270 / 289
北と南
269
しおりを挟む
普通のビジネスホテルかと思いきや、このホテルは温泉がついているらしい。それで普通のビジネスホテル並の値段で泊まれるのだ。
当然のように部屋は別々に取ってある。清子はほっとして鍵を晶から受け取ったが、晶は少し笑って言う。
「俺の部屋隣だからよ。いつでも来い。」
「行かない。」
清子はそういって鍵を受け取る。そして三階の別々の部屋に入った。温泉は大浴場にあり浴衣も用意してあるし、タオルもある。本当に温泉宿のようだ。食事だけがないだけだ。チェーン化されている格安のビジネスホテルではなく、地元のビジネスホテルだから出来ることだろう。
とりあえずお風呂に入ろう。ジンギスカンは美味しかったが、案外煙がたっていて体中が煙り臭い。それにスーツも臭いが染みてるかもしれない。
清子は荷物の中から下着を取り出して、浴衣とタオルを手にする。そして外に出た。すると隣の部屋からも、晶が出てくる。
「よう。大浴場に行く?」
「えぇ。あとカウンターに言って消臭剤があればと。」
「あー。結構羊って煙たつよな。でも美味かったよ。」
「野菜が美味しかったです。」
二人はそう言ってエレベーターで階下に下りる。大浴場は一階にあるのだ。
「お前が出るのを待つよ。」
「どうして?」
「ここって繁華街の中にあるからさ、変なヤツが泊まってるみたいだし。」
「そんなところに良く宿を取りましたよね。」
「近くで温泉付きのビジネスホテルは、ここしかなかったから。あとすげぇ高いし。」
「……。」
「今度、温泉こようぜ。仕事抜きでさ。」
「やです。」
大浴場から出て、受付カウンターで消臭剤を借りる。そう言ってくるお客さんは想定内らしく、無料で小さなスプレー式のアトマイザーを手渡してくれた。
「気が利いてますね。」
「それ、俺にも貸してくれる?」
「臭いとか気になるんですか?」
「明日さ、お前何時に会社いく?」
「十時ですね。」
「だったら早く出てさ、白鳥見に行こうぜ。」
「白鳥?」
「すごい朝早くないと見れないけど、今、シーズンらしいんだよ。結構近くにあるし。で、白鳥があまり臭いがあると逃げるらしいから、それ貸してほしい。」
「良いですけど……。」
「悪いな。」
結局部屋に行かないといけないのか。清子は心の中でため息を付きながらも、それでも少し期待していたところがある。
それぞれの部屋に戻ると、清子は掛けているスーツとコートにスプレーをかけた。少し臭いがあったようだが、あまり悪い匂いではない。石鹸のような匂いだった。
そしてその部屋の外を見る。雪が強くなったようで、清子はそれに携帯電話のカメラを向ける。雪は珍しくないかもしれないが、この量はすごい。まるで吹雪だ。
その画像を史に送る。史はずっと南の土地にいるのだ。
そして携帯電話を置くと、鍵と消臭スプレーを手にして部屋を出る。隣の部屋のチャイムを鳴らすと、すぐに晶が出てきた。
「スプレーを。」
「お。ありがとう。」
煙草の匂いがする。もう一服していたのだろう。
「それじゃ……。」
部屋に戻ろうとした清子に、晶は少し笑って言う。
「入れてほしいって言わないのか。」
「……。」
「俺、ずっと我慢してんだけど。俺だけ?」
「……。」
すると清子はぐっと拳に力を入れて、晶がいる部屋に足を進める。
「明日早いんでしょ?」
「帰ったら邪魔が入るだろ?声を上げても良いし、今しかチャンス無いじゃん。」
「……私は我慢することなんか慣れてる。」
「俺は出来ないな。なぁ。清子。入れてって言って。」
「……。」
その言葉に清子は、何も言わずに晶の部屋の方へ近づいた。そして手を捕まれる。
「言って。」
「……入れてくれる?」
すると晶は笑顔になり、清子を引き寄せるように自分の部屋に入れた。ドアを閉めたとたんに、そのドアに清子を押しつけると唇を重ねた。最初から舌を入れる。清子もそれに応えるように晶の首に手を回した。
「はげし……。」
「もう駄目。我慢できない。」
「待って……。」
「待たれるか。」
浴衣の襟刳りから手を入れる。下着が手に当たり、そこから乳首を出した。
「待って……待ってって……晶。」
「何だよ。」
「……服……。」
「あぁ?あー。そうだったっけ。」
白鳥を見に行くのだ。匂いがあったら逃げてしまうかもしれないと言いだしたのは晶だった。晶は清子から離れると、床に落ちているアトマイザーを手にした。そして掛けてある服にそれを振る。
「いい匂いだな。」
「うん。」
「でも明日にはその匂いも取れてないと困るんだけどな。」
晶はそう言ってアトマイザーをテーブルに置く。そして改めて、清子に向き合った。もう浴衣の乱れを直している。
だが改めて晶は清子を引き寄せると、唇を重ねる。後ろ頭を支えていないと、倒れてしまいそうなくらい清子は受け身だった。
「受け身も良いけどさ、自分からしてみてよ。」
「……私から?」
「あぁ。ほら。」
少しかがんでくる晶に、清子は少し背伸びをする。そして唇をまた重ねた。
「ん……。」
晶の方が吐息が漏れる。舌を絡ませるのも、口内を舐めるのも、きっと史に仕込まれたのだ。だがそれでもいい。ゾクゾクする。
唇を離すと、清子は晶の首筋に唇を当てる。
「どうしたんだよ。積極的だな。」
少し痛みを感じた。清子がその首筋を吸ったのだろう。唇を離すと跡がわずかに残った。
「私も……我慢してたから。」
「え?」
手に触れる度にどれだけ胸が熱くなっただろう。清子と呼ぶ声がどれだけ愛しいと思っただろう。
「二度とは言わない。」
「良いよ。最初は、お前の好きなようにして良いから。」
すると晶はベッドに座ると、清子を引き寄せた。膝の上に載せると、浴衣の裾があく。思わずそののぞいている太股に触れた。
「ん……。」
すべすべしている肌だ。そしてその上に手をはわせる。すると下着越しでも濡れているのがわかった。
「お前、早く濡れすぎだろ。」
「うるさい。」
「キスだけで感じたの?それともさっきちょっと触っただけで感じたの?」
「……私だって……。」
「え?」
顔を背けて清子は言う。
「触りたかったのよ。」
その言葉に晶は、清子の手を握ると胸に手を持ってくる。
「好きなだけ触れよ。俺も好きなだけ触るから。」
晶はそう言うと、その帯に手をかけた。しゅるっという音がして、帯が床に落ちる。
当然のように部屋は別々に取ってある。清子はほっとして鍵を晶から受け取ったが、晶は少し笑って言う。
「俺の部屋隣だからよ。いつでも来い。」
「行かない。」
清子はそういって鍵を受け取る。そして三階の別々の部屋に入った。温泉は大浴場にあり浴衣も用意してあるし、タオルもある。本当に温泉宿のようだ。食事だけがないだけだ。チェーン化されている格安のビジネスホテルではなく、地元のビジネスホテルだから出来ることだろう。
とりあえずお風呂に入ろう。ジンギスカンは美味しかったが、案外煙がたっていて体中が煙り臭い。それにスーツも臭いが染みてるかもしれない。
清子は荷物の中から下着を取り出して、浴衣とタオルを手にする。そして外に出た。すると隣の部屋からも、晶が出てくる。
「よう。大浴場に行く?」
「えぇ。あとカウンターに言って消臭剤があればと。」
「あー。結構羊って煙たつよな。でも美味かったよ。」
「野菜が美味しかったです。」
二人はそう言ってエレベーターで階下に下りる。大浴場は一階にあるのだ。
「お前が出るのを待つよ。」
「どうして?」
「ここって繁華街の中にあるからさ、変なヤツが泊まってるみたいだし。」
「そんなところに良く宿を取りましたよね。」
「近くで温泉付きのビジネスホテルは、ここしかなかったから。あとすげぇ高いし。」
「……。」
「今度、温泉こようぜ。仕事抜きでさ。」
「やです。」
大浴場から出て、受付カウンターで消臭剤を借りる。そう言ってくるお客さんは想定内らしく、無料で小さなスプレー式のアトマイザーを手渡してくれた。
「気が利いてますね。」
「それ、俺にも貸してくれる?」
「臭いとか気になるんですか?」
「明日さ、お前何時に会社いく?」
「十時ですね。」
「だったら早く出てさ、白鳥見に行こうぜ。」
「白鳥?」
「すごい朝早くないと見れないけど、今、シーズンらしいんだよ。結構近くにあるし。で、白鳥があまり臭いがあると逃げるらしいから、それ貸してほしい。」
「良いですけど……。」
「悪いな。」
結局部屋に行かないといけないのか。清子は心の中でため息を付きながらも、それでも少し期待していたところがある。
それぞれの部屋に戻ると、清子は掛けているスーツとコートにスプレーをかけた。少し臭いがあったようだが、あまり悪い匂いではない。石鹸のような匂いだった。
そしてその部屋の外を見る。雪が強くなったようで、清子はそれに携帯電話のカメラを向ける。雪は珍しくないかもしれないが、この量はすごい。まるで吹雪だ。
その画像を史に送る。史はずっと南の土地にいるのだ。
そして携帯電話を置くと、鍵と消臭スプレーを手にして部屋を出る。隣の部屋のチャイムを鳴らすと、すぐに晶が出てきた。
「スプレーを。」
「お。ありがとう。」
煙草の匂いがする。もう一服していたのだろう。
「それじゃ……。」
部屋に戻ろうとした清子に、晶は少し笑って言う。
「入れてほしいって言わないのか。」
「……。」
「俺、ずっと我慢してんだけど。俺だけ?」
「……。」
すると清子はぐっと拳に力を入れて、晶がいる部屋に足を進める。
「明日早いんでしょ?」
「帰ったら邪魔が入るだろ?声を上げても良いし、今しかチャンス無いじゃん。」
「……私は我慢することなんか慣れてる。」
「俺は出来ないな。なぁ。清子。入れてって言って。」
「……。」
その言葉に清子は、何も言わずに晶の部屋の方へ近づいた。そして手を捕まれる。
「言って。」
「……入れてくれる?」
すると晶は笑顔になり、清子を引き寄せるように自分の部屋に入れた。ドアを閉めたとたんに、そのドアに清子を押しつけると唇を重ねた。最初から舌を入れる。清子もそれに応えるように晶の首に手を回した。
「はげし……。」
「もう駄目。我慢できない。」
「待って……。」
「待たれるか。」
浴衣の襟刳りから手を入れる。下着が手に当たり、そこから乳首を出した。
「待って……待ってって……晶。」
「何だよ。」
「……服……。」
「あぁ?あー。そうだったっけ。」
白鳥を見に行くのだ。匂いがあったら逃げてしまうかもしれないと言いだしたのは晶だった。晶は清子から離れると、床に落ちているアトマイザーを手にした。そして掛けてある服にそれを振る。
「いい匂いだな。」
「うん。」
「でも明日にはその匂いも取れてないと困るんだけどな。」
晶はそう言ってアトマイザーをテーブルに置く。そして改めて、清子に向き合った。もう浴衣の乱れを直している。
だが改めて晶は清子を引き寄せると、唇を重ねる。後ろ頭を支えていないと、倒れてしまいそうなくらい清子は受け身だった。
「受け身も良いけどさ、自分からしてみてよ。」
「……私から?」
「あぁ。ほら。」
少しかがんでくる晶に、清子は少し背伸びをする。そして唇をまた重ねた。
「ん……。」
晶の方が吐息が漏れる。舌を絡ませるのも、口内を舐めるのも、きっと史に仕込まれたのだ。だがそれでもいい。ゾクゾクする。
唇を離すと、清子は晶の首筋に唇を当てる。
「どうしたんだよ。積極的だな。」
少し痛みを感じた。清子がその首筋を吸ったのだろう。唇を離すと跡がわずかに残った。
「私も……我慢してたから。」
「え?」
手に触れる度にどれだけ胸が熱くなっただろう。清子と呼ぶ声がどれだけ愛しいと思っただろう。
「二度とは言わない。」
「良いよ。最初は、お前の好きなようにして良いから。」
すると晶はベッドに座ると、清子を引き寄せた。膝の上に載せると、浴衣の裾があく。思わずそののぞいている太股に触れた。
「ん……。」
すべすべしている肌だ。そしてその上に手をはわせる。すると下着越しでも濡れているのがわかった。
「お前、早く濡れすぎだろ。」
「うるさい。」
「キスだけで感じたの?それともさっきちょっと触っただけで感じたの?」
「……私だって……。」
「え?」
顔を背けて清子は言う。
「触りたかったのよ。」
その言葉に晶は、清子の手を握ると胸に手を持ってくる。
「好きなだけ触れよ。俺も好きなだけ触るから。」
晶はそう言うと、その帯に手をかけた。しゅるっという音がして、帯が床に落ちる。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる