8 / 34
手錠
宴のあと
しおりを挟む
壁側にユーリが眠っている。
シングルベッドは2人で寝るには狭いと思っていたが、ユーリは昨日のようにハンが布団のかぶらずに眠ることを反対したのだ。
「良いから寝なさいな。私は意識しないから。」
その言葉にハンも反論する。
「ワタシだって…。」
「だったら問題じゃない。」
それから二人で横になって彼女は数秒のうちに寝息をたててしまった。
意識をしていないわけじゃない。一緒に風呂にも入って体を見られたし、見てしまった。それで騒ぎ立てるようなことではない。。
そう言えば昔、ミケルに半ば強引に連れられて町の繁華街へ行った。香水と化粧の匂いのキツい女に寄ってこられ、もう少しでその女を斬り殺すところだったのを覚えている。
そんな匂いのしない女を抱いたこともあるが、こうして二人で並んで寝ることはなかった。コトが済めばさっさと殺して去っていた。よけいな感情を入れたくなかったからだ。
「…。」
女の匂いはイヤだった。昔を思い出すから。でもこの女はイヤじゃない。
女じゃないからか?いや違う。
だったら…何だ。
「眠れないの?」
眠っていたと思ったユーリが目を開けた。
「起きたのか。」
「別に眠ってたわけじゃないわよ。」
彼女は彼の方を向かずに、深くため息を付いた。
「どうしたんだ。」
「ううん。昔を思い出したのよ。だめね。ノアに会ったからかしら。」
「どんなことがあったんだ。」
すると彼女はいたずらっぽく笑う。
「気になるの?」
「いいや。別に。」
「別に攻めたりしないわ。いい傾向だと思うし。」
彼女は首だけ彼の方を向いた。
「あなたは他人に興味がないと思っていたから。」
「…興味はない。でも…。」
どうしてだろう。ユーリのことは知りたいと思う。と、そのとき彼の左手に温かいモノが触れた。それは彼女の手だった。
「どうしたの?」
「どうしてワタシの手を?」
「どうしてかしらね。」
彼女もまた彼を気にしていた。別の生き物、別の生命体。なのに彼の温もりは、彼女にとっても何よりも代え難いモノだったのだ。
「いやならやめるわ。」
手を離そうとした。しかしそれをやめないで欲しいと思う。彼は彼女の手を握り返した。
「ハン…。」
暗くて良かった。
頬が赤くなっているのを悟られたくなかったから。
廃墟の町は朽ち果てていて、建物自体も木製のモノは朽ち果てようとしているし、石造りのモノはツタが絡まっている。道路には雑草が生えていて、もう何年も手入れはされていないようだった。
4人はじっと待っていると、大きく派手な音をたてて1台のバイクが彼らの前に停まった。
ヘルメットをとった人は、まるで何かのは虫類のような顔立ちの男だった。背が高く、ひょろりとした金色の髪をつんつんに立てている。その男はノアを見た瞬間、笑顔になった。
「やぁ。久しぶりだね。ボス。」
「ジョネス。お前もな。」
「今は「shadow」にいるんだって?」
アイネスが聞くと、ジョネスは嬉しそうに笑った。
「雇われだよ。君が呼べばすぐに僕は君の元へやってくるけどね。」
その言葉がとても上っ面のようで、アイネスはそれが一番イヤだったのだ。
「ずいぶん気に入られているな。アイネス。」
「よしてよ。ボス。」
ノアだって気が付いていないわけではない。ただ少し言ってみただけだった。
ジョネスはその奥にいるハンに声をかけた。そして胸ポケットから小さな鍵を取り出す。
「これを君に。」
そしてその隣にいるユーリにパンツの後ろポケットにある、小さな機械を手渡した。
「無くしていたんだろう。あの部屋に落ちていた。」
「そうね。ありがとう。ジョネス。」
「お礼は結構だ。ユーリ。僕は君を監禁していたという事実は消せないんだから。」
「お詫びというわけね。」
「それと…希望かな。」
「希望?あなたの口からでると、イヤな予感しかしないわ。」
ジョネスの目がすっと細くなる。そして彼女の顔の前まで顔を近づけた。
「君と戦ってみたい。それだけだ。」
空気が裂けるような音がした。まるでキスをしようかというくらい顔が近かった二人の間に、剣が差し込まれたのだ。
「いい加減にしろ。」
のけぞって避けた。一瞬のその微笑みが消え、ジョネスはハンの方をみる。
「腕を上げたね。ハン。」
「…。」
「それとも彼女のためか?」
「下らない。」
剣をしまわずに、ジョネスの方に剣を向けた。しかし彼は後ろを向き、ノアの方に話しかける。
「ボス。彼女をさらったのは、あなたに伝言があるからだ。」
「伝言?」
ノアもまたナイフを構えようとしていたが、それをしまった。それはノアだけではない。アイネスも細いナイフを投げようとしていたのだ。
「「shadow」のボス。ヨナからだ。」
シングルベッドは2人で寝るには狭いと思っていたが、ユーリは昨日のようにハンが布団のかぶらずに眠ることを反対したのだ。
「良いから寝なさいな。私は意識しないから。」
その言葉にハンも反論する。
「ワタシだって…。」
「だったら問題じゃない。」
それから二人で横になって彼女は数秒のうちに寝息をたててしまった。
意識をしていないわけじゃない。一緒に風呂にも入って体を見られたし、見てしまった。それで騒ぎ立てるようなことではない。。
そう言えば昔、ミケルに半ば強引に連れられて町の繁華街へ行った。香水と化粧の匂いのキツい女に寄ってこられ、もう少しでその女を斬り殺すところだったのを覚えている。
そんな匂いのしない女を抱いたこともあるが、こうして二人で並んで寝ることはなかった。コトが済めばさっさと殺して去っていた。よけいな感情を入れたくなかったからだ。
「…。」
女の匂いはイヤだった。昔を思い出すから。でもこの女はイヤじゃない。
女じゃないからか?いや違う。
だったら…何だ。
「眠れないの?」
眠っていたと思ったユーリが目を開けた。
「起きたのか。」
「別に眠ってたわけじゃないわよ。」
彼女は彼の方を向かずに、深くため息を付いた。
「どうしたんだ。」
「ううん。昔を思い出したのよ。だめね。ノアに会ったからかしら。」
「どんなことがあったんだ。」
すると彼女はいたずらっぽく笑う。
「気になるの?」
「いいや。別に。」
「別に攻めたりしないわ。いい傾向だと思うし。」
彼女は首だけ彼の方を向いた。
「あなたは他人に興味がないと思っていたから。」
「…興味はない。でも…。」
どうしてだろう。ユーリのことは知りたいと思う。と、そのとき彼の左手に温かいモノが触れた。それは彼女の手だった。
「どうしたの?」
「どうしてワタシの手を?」
「どうしてかしらね。」
彼女もまた彼を気にしていた。別の生き物、別の生命体。なのに彼の温もりは、彼女にとっても何よりも代え難いモノだったのだ。
「いやならやめるわ。」
手を離そうとした。しかしそれをやめないで欲しいと思う。彼は彼女の手を握り返した。
「ハン…。」
暗くて良かった。
頬が赤くなっているのを悟られたくなかったから。
廃墟の町は朽ち果てていて、建物自体も木製のモノは朽ち果てようとしているし、石造りのモノはツタが絡まっている。道路には雑草が生えていて、もう何年も手入れはされていないようだった。
4人はじっと待っていると、大きく派手な音をたてて1台のバイクが彼らの前に停まった。
ヘルメットをとった人は、まるで何かのは虫類のような顔立ちの男だった。背が高く、ひょろりとした金色の髪をつんつんに立てている。その男はノアを見た瞬間、笑顔になった。
「やぁ。久しぶりだね。ボス。」
「ジョネス。お前もな。」
「今は「shadow」にいるんだって?」
アイネスが聞くと、ジョネスは嬉しそうに笑った。
「雇われだよ。君が呼べばすぐに僕は君の元へやってくるけどね。」
その言葉がとても上っ面のようで、アイネスはそれが一番イヤだったのだ。
「ずいぶん気に入られているな。アイネス。」
「よしてよ。ボス。」
ノアだって気が付いていないわけではない。ただ少し言ってみただけだった。
ジョネスはその奥にいるハンに声をかけた。そして胸ポケットから小さな鍵を取り出す。
「これを君に。」
そしてその隣にいるユーリにパンツの後ろポケットにある、小さな機械を手渡した。
「無くしていたんだろう。あの部屋に落ちていた。」
「そうね。ありがとう。ジョネス。」
「お礼は結構だ。ユーリ。僕は君を監禁していたという事実は消せないんだから。」
「お詫びというわけね。」
「それと…希望かな。」
「希望?あなたの口からでると、イヤな予感しかしないわ。」
ジョネスの目がすっと細くなる。そして彼女の顔の前まで顔を近づけた。
「君と戦ってみたい。それだけだ。」
空気が裂けるような音がした。まるでキスをしようかというくらい顔が近かった二人の間に、剣が差し込まれたのだ。
「いい加減にしろ。」
のけぞって避けた。一瞬のその微笑みが消え、ジョネスはハンの方をみる。
「腕を上げたね。ハン。」
「…。」
「それとも彼女のためか?」
「下らない。」
剣をしまわずに、ジョネスの方に剣を向けた。しかし彼は後ろを向き、ノアの方に話しかける。
「ボス。彼女をさらったのは、あなたに伝言があるからだ。」
「伝言?」
ノアもまたナイフを構えようとしていたが、それをしまった。それはノアだけではない。アイネスも細いナイフを投げようとしていたのだ。
「「shadow」のボス。ヨナからだ。」
0
あなたにおすすめの小説
いや、無理。 (完結)
詩海猫(8/29書籍発売)
恋愛
細かいことは気にせずお読みください。
もはや定番となった卒業パーティー、急に冷たくなって公の場にエスコートすらしなくなった婚約者に身に覚えのない言い掛かりをつけられ、婚約破棄を突きつけられるーーからの新しい婚約者の紹介へ移るという、公式行事の私物化も甚だしい一連の行動に、私は冷めた瞳をむけていたーー目の前の男は言い訳が終わると、
「わかってくれるだろう?ミーナ」
と手を差し伸べた。
だから私はこう答えた。
「いや、無理」
と。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる