せながら、頭の中で考えていた。そのとき、目の前に手が振られる。それに気が付いて、ヘッドフォンをはずす。
「集中してたね。」
史は少し微笑みながら、清子を見下ろした。
「すいません。考え事をしてたんで。」
「別に良いよ。そういうライターは結構いるしね。」
そういって後ろを振り向く。そこには雑誌に載せる文章を、校閲している男性がいた。その男の耳にもイヤホンがある。外部との音を聞きたくないと言う男らしい言葉だ。
「どうしました。」
「お客さんが来てる。君に会いたいとね。」
客という言葉に、清子は不思議に思いながら入り口をみる。そこには我孫子の姿があった。
「あ……。」
思い出したように清子はパソコンをスリープ状態にすると、入り口の方へ歩いていった。
「我孫子さん。すいません。呼び出しておいて迎えにも行かないで。」
「別に良いよ。小学生じゃあるまいし、一人でここには来れる。それにしてもあれだな。」
「どうしました?」
「結構セキュリティ厳しい会社だな。声のかかってねぇ外部のヤツは、入り口すら入れねぇのかよ。」
「最近の会社は全部こうですよ。」
そういいながら清子は笑顔で挨拶をした。普段にこりともしない清子が笑っているのを見て、周りがひそひそと声を潜める。
「何だよ。笑うんじゃねぇか。」
「飲み会でもにこりともしなかったのにさ。何?あれ。ずいぶん年上の彼氏?」
「あれくらいがちょうどいいんじゃねぇの?」
だが距離はある。彼氏と言うには少し違うようだ。
清子は我孫子を少し待たせると、史の所へ向かう。
「編集長、すいません。少し席を外します。」
史は我孫子を見る。歳の割に軽薄そうで、格好も遊びに行くような格好だ。だが前に見たときも同じような感じだったし、このスタイルを変えられない人なのだろう。それに、以前から清子から聞いている話があった。その相談をしたいのだろう。それは自分の部署だけではなく、この会社に関わることだ。
「わかった。徳成さんは少し早いけど休憩をとっていいから。」
「ありがとうございます。」
昼休憩には少し早い時間だ。だが早めに戻ってくるだろう。そう思いながら、我孫子の元に戻っていく清子を見送る。そのとき、我孫子の横を通って、晶が帰ってきた。
「外は灼熱地獄だな。」
ぶつぶつ文句を言いながら自分のデスクに戻り、清子のデスクをみる。しかしその清子がいなかった。
「あれ?」
すると清子は入り口にいる我孫子とともに、外に出て行った。
「ん?あれ……誰だ?」
隣のデスクの男に聞くが、男は首を傾げるだけだった。
「徳成さんの彼氏かなって言っていたんだけどな。」
「徳成の彼氏?」
ちらっと見た男はずいぶん軽薄そうで、清子の彼氏と言うにはずいぶんかけ離れている気がする。それに歳も父親と言っていいほどの歳だ。
「久住。写真見せてくれないか。」
奥の史の方を見るが、史は全く動じていない。男と出て行っても何も言わないのだろうか。晶はバッグからカメラを取り出すと、史のデスクに近づく。
「うん。いいね。これを袋とじにしようか。」
画面の中には、剃毛された性器をさらけ出している女がディルドをつっこまれている画像がある。だがそのまま載せるわけにはいかない。ちゃんとモザイクをかけるのだ。
「さっきの……誰なんですか?」
「気になる?」
意地悪く聞くと、晶は口を尖らせた。
「別に……モザイクの話をしようと思ってたから。」
「午後からでも良いと思う。徳成さんは外部の人と話があるからね。」
「外部?」
大きな会社だから見ない顔があっても不思議はないと思っていたが、やはり外部の人間だったらしい。
「俺も知ってる人だから、許可をしたんだ。」
「編集長は顔が広いからなぁ。」
少し嫌みのつもりでいった。だが史は全く動じていない。
「良い人だよ。徳成さんが信用しているようだ。」
信用するだろうか。あんなに人を信じられないと言っていたのに、あの男だけは信用するのだろうか。不安で押しつぶされそうになる。
あの夜、清子とキスをした。なのにあの日から清子は晶を避けるように、ずっと過ごしていたのだ。言葉を交わすこともなく、ただ淡々と仕事だけをこなし、退社の時間を合わせることもなくさっさと帰って行くのだ。
もっとしたい。一度キスをして欲が出てきたのだろうか。
一階のゲートをくぐると、受付の横にチェーン化されているカフェがある。店舗だからと言ってそこだけが独立しているのではなく、ソファー席やテーブル席、カウンターなどもあり、そこで仕事をする人、外部との交渉に使うこともあるらしく、何も頼んでいない人が人を待っているのに座っていることもあるのだ。
「何を飲みますか。」
清子は我孫子に聞くと、我孫子はメニューを見て言う。
「アイスコーヒーが良いな。お前は?」
「今日のコーヒーを。」
するとまぶしいくらいの笑顔の男の店員が、コーヒーの説明をはじめる。
「今日はニカラグアのコーヒーです。ホットがおすすめですよ。」
その言葉に我孫子は苦笑いをする。
「この暑いのにホットか?」
「あぁ。それで結構です。」
清子はそういって財布をとりだした。
「マジか?」
「お酒以外は、体温より低いモノは口に入れないようにしているんです。」
「あぁ……そう。」
健康に気を使っているのかもしれないが、煙草を吸っているところを見るとそうでもない気がする。ただの食わず嫌いなのかもしれない。
コーヒーを受け取ると、二人は片隅にある喫煙室へ入っていった。さすがにここは隔離されているように密室だった。中には人がいない。それを狙ってここに来たのかもしれないが。
ソファーに向かい合い、灰皿を前に置く。そして我孫子はポケットから煙草を取り出して、それを一本口にくわえた。
「人のセキュリティーは厳しいのに、ウェブのセキュリティーは甘々だったな。」
煙草に火をつけて我孫子が言うと、バッグからタブレットを取り出す。
「そうですね。私もそう思いました。」
「お前が来て、どうだ?」
「今までの対処ではダダ漏れです。セキュリティーは強化したのでもう漏れることはないと思いますが、今までのは漏れている可能性がありますね。」
「だろうな。」
我孫子はそういってタブレットを操作する。そして清子にその画面を見せた。
「ほら。」
そこには芸能人に詳しくない清子でも知っているような、女性アイドルが大股を開いている写真が映し出されている。
「……アイコラですか?」
「あぁ。もちろんだ。このアイドルは脱いでねぇよ。でもこの元の画像が、これだ。」
そういってまた操作して、その画面を見せる。するとそこには違う女性が同じポーズで写っている写真があった。
「……つまり……あげている写真をアイコラして公開しているって事ですね。」
「アイコラですと言えばいいんだが、それを理解してないヤツはそう思わないだろう?」
「確かに……。」
中には純粋な人もいるだろう。それを信じて、ファンをやめる人も出てくるかもしれない。
「でもこの画像の元は、「pink倶楽部」だ。」
「……うちの雑誌ですか?」
「雑なセキュリティーが裏目に出たんだろう。で……お前どうする?」
清子はその画像を見ながら、少しため息を付いた。
しかも送られたメールには、香子はもう一本出る予定にしていて契約をしていたのに急にドタキャンしたらしいのだ。そのために事前に支払われていた契約金の半額をメーカーに返している。メーカーとしてはそれでは満足しないのに、それだけでもう香子と連絡が取れなくなったというのだ。
そんな女優に動画をアップロードした主を訴えるような義理はないということだろう。
売れたソフトが未だに需要があるから良いモノの、売れなければ出るところを出ても良いというメーカーの言い分もわかる。これ以上メーカーと険悪になっても仕方がない。メーカーとは良好な関係でいないといけないのだから。
あと、どうしたらいいだろう。清子はホームページに画像の無断使用を禁止することを載せながら、頭の中で考えていた。そのとき、目の前に手が振られる。それに気が付いて、ヘッドフォンをはずす。
「集中してたね。」
史は少し微笑みながら、清子を見下ろした。
「すいません。考え事をしてたんで。」
「別に良いよ。そういうライターは結構いるしね。」
そういって後ろを振り向く。そこには雑誌に載せる文章を、校閲している男性がいた。その男の耳にもイヤホンがある。外部との音を聞きたくないと言う男らしい言葉だ。
「どうしました。」
「お客さんが来てる。君に会いたいとね。」
客という言葉に、清子は不思議に思いながら入り口をみる。そこには我孫子の姿があった。
「あ……。」
思い出したように清子はパソコンをスリープ状態にすると、入り口の方へ歩いていった。
「我孫子さん。すいません。呼び出しておいて迎えにも行かないで。」
「別に良いよ。小学生じゃあるまいし、一人でここには来れる。それにしてもあれだな。」
「どうしました?」
「結構セキュリティ厳しい会社だな。声のかかってねぇ外部のヤツは、入り口すら入れねぇのかよ。」
「最近の会社は全部こうですよ。」
そういいながら清子は笑顔で挨拶をした。普段にこりともしない清子が笑っているのを見て、周りがひそひそと声を潜める。
「何だよ。笑うんじゃねぇか。」
「飲み会でもにこりともしなかったのにさ。何?あれ。ずいぶん年上の彼氏?」
「あれくらいがちょうどいいんじゃねぇの?」
だが距離はある。彼氏と言うには少し違うようだ。
清子は我孫子を少し待たせると、史の所へ向かう。
「編集長、すいません。少し席を外します。」
史は我孫子を見る。歳の割に軽薄そうで、格好も遊びに行くような格好だ。だが前に見たときも同じような感じだったし、このスタイルを変えられない人なのだろう。それに、以前から清子から聞いている話があった。その相談をしたいのだろう。それは自分の部署だけではなく、この会社に関わることだ。
「わかった。徳成さんは少し早いけど休憩をとっていいから。」
「ありがとうございます。」
昼休憩には少し早い時間だ。だが早めに戻ってくるだろう。そう思いながら、我孫子の元に戻っていく清子を見送る。そのとき、我孫子の横を通って、晶が帰ってきた。
「外は灼熱地獄だな。」
ぶつぶつ文句を言いながら自分のデスクに戻り、清子のデスクをみる。しかしその清子がいなかった。
「あれ?」
すると清子は入り口にいる我孫子とともに、外に出て行った。
「ん?あれ……誰だ?」
隣のデスクの男に聞くが、男は首を傾げるだけだった。
「徳成さんの彼氏かなって言っていたんだけどな。」
「徳成の彼氏?」
ちらっと見た男はずいぶん軽薄そうで、清子の彼氏と言うにはずいぶんかけ離れている気がする。それに歳も父親と言っていいほどの歳だ。
「久住。写真見せてくれないか。」
奥の史の方を見るが、史は全く動じていない。男と出て行っても何も言わないのだろうか。晶はバッグからカメラを取り出すと、史のデスクに近づく。
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「気になる?」
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「別に……モザイクの話をしようと思ってたから。」
「午後からでも良いと思う。徳成さんは外部の人と話があるからね。」
「外部?」
大きな会社だから見ない顔があっても不思議はないと思っていたが、やはり外部の人間だったらしい。
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信用するだろうか。あんなに人を信じられないと言っていたのに、あの男だけは信用するのだろうか。不安で押しつぶされそうになる。
あの夜、清子とキスをした。なのにあの日から清子は晶を避けるように、ずっと過ごしていたのだ。言葉を交わすこともなく、ただ淡々と仕事だけをこなし、退社の時間を合わせることもなくさっさと帰って行くのだ。
もっとしたい。一度キスをして欲が出てきたのだろうか。
一階のゲートをくぐると、受付の横にチェーン化されているカフェがある。店舗だからと言ってそこだけが独立しているのではなく、ソファー席やテーブル席、カウンターなどもあり、そこで仕事をする人、外部との交渉に使うこともあるらしく、何も頼んでいない人が人を待っているのに座っていることもあるのだ。
「何を飲みますか。」
清子は我孫子に聞くと、我孫子はメニューを見て言う。
「アイスコーヒーが良いな。お前は?」
「今日のコーヒーを。」
するとまぶしいくらいの笑顔の男の店員が、コーヒーの説明をはじめる。
「今日はニカラグアのコーヒーです。ホットがおすすめですよ。」
その言葉に我孫子は苦笑いをする。
「この暑いのにホットか?」
「あぁ。それで結構です。」
清子はそういって財布をとりだした。
「マジか?」
「お酒以外は、体温より低いモノは口に入れないようにしているんです。」
「あぁ……そう。」
健康に気を使っているのかもしれないが、煙草を吸っているところを見るとそうでもない気がする。ただの食わず嫌いなのかもしれない。
コーヒーを受け取ると、二人は片隅にある喫煙室へ入っていった。さすがにここは隔離されているように密室だった。中には人がいない。それを狙ってここに来たのかもしれないが。
ソファーに向かい合い、灰皿を前に置く。そして我孫子はポケットから煙草を取り出して、それを一本口にくわえた。
「人のセキュリティーは厳しいのに、ウェブのセキュリティーは甘々だったな。」
煙草に火をつけて我孫子が言うと、バッグからタブレットを取り出す。
「そうですね。私もそう思いました。」
「お前が来て、どうだ?」
「今までの対処ではダダ漏れです。セキュリティーは強化したのでもう漏れることはないと思いますが、今までのは漏れている可能性がありますね。」
「だろうな。」
我孫子はそういってタブレットを操作する。そして清子にその画面を見せた。
「ほら。」
そこには芸能人に詳しくない清子でも知っているような、女性アイドルが大股を開いている写真が映し出されている。
「……アイコラですか?」
「あぁ。もちろんだ。このアイドルは脱いでねぇよ。でもこの元の画像が、これだ。」
そういってまた操作して、その画面を見せる。するとそこには違う女性が同じポーズで写っている写真があった。
「……つまり……あげている写真をアイコラして公開しているって事ですね。」
「アイコラですと言えばいいんだが、それを理解してないヤツはそう思わないだろう?」
「確かに……。」
中には純粋な人もいるだろう。それを信じて、ファンをやめる人も出てくるかもしれない。
「でもこの画像の元は、「pink倶楽部」だ。」
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