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行方
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雪のせいで飛行機の時間は少し遅れていたが、無事に行きと同じ空港へ戻ってきた。H道の空港とは違って、広い国際空港だ。電車もバスもある。
「お前、バスで来たの?」
「電車。そっちの方が高いけれど、時間には正確だから。」
「俺も、今日は電車で来たわ。ってことは往復で買ってる?」
「うん。」
「じゃ、電車で帰ろうぜ。」
電車のホームはどこだろうと周りを見渡していたとき、晶の携帯電話が鳴った。晶はそれを手にすると、わずかに舌打ちをした。
「もしもし?え……あー今空港についてさ……。あぁ、安西さんから頼まれた写真?帰ってからで良いかと思ってさ。」
H道へ行くと決まった一昨日の夜。晶の元に新聞社から連絡が入っていたのだ。今度出版する本の表紙に、鶴や雪山の写真を使いたいらしい。個人的にも気になっていたので、その話に飛びついたのだ。
電話を切ると、清子は晶の方を見て指さす。
「こっち。」
「おー。悪いな。」
着替えなどと一緒にカメラの機材も入れていた晶の荷物は多い。キャリーケースを引きずっていた。対して清子の荷物は少ない。普段持っているバッグとは別に、着替えなどしかは言っていない小さいボストンバッグだけだった。
「安西さんって言う名前が聞こえたけど。」
「新聞社の読み物担当の女だよ。今度文芸誌の編集長になるらしいぜ。」
正直、安西に直接会ったときと惑った自分が居た。安西は清子によく似ている女だと思う。色気はなく、細身で、そして長い髪を一つにまとめているだけ。清子を老けさせたような人だと思った。
「冬山省吾の遺作を出版するらしいぜ。あの新聞の読み物のコーナーにずっと連載してただろ。」
「あぁ。」
「自宅を調べたら、もう完結してたみたいでな。それを出版するんだと。」
「売れるのかしら。」
「え?」
「模倣をしていたことは表にはでていないけれど、ネットの噂では結構そういうことを呟かれているみたいだったから。」
「ふーん。」
「初期の頃の作品は、遠藤守に似ていると言われてる。」
「……作風が変わったってことか。」
「作風が変わったというのは、模倣をする相手が変わったとも言える。そんな作家のものを買うかしら。」
「買うよ。」
その言葉に清子は驚いたように晶をみる。
「え?」
「一定数のファンがいる。そんなファンは、そんな噂信じちゃいねぇから。」
「……そんなものなの?」
すると晶は頭をかいて清子に言う。本当はコレを言いたくなかったのだ。
「俺もゴーストをしてた時期あがるんだ。」
「晶も?」
海外に出ていたときだった。ホテルの部屋に、ある写真家から連絡が入った。
「写真が売れたそのマージンを払うから、撮ってきてくれないかって。」
「それを受けたの?」
「金が無かったからな。」
ある程度まとまった金を持って海外へ行っていたのだが、一年の後半となればそれも尽きる。騙されたりしていたこともあって、無くなるのは早かったのだ。
現地でアルバイトのような日銭を稼いでいたこともあったが、それではとうてい足りない。だからその話に飛びついたのだ。
「危ないことをしてるわね。」
「今考えればな。今でもほら、焼酎のポスターでさ雲海のポスターがあるだろ?」
「あぁ。知ってるわ。」
居酒屋などで張られているのを見たことがある。幻想的で目に留まったのを覚えていた。
「あれ、俺が撮ったんだよ。」
「すごいわね。」
すると晶は少し笑って清子を見下ろした。
「見直した?」
清子も少し笑う。
「そういう所よ。晶。」
「何だよ。」
「調子に乗らないで。」
「帰るまでは調子に乗らせろよ。」
電車のホームへやってきて、電車を待った。その間、電光掲示板には次の電車の案内が映し出されている。その下には、今日のニュースが一言で映し出されていた。
「やっぱ、食中毒のニュース結構でかいな。」
H道であった食中毒は、ホテルに責任があると厳しい声が挙がっている。正直、そのホテルに泊まる予定にしていたので、都合が良かったと晶は思っていた。
「お……。おい。」
「何?もう電車来るわよ。」
そういって清子はそれをよけようとした。だが晶はその電光掲示板の文字を見て、清子をそこに視線を上げさせる。
「……え?」
冬山省吾のゴーストライターをしていた女性が、記者会見をするらしい。
「今更何でこんなことが……。」
「ヤクザかな。」
「ヤクザ?」
「金の折り合いが付かなかったってことかもしれねぇ。」
電車がやってきて、二人はそれに乗り込む。荷物を置くと、清子は早速携帯電話で記事を調べていた。
「……週刊誌の電子版で載ってるわね。詳しいことは来週の週刊誌に全文を載せるって書いている。」
「ってことは……あの鶴の写真は使われねぇかもな。」
「頼まれてたの?あの写真。」
「んー。そう。新聞社の読み物担当の女がさ、北国の話だからそういう写真を撮ってきて欲しいって言ってきたんだ。」
しかし個人的には撮りたい写真だった。仕事が無くても撮りに行っていたかもしれない。
「……父も、いずれ表にでるのかしら。」
「かもな。そっちの方がでかい記事になりそうだ。」
だが清子の手がまた震えている。明日、その本人に会うからだろう。それに気が付いて、晶は清子の手を握る。
「付いてやるから。」
「うん……。」
素直にそういってくれるだけで嬉しい。素直になってくれているのだ。
「今日、うちにくる?」
すると、清子は首を横に振った。
「史に会わないと。」
「そっか……そうだったな。俺、ついて行くよ。」
「いいの。私が……。」
「お前だけの責任じゃねぇだろ。俺も押さえきれなかったんだし。」
「……私も押さえられなかったから。」
「何だよ。何か今日、素直じゃねぇ?」
「弱いところを見せたからかな。」
すると晶は清子の肩に手を置いた。
「その調子で頼ってくれよ。」
清子はその言葉に少し笑って、その体に体を寄せた。もう寒くないのに、その温かさが心地良かった。
「お前、バスで来たの?」
「電車。そっちの方が高いけれど、時間には正確だから。」
「俺も、今日は電車で来たわ。ってことは往復で買ってる?」
「うん。」
「じゃ、電車で帰ろうぜ。」
電車のホームはどこだろうと周りを見渡していたとき、晶の携帯電話が鳴った。晶はそれを手にすると、わずかに舌打ちをした。
「もしもし?え……あー今空港についてさ……。あぁ、安西さんから頼まれた写真?帰ってからで良いかと思ってさ。」
H道へ行くと決まった一昨日の夜。晶の元に新聞社から連絡が入っていたのだ。今度出版する本の表紙に、鶴や雪山の写真を使いたいらしい。個人的にも気になっていたので、その話に飛びついたのだ。
電話を切ると、清子は晶の方を見て指さす。
「こっち。」
「おー。悪いな。」
着替えなどと一緒にカメラの機材も入れていた晶の荷物は多い。キャリーケースを引きずっていた。対して清子の荷物は少ない。普段持っているバッグとは別に、着替えなどしかは言っていない小さいボストンバッグだけだった。
「安西さんって言う名前が聞こえたけど。」
「新聞社の読み物担当の女だよ。今度文芸誌の編集長になるらしいぜ。」
正直、安西に直接会ったときと惑った自分が居た。安西は清子によく似ている女だと思う。色気はなく、細身で、そして長い髪を一つにまとめているだけ。清子を老けさせたような人だと思った。
「冬山省吾の遺作を出版するらしいぜ。あの新聞の読み物のコーナーにずっと連載してただろ。」
「あぁ。」
「自宅を調べたら、もう完結してたみたいでな。それを出版するんだと。」
「売れるのかしら。」
「え?」
「模倣をしていたことは表にはでていないけれど、ネットの噂では結構そういうことを呟かれているみたいだったから。」
「ふーん。」
「初期の頃の作品は、遠藤守に似ていると言われてる。」
「……作風が変わったってことか。」
「作風が変わったというのは、模倣をする相手が変わったとも言える。そんな作家のものを買うかしら。」
「買うよ。」
その言葉に清子は驚いたように晶をみる。
「え?」
「一定数のファンがいる。そんなファンは、そんな噂信じちゃいねぇから。」
「……そんなものなの?」
すると晶は頭をかいて清子に言う。本当はコレを言いたくなかったのだ。
「俺もゴーストをしてた時期あがるんだ。」
「晶も?」
海外に出ていたときだった。ホテルの部屋に、ある写真家から連絡が入った。
「写真が売れたそのマージンを払うから、撮ってきてくれないかって。」
「それを受けたの?」
「金が無かったからな。」
ある程度まとまった金を持って海外へ行っていたのだが、一年の後半となればそれも尽きる。騙されたりしていたこともあって、無くなるのは早かったのだ。
現地でアルバイトのような日銭を稼いでいたこともあったが、それではとうてい足りない。だからその話に飛びついたのだ。
「危ないことをしてるわね。」
「今考えればな。今でもほら、焼酎のポスターでさ雲海のポスターがあるだろ?」
「あぁ。知ってるわ。」
居酒屋などで張られているのを見たことがある。幻想的で目に留まったのを覚えていた。
「あれ、俺が撮ったんだよ。」
「すごいわね。」
すると晶は少し笑って清子を見下ろした。
「見直した?」
清子も少し笑う。
「そういう所よ。晶。」
「何だよ。」
「調子に乗らないで。」
「帰るまでは調子に乗らせろよ。」
電車のホームへやってきて、電車を待った。その間、電光掲示板には次の電車の案内が映し出されている。その下には、今日のニュースが一言で映し出されていた。
「やっぱ、食中毒のニュース結構でかいな。」
H道であった食中毒は、ホテルに責任があると厳しい声が挙がっている。正直、そのホテルに泊まる予定にしていたので、都合が良かったと晶は思っていた。
「お……。おい。」
「何?もう電車来るわよ。」
そういって清子はそれをよけようとした。だが晶はその電光掲示板の文字を見て、清子をそこに視線を上げさせる。
「……え?」
冬山省吾のゴーストライターをしていた女性が、記者会見をするらしい。
「今更何でこんなことが……。」
「ヤクザかな。」
「ヤクザ?」
「金の折り合いが付かなかったってことかもしれねぇ。」
電車がやってきて、二人はそれに乗り込む。荷物を置くと、清子は早速携帯電話で記事を調べていた。
「……週刊誌の電子版で載ってるわね。詳しいことは来週の週刊誌に全文を載せるって書いている。」
「ってことは……あの鶴の写真は使われねぇかもな。」
「頼まれてたの?あの写真。」
「んー。そう。新聞社の読み物担当の女がさ、北国の話だからそういう写真を撮ってきて欲しいって言ってきたんだ。」
しかし個人的には撮りたい写真だった。仕事が無くても撮りに行っていたかもしれない。
「……父も、いずれ表にでるのかしら。」
「かもな。そっちの方がでかい記事になりそうだ。」
だが清子の手がまた震えている。明日、その本人に会うからだろう。それに気が付いて、晶は清子の手を握る。
「付いてやるから。」
「うん……。」
素直にそういってくれるだけで嬉しい。素直になってくれているのだ。
「今日、うちにくる?」
すると、清子は首を横に振った。
「史に会わないと。」
「そっか……そうだったな。俺、ついて行くよ。」
「いいの。私が……。」
「お前だけの責任じゃねぇだろ。俺も押さえきれなかったんだし。」
「……私も押さえられなかったから。」
「何だよ。何か今日、素直じゃねぇ?」
「弱いところを見せたからかな。」
すると晶は清子の肩に手を置いた。
「その調子で頼ってくれよ。」
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