不完全な人達

神崎

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二人の夜

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 青いボトルの水は外国のもので、この水ではなければ口にいれたくないと普段から言っている。だからいつもは箱で買っているが、今日は切れているらしい。晶はそう思いながら、コンビニの袋に水をいれてついでに煙草も買ってマンションへ帰ってきた。
 だがいらだちは収まらない。今頃、清子は史とセックスをしているのだろうか。そう思うと、このまま清子が住んでいるアパートへ行きたいと思う。だがそんなことは出来ないのだ。自分の帰るのはここなのだから。
 玄関を開けると、愛がヨガマットを広げて体を動かしているようだった。ヨガだ、ジムだ、エステだと、仕事の合間を縫って体を維持しているのは、ある意味尊敬する。
「ただいま。」
「お帰り。」
 体を動かしているときに体に触れると怒るので、そのままキッチンへ向かいシンクに水を置く。コンビニの水は冷えているので、このまま常温にしておくのだ。そのときふとシンクにあけてある水があるのに気が付いた。
「水、あるじゃん。」
「予備。なくなったから……ん……あー痛い。」
 痛い痛いと言いながらもそのポーズは変えない。それが愛のこだわりなのだろう。
「明日来る。」
「あぁ。そうだったの。でもまぁ、水は腐らないし。」
 空いている水をコップに注いで、それを飲むとバスルームへ向かう。風呂は沸いているようだ。
「風呂にはいるか。」
「結構飲んできたの?」
「編集長って結構ざるだよな。顔色変わらないし。」
 ポーズを崩して、ヨガマットから降りると愛はそのまま晶に近づいた。すると晶も答えるように、唇を合わせる。
「酒臭い。それに煙草臭い。」
「仕方ねぇだろ。どっちも喫煙者なんだし。」
「外国の方が煙草って厳しいよ。知ってるでしょ?」
「俺はお前みたいに先進国にはほとんど行ってねぇから。」
 晶が外国へ行っていたとき、渡った国はヨーロッパでも僻地の方だった。そっちの方が自然のままの姿が撮影できるからだ。
「……来月さ、オーディションのために外国行くわ。」
「二次って、そっちの国であるのか?」
「うん。受かって、最終までいるんなら一ヶ月は帰ってこれない。」
「そっか。」
 都合が良いかもしれない。そっちの方が愛と顔を合わせなくて済むからだ。
「ほっとしてる?」
「え?」
 下着をとってバスルームへ向かおうとした晶に、愛は声をかける。そして汗を拭きながら、愛は晶に聞く。
「今日の飲み会って女の人居たの?」
「女のことで話をしてたんだ。本人が居なくてどうするんだよ。」
 すると愛は表情を変えずに汗を拭きながら言う。晶に目線は合わせない。
「徳成さんって居たの?」
「徳成?あぁ。お前会ったことがあったっけ。居たな。難しい話ばっかしてんの。わけわかんねぇ。」
 少し笑ってごまかした。そして逃げるようにバスルームへ入っていく。
 服を脱いで、体を流すと湯船に浸かった。入浴剤のいい匂いがする風呂だ。発汗作用があるとかというものだろう。浸かっているだけでじんわり汗が出てくる。酒も出てきそうだと思っていた。
 清子は今頃誰といるのだろう。史といるのだろうか。史と会っているのだろうか。一人になるとそのことばかり頭を駆けめぐる。
 ふとバスルームの片隅にあるシャンプーやトリートメントが目に付いた。それは愛がこだわって使っているもので、このメーカーのこれじゃないとだめらしい。風呂から上がっても、化粧水、乳液、パック、ボディクリーム、トリートメントなど行程が沢山ある。
 清子は見た限り、化粧はほとんどしていない。そんなことまで気が回らないのだろう。
「晶。」
 外から声がかかり、晶はふと我に返る。
「何?」
「汗流したいから、ちょっと入るね。」
 そういってバスルームのドアが開いた。そこには全裸の愛がいる。
 細いだけではなく、筋肉やわずかに脂肪もある。バランスのとれた肉体だと思う。そして胸だって無いわけではないが、無駄に大きな香子とも違う。
 そして愛はシャワーを出すと、その流れている汗を流した。
「そこで流したら、またあれか?出たとき色々するのか?」
「そうね。お湯で流れちゃうし。」
 女は大変だな。そう思いながら、晶は湯船のお湯で顔を洗う。
「徳成さんってざるなんでしょ?」
「え?俺話したか?その話。」
「史から聞いたの。」
「あぁ……お前編集長とも知り合いだって言ってたな。」
「晶と会うちょっと前くらいかな。ねぇ。史ってまだ恋人がいないの?」
 その話に思わず晶はせき込んだ。そして息を整えると、首を横に振った。
「さぁな。その話はしなかった。」
「煙草を吸いすぎよ。ちょっと減煙したら?」
「気が向いたらな。」
 また笑った。晶は誤魔化すとき少し笑うのだ。やはり清子と何かあるのだろう。その話をしたことはないし、話したがらない。
「体洗った?」
「今から。」
「洗ってあげる。あがって。」
 手をさしのべて愛は晶を湯船からあがらせると、いすに座らせる。
 髪を洗ったあと、ボディソープを泡立てるとその泡を体にのせて手で洗った。タオルではなく、手で洗った方が体が傷つかないらしい。
「いっつも思うけど、この洗い方で本当に汚れ落ちてんのかな。」
「落ちてるよ。余分な油分も汚れも泡だけで落ちるんだから。手だってそうじゃない。」
「まぁな……。」
 晶の体は細くもないが、がっちり筋肉があるわけでもない。だが髪だけはいつも下ろされていて、ぼさぼさに見える。あまり目を見られたくないらしい。
「史が言ってた。徳成さんってお酒は人一倍飲むけど、あまり酔わないって。その割にはあまり食べない人だって。お酒で動いているんじゃないかって言ってたな。」
「そうかもな。」
 また笑った。清子のことになると笑うのだ。やはりただの同僚じゃない。そう思うとその泡を胸の方へ持ってくる。
「前くらい自分で洗えるから。」
「洗わせてよ。」
 そういって丁寧に体を洗う。そしてそのまだ力のない性器に手をはわせる。
「おい……。」
 背中越しに柔らかものが伝わる。張りがあって心地良いそれが、背中に伝わってきた。
「たってきた……。昨日もしたのに……若いと何回もできるもんだよね。」
「こんなことされてたたない訳ないだろ。」
 そう言っているのに、愛の手は止まらなかった。
「ね……ここでしたい。」
 そんな気はないのに、体は正直だった。
 泡を一度流すと、愛を引き寄せて唇にキスをする。そしてその胸に手を這わせた。
「ん……。そこ……。気持ちいい……。」
「ここか?」
 乳首をつまみ上げると、ぐりぐりと引っ張る。それが愛はいつも好きだった。
「これお湯じゃねぇな。すげぇ。もう濡れてんのか。」
「あぁっ……晶……指、いれて……。中をぐちゃぐちゃにかき回して……。」
 愛の体を支えながら、性器に指を這わせる。余裕で二本目の指が入ると、その中をかき回す。
 清子とした十年前。清子もやはり乱れていた。その顔と愛がかぶる。
「あっ……イく……イく!」
 びくびくと体を震わせて、愛は晶の体にもたれ掛かった。そして晶は愛を背中に向かせると、その後ろから自分の性器を入れ込んだ。
「あっ……いきなり……あっ!あっ!激しい……そんなにしたら!晶!」
 顔を見ない方が良い。史と清子が今こうやって乱れていると思うと、その怒りを愛に向けそうだからだ。
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