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多忙
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それぞれが手があいたときに食事をして、仕事をする。清子はそれに手をつけることなく、トイレに行くついでに缶コーヒーを買ったくらいであとはずっとパソコンの画面を見ていた。
それでも清子の様子は少しおかしい気がする。マウスを動かす手が止まることもあるからだ。いけない。どんな理由があっても仕事に影響するようなことは良くないのだから。
史は少し手を止めて、清子のデスクに近づく。
「徳成さん。何か問題があった?」
すると清子はヘッドホンをはずすと、ため息をついた。
「夕べおっしゃっていたここのSNSのページに書き込んでいる方なんですけど。」
「あぁ。凍結してもらったんじゃないの?」
「別のアカウントで書き込みらしいものをしてますね。その中に、「人殺し」というワードがあります。」
その言葉に史の表情が少しひきつった。確かに史は人を殺したようなものだ。恋人だった女を自殺させるまで追い込んだのだから。
「あのことを知っている人か。」
「恋人のことですか。」
その話題が聞こえたのだろう。了はちらっと清子たちの方を見た。やはり史と清子は恋人ではない。付き合っているのは、晶なのだろう。ほっとする。清子自体は気に入らないが、晶がそれで幸せならそれでいい。
「いいや。それはあまり知られていない。詳しく知っている人が居ても、相手までは割り出せないと思う。」
「そのことではなく、子供を堕胎させたという事ですが。」
「詳しい内容を聞いてもいい?」
すると清子はそのページを開く。そしてそのつぶやきをかいつまんで説明する。
「えっと……二十代の頃に、合コンをしたという女性ですね。その場で酒を飲まされ、強姦するようにセックスをした。子供が出来たと告げると、自分の子供ではないといって、責任を取らないまま堕胎させた。そんな感じです。」
「根も葉もないことだね。汁の時も、エ○メンのときも俺は合コンへ行くのは先輩なんかに誘われたときだけ。持ち帰りはしたことないし、よっぽどじゃないと生ではしないしね。」
清子はその言葉に少し笑う。最初史とセックスをしたとき、コンドームをつけなかったのだ。どの口が言っているのだろう。
「よっぽど?」
「結婚してもいいなっていう女性だけは、生ですることはある。だけど、子供が出来たっていう話も聞いたことはない。」
それだけなのだろうか。清子がこんなに難しい顔をして、SNSを見ている内容だとは思えない。もっと別のことがあるのだろうが、清子は何も言わない。
恋人といっても清子はまだ史をそんなに信用していないのだろうか。
夕方になっても仕事が終わりそうにない。了は少しため息をついて、清子の方を見る。どうやら清子は自分の仕事が終わったようで、パソコンをスリープ状態にしながらずっと校閲をしているようだ。赤いペンを片手に、文字のチェックをしている。そしてたまにくるメッセージをチェックしていた。仕事は出来る方なのだろう。
半年後に清子はこの本社からも居なくなる。そのあとに了は清子のあとに入って仕事をするように言われているが、こんなに仕事が出来るかどうか不安になってきた。
清子のやる仕事は、今とは違う。会社全体のネットワークなどを優と連携を取りながらやっていくらしい。
「了。」
声をかけられて了は晶の方を見る。
「手が止まってるぞ。」
「わかってるよ。それにしても一生分くらい女の裸を見たわ。良い職場だなと思ったけど、こう続くとうんざりする。」
「うんざりを通り越すと、どうでも良くなってくるよ。」
晶の隣のデスクの男が笑いながらそういってきた。
「でもプライベートは別だな。」
「だな。あんた、明日の仕事終わりは例の所に行くのか?」
「もちろんだ。最近抜いてねぇし、溜まっちゃってさ。」
風俗にでも行くのだろうか。女性社員の前でよくそれが言えるなと思ったが、女性社員はそれを気にしていないように目の前のローションのレビューを書いている。白いセーターの上でもわかるくらい大きな胸の持ち主だ。いっそAV女優にでもなればいいのにと思う。
「このローションいまいちだよね。」
「そうそう。なんか、ひんやりしてさ。手の中ですぐ温かくなるんじゃないし、夏はいいかもしれないけど冬は鳥肌たって萎えるわ。」
女も似たようなものだ。だが清子はそんな話しに全く耳を貸さず、黙々と文字を追っているように見える。昨日のヤクザとの立ち回りといい、本当に一人で生きていくつもりだったのだろう。
そのとき清子が立ち上がり、オフィスの外に出て行く。何かあったのだろうか。そして戻ってきた清子はまたデスクのパソコンを開いた。
「……。」
舌打ちをして、何か打ち込んでいく。その様子に史も少し違和感を感じたのだろう。他の社員が離れて、史は立ち上がると清子の方へ向かう。
「徳成さん。SNSの方はどう?」
「先ほど連絡がありました。凍結先のアカウントが、編集長に釈明をして欲しいということです。」
「根も葉もない噂だけど。」
「寝た相手は覚えてますか。」
「俺は恋人とじゃないと寝ないよ。AVに出ていたときは別だけど。」
「AVに出ていたときは、仕事以外のセックスは?」
「ないね。そんなに性欲がある方じゃない。」
何を言っているのかね。それが嘘なのは清子が一番よく知っているはずなのに。一晩に何度も何度も求めてくる人が、絶倫ではなくて何なのだろう。
「百四十文字以下で、釈明をお願いします。」
「今?」
「……そうですね。二十時に釈明文を載せると言っておきます。」
釈明文を載せても、それ以上の対応は一晩中かかるかもしれない。ホテルは取っているが、清子もまた今日は会社に泊まるかもしれないのだ。
「百四十文字か。それに言葉を選ばないといけないな……。」
「出来たらこちらでチェックしますから。」
その様子を見ていて、晶はふと自分のパソコンをチェックした。そしてそのSNSをチェックする。
「清子。」
今度は晶が立ち上がって清子に近づいた。
「どうしました。」
「そのアカウントだけどさ、アイコン見た?」
「そんな暇はなくて。」
晶は清子の側にやってくると、すぐ側の距離でパソコンを当たる。
「ほら……これさ。」
「これは……そこの公園ですか。」
「そう。近くのやつだ。」
アイコンに使われていたのは、何気ない日常の風景だったように思える。
「近くのやつか。」
「久住さん。この際、犯人探しはいいです。こういう噂が立つだけで、会社には不利益ですから。とりあえず釈明を載せるのが先決です。」
「犯人捜さなきゃ、同じ事だろ?」
「有名になればこう言うことは付き物です。まずは何も後ろ暗いところがないという証明さえ出来ればいい。」
一触即発に見えた。晶は舌打ちをすると、了の方を見る。
「了。お前、どう思う?」
すると了は少しため息をつくと、二人に向かって言う。
「釈明も犯人探しもしなくていいと思う。」
「なんで?」
「そんなことを言ってるやつは暇なのか、ただ単に編集長にひがんでいるだけかもしれない。だから、釈明をすれば火に油を注ぐ。犯人探しをすれば、同じようなことをするやつが増えてくる。だから無視。」
その言葉に史は釈明文を考えようとしていた手を止めた。
「徳成さん。あんた、いちいちそのつぶやきに答えてたのかもしれないけど、時間の無駄。大手なんだから、命の危険を感じるようなつぶやきは、弁護士にでも相談したら?」
「……そうですね。」
清子はその言葉に手を止めた。そして史の方へ足を進める。
「すいません。編集長。さっきの釈明文は載せませんから。」
「いいや。載せて。」
史は相違手またペンを走らせる。
「編集長。」
「誠意がないと売っていけない。俺はそう思うけどね。」
すると了は立ち上がって、史に向かっていく。
「だったら同人誌でも売ってろよ。そんなことにいちいち反応してられねぇんだよ。」
「反応しなければ、いけないんだよ。久住君。」
史はそういって、了を見た。
「それが俺、個人のことで会社に迷惑をかけているなら尚更だ。イメージもある。俺が社長なら無視をする。だけど社長ではなくて、会社の看板を背負っているんだ。イメージダウンは会社のイメージダウンに繋がる。そこをわかって欲しい。」
おそらく会社に勤めたことがない了には、理解が出来ないかもしれない。だが時には誠意も必要で、丁寧な受け答えは信用に繋がるのだから。そして清子にも信用されたい。そう思っていた。
それでも清子の様子は少しおかしい気がする。マウスを動かす手が止まることもあるからだ。いけない。どんな理由があっても仕事に影響するようなことは良くないのだから。
史は少し手を止めて、清子のデスクに近づく。
「徳成さん。何か問題があった?」
すると清子はヘッドホンをはずすと、ため息をついた。
「夕べおっしゃっていたここのSNSのページに書き込んでいる方なんですけど。」
「あぁ。凍結してもらったんじゃないの?」
「別のアカウントで書き込みらしいものをしてますね。その中に、「人殺し」というワードがあります。」
その言葉に史の表情が少しひきつった。確かに史は人を殺したようなものだ。恋人だった女を自殺させるまで追い込んだのだから。
「あのことを知っている人か。」
「恋人のことですか。」
その話題が聞こえたのだろう。了はちらっと清子たちの方を見た。やはり史と清子は恋人ではない。付き合っているのは、晶なのだろう。ほっとする。清子自体は気に入らないが、晶がそれで幸せならそれでいい。
「いいや。それはあまり知られていない。詳しく知っている人が居ても、相手までは割り出せないと思う。」
「そのことではなく、子供を堕胎させたという事ですが。」
「詳しい内容を聞いてもいい?」
すると清子はそのページを開く。そしてそのつぶやきをかいつまんで説明する。
「えっと……二十代の頃に、合コンをしたという女性ですね。その場で酒を飲まされ、強姦するようにセックスをした。子供が出来たと告げると、自分の子供ではないといって、責任を取らないまま堕胎させた。そんな感じです。」
「根も葉もないことだね。汁の時も、エ○メンのときも俺は合コンへ行くのは先輩なんかに誘われたときだけ。持ち帰りはしたことないし、よっぽどじゃないと生ではしないしね。」
清子はその言葉に少し笑う。最初史とセックスをしたとき、コンドームをつけなかったのだ。どの口が言っているのだろう。
「よっぽど?」
「結婚してもいいなっていう女性だけは、生ですることはある。だけど、子供が出来たっていう話も聞いたことはない。」
それだけなのだろうか。清子がこんなに難しい顔をして、SNSを見ている内容だとは思えない。もっと別のことがあるのだろうが、清子は何も言わない。
恋人といっても清子はまだ史をそんなに信用していないのだろうか。
夕方になっても仕事が終わりそうにない。了は少しため息をついて、清子の方を見る。どうやら清子は自分の仕事が終わったようで、パソコンをスリープ状態にしながらずっと校閲をしているようだ。赤いペンを片手に、文字のチェックをしている。そしてたまにくるメッセージをチェックしていた。仕事は出来る方なのだろう。
半年後に清子はこの本社からも居なくなる。そのあとに了は清子のあとに入って仕事をするように言われているが、こんなに仕事が出来るかどうか不安になってきた。
清子のやる仕事は、今とは違う。会社全体のネットワークなどを優と連携を取りながらやっていくらしい。
「了。」
声をかけられて了は晶の方を見る。
「手が止まってるぞ。」
「わかってるよ。それにしても一生分くらい女の裸を見たわ。良い職場だなと思ったけど、こう続くとうんざりする。」
「うんざりを通り越すと、どうでも良くなってくるよ。」
晶の隣のデスクの男が笑いながらそういってきた。
「でもプライベートは別だな。」
「だな。あんた、明日の仕事終わりは例の所に行くのか?」
「もちろんだ。最近抜いてねぇし、溜まっちゃってさ。」
風俗にでも行くのだろうか。女性社員の前でよくそれが言えるなと思ったが、女性社員はそれを気にしていないように目の前のローションのレビューを書いている。白いセーターの上でもわかるくらい大きな胸の持ち主だ。いっそAV女優にでもなればいいのにと思う。
「このローションいまいちだよね。」
「そうそう。なんか、ひんやりしてさ。手の中ですぐ温かくなるんじゃないし、夏はいいかもしれないけど冬は鳥肌たって萎えるわ。」
女も似たようなものだ。だが清子はそんな話しに全く耳を貸さず、黙々と文字を追っているように見える。昨日のヤクザとの立ち回りといい、本当に一人で生きていくつもりだったのだろう。
そのとき清子が立ち上がり、オフィスの外に出て行く。何かあったのだろうか。そして戻ってきた清子はまたデスクのパソコンを開いた。
「……。」
舌打ちをして、何か打ち込んでいく。その様子に史も少し違和感を感じたのだろう。他の社員が離れて、史は立ち上がると清子の方へ向かう。
「徳成さん。SNSの方はどう?」
「先ほど連絡がありました。凍結先のアカウントが、編集長に釈明をして欲しいということです。」
「根も葉もない噂だけど。」
「寝た相手は覚えてますか。」
「俺は恋人とじゃないと寝ないよ。AVに出ていたときは別だけど。」
「AVに出ていたときは、仕事以外のセックスは?」
「ないね。そんなに性欲がある方じゃない。」
何を言っているのかね。それが嘘なのは清子が一番よく知っているはずなのに。一晩に何度も何度も求めてくる人が、絶倫ではなくて何なのだろう。
「百四十文字以下で、釈明をお願いします。」
「今?」
「……そうですね。二十時に釈明文を載せると言っておきます。」
釈明文を載せても、それ以上の対応は一晩中かかるかもしれない。ホテルは取っているが、清子もまた今日は会社に泊まるかもしれないのだ。
「百四十文字か。それに言葉を選ばないといけないな……。」
「出来たらこちらでチェックしますから。」
その様子を見ていて、晶はふと自分のパソコンをチェックした。そしてそのSNSをチェックする。
「清子。」
今度は晶が立ち上がって清子に近づいた。
「どうしました。」
「そのアカウントだけどさ、アイコン見た?」
「そんな暇はなくて。」
晶は清子の側にやってくると、すぐ側の距離でパソコンを当たる。
「ほら……これさ。」
「これは……そこの公園ですか。」
「そう。近くのやつだ。」
アイコンに使われていたのは、何気ない日常の風景だったように思える。
「近くのやつか。」
「久住さん。この際、犯人探しはいいです。こういう噂が立つだけで、会社には不利益ですから。とりあえず釈明を載せるのが先決です。」
「犯人捜さなきゃ、同じ事だろ?」
「有名になればこう言うことは付き物です。まずは何も後ろ暗いところがないという証明さえ出来ればいい。」
一触即発に見えた。晶は舌打ちをすると、了の方を見る。
「了。お前、どう思う?」
すると了は少しため息をつくと、二人に向かって言う。
「釈明も犯人探しもしなくていいと思う。」
「なんで?」
「そんなことを言ってるやつは暇なのか、ただ単に編集長にひがんでいるだけかもしれない。だから、釈明をすれば火に油を注ぐ。犯人探しをすれば、同じようなことをするやつが増えてくる。だから無視。」
その言葉に史は釈明文を考えようとしていた手を止めた。
「徳成さん。あんた、いちいちそのつぶやきに答えてたのかもしれないけど、時間の無駄。大手なんだから、命の危険を感じるようなつぶやきは、弁護士にでも相談したら?」
「……そうですね。」
清子はその言葉に手を止めた。そして史の方へ足を進める。
「すいません。編集長。さっきの釈明文は載せませんから。」
「いいや。載せて。」
史は相違手またペンを走らせる。
「編集長。」
「誠意がないと売っていけない。俺はそう思うけどね。」
すると了は立ち上がって、史に向かっていく。
「だったら同人誌でも売ってろよ。そんなことにいちいち反応してられねぇんだよ。」
「反応しなければ、いけないんだよ。久住君。」
史はそういって、了を見た。
「それが俺、個人のことで会社に迷惑をかけているなら尚更だ。イメージもある。俺が社長なら無視をする。だけど社長ではなくて、会社の看板を背負っているんだ。イメージダウンは会社のイメージダウンに繋がる。そこをわかって欲しい。」
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