手錠から始まった

神崎

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手錠

宴のあと

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 壁側にユーリが眠っている。
 シングルベッドは2人で寝るには狭いと思っていたが、ユーリは昨日のようにハンが布団のかぶらずに眠ることを反対したのだ。
「良いから寝なさいな。私は意識しないから。」
 その言葉にハンも反論する。
「ワタシだって…。」
「だったら問題じゃない。」
 それから二人で横になって彼女は数秒のうちに寝息をたててしまった。
 意識をしていないわけじゃない。一緒に風呂にも入って体を見られたし、見てしまった。それで騒ぎ立てるようなことではない。。
 そう言えば昔、ミケルに半ば強引に連れられて町の繁華街へ行った。香水と化粧の匂いのキツい女に寄ってこられ、もう少しでその女を斬り殺すところだったのを覚えている。
 そんな匂いのしない女を抱いたこともあるが、こうして二人で並んで寝ることはなかった。コトが済めばさっさと殺して去っていた。よけいな感情を入れたくなかったからだ。
「…。」
 女の匂いはイヤだった。昔を思い出すから。でもこの女はイヤじゃない。
 女じゃないからか?いや違う。
 だったら…何だ。
「眠れないの?」
 眠っていたと思ったユーリが目を開けた。
「起きたのか。」
「別に眠ってたわけじゃないわよ。」
 彼女は彼の方を向かずに、深くため息を付いた。
「どうしたんだ。」
「ううん。昔を思い出したのよ。だめね。ノアに会ったからかしら。」
「どんなことがあったんだ。」
 すると彼女はいたずらっぽく笑う。
「気になるの?」
「いいや。別に。」
「別に攻めたりしないわ。いい傾向だと思うし。」
 彼女は首だけ彼の方を向いた。
「あなたは他人に興味がないと思っていたから。」
「…興味はない。でも…。」
 どうしてだろう。ユーリのことは知りたいと思う。と、そのとき彼の左手に温かいモノが触れた。それは彼女の手だった。
「どうしたの?」
「どうしてワタシの手を?」
「どうしてかしらね。」
 彼女もまた彼を気にしていた。別の生き物、別の生命体。なのに彼の温もりは、彼女にとっても何よりも代え難いモノだったのだ。
「いやならやめるわ。」
 手を離そうとした。しかしそれをやめないで欲しいと思う。彼は彼女の手を握り返した。
「ハン…。」
 暗くて良かった。
 頬が赤くなっているのを悟られたくなかったから。

 廃墟の町は朽ち果てていて、建物自体も木製のモノは朽ち果てようとしているし、石造りのモノはツタが絡まっている。道路には雑草が生えていて、もう何年も手入れはされていないようだった。
 4人はじっと待っていると、大きく派手な音をたてて1台のバイクが彼らの前に停まった。
 ヘルメットをとった人は、まるで何かのは虫類のような顔立ちの男だった。背が高く、ひょろりとした金色の髪をつんつんに立てている。その男はノアを見た瞬間、笑顔になった。
「やぁ。久しぶりだね。ボス。」
「ジョネス。お前もな。」
「今は「shadow」にいるんだって?」
 アイネスが聞くと、ジョネスは嬉しそうに笑った。
「雇われだよ。君が呼べばすぐに僕は君の元へやってくるけどね。」
 その言葉がとても上っ面のようで、アイネスはそれが一番イヤだったのだ。
「ずいぶん気に入られているな。アイネス。」
「よしてよ。ボス。」
 ノアだって気が付いていないわけではない。ただ少し言ってみただけだった。
 ジョネスはその奥にいるハンに声をかけた。そして胸ポケットから小さな鍵を取り出す。
「これを君に。」
 そしてその隣にいるユーリにパンツの後ろポケットにある、小さな機械を手渡した。
「無くしていたんだろう。あの部屋に落ちていた。」
「そうね。ありがとう。ジョネス。」
「お礼は結構だ。ユーリ。僕は君を監禁していたという事実は消せないんだから。」
「お詫びというわけね。」
「それと…希望かな。」
「希望?あなたの口からでると、イヤな予感しかしないわ。」
 ジョネスの目がすっと細くなる。そして彼女の顔の前まで顔を近づけた。
「君と戦ってみたい。それだけだ。」
 空気が裂けるような音がした。まるでキスをしようかというくらい顔が近かった二人の間に、剣が差し込まれたのだ。
「いい加減にしろ。」
 のけぞって避けた。一瞬のその微笑みが消え、ジョネスはハンの方をみる。
「腕を上げたね。ハン。」
「…。」
「それとも彼女のためか?」
「下らない。」
 剣をしまわずに、ジョネスの方に剣を向けた。しかし彼は後ろを向き、ノアの方に話しかける。
「ボス。彼女をさらったのは、あなたに伝言があるからだ。」
「伝言?」
 ノアもまたナイフを構えようとしていたが、それをしまった。それはノアだけではない。アイネスも細いナイフを投げようとしていたのだ。
「「shadow」のボス。ヨナからだ。」
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