ゼラニウム

みのり🍀

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3 妹の正体

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お葬式は意外にも人が集まった。
大半が彼女の仲間、後輩などの下っ端だった

妹は静かな場所を好むタイプだったからお葬式もシンプルに、より簡潔に済ませようと思った。親族だけの小さな葬式に騒ぎを聞きつけた彼女の友人や仲間たちが、ぽろぽろやってきた。

アヤカさんっ、、なんでっっアヤカさん!!
ずっと、尊敬してました総長。。

ぼろぼろ泣き叫ぶ後輩もいた、
悔しさをありったけの声で好きなだけ叫び走り去った学生らしき子もいた。



妹はだった。
昔から頑固者で少し歪んだ考えをしていたけど、中学生になると一気に落ちぶれていった。夜遅くまで平気でほっつき歩いていたり内緒でバイクを買ったり。学校も行くには、行くが部活は一切入らず放課後はひたすらバイクを走らせていた。
そのときはまだ中1で、良かった。

中2になると彼女の行動は凄まじい勢いで悪化した。思春期や反抗期が交じり重なって、家族がいくら注意してもずっと遊んでいた。時折、夜中に帰ってきたり、時たま学校をサボったりしていたらしい。痺れを切らし、両親や私が夕方の街を
いくら探せど、どこにも見当たらない。


ただまだマシだった、どんなに遅くても
のだから。




高校に入っても彼女の暴走は止まらなかった。
むしろ行動範囲が広がり、夜0時過ぎの帰宅や学校を平気でサボることは日常茶飯事。家に帰らないことも多くなった。



お葬式に来ていた彼女の高校時代の友達に聞けば、妹はレディースに所属して暴走族だったらしい。高3では総長の代理という位まで上り詰めていた。
そして社会人。

ついに彼女はに足を踏み入れたらしい。
詳しいことは知らない、正直いって興味もなかった。



いつだったか2、3年前。
彼女から急に電話がかかってきた、とお葬式に来ていた子のうち1人が話してくれた。

なんでも彼女は、妹と1番仲が良くてお互い慕い合っていた、唯一の親友と呼べる仲だったらしい。高校時代に知り合い、共に不良時代を生き抜いた2人は社会人になって疎遠となっていた。妹は進学しなかったが、その子は不良をやめて大学に進んだから自然的に、関係は消滅してしまったと話していた。

★もしもし、ぽむちゃん?元気してる?
、、、
あっアヤカ?久しぶり~今、何してるの?
★んー詳しくは言えないけどアッチ系かなー
 社会とは確実に背を向けてるやつ。
どういうこと?
★んーまあ。ウラ警的なやつ~

ヤンキーはやめたの?
★やめたよ、今はユダ裏切り者キャッドアバー死体にしてるの
そっか、

電話は10分くらいで終わったらしい。以前は濃厚な関係で、そして久々の会話だったのにも関わらず、思ったほど呆気なく容易い世間話をしたらしい。

★あ仕事入った。んじゃ切るわーまたねぇ~
そっか、うん。お仕事頑張ってねん、
今度ランチ行こ~
★おけおけーばいびー。

それから彼女と電話することはなかったらしく、今でもどうして急に電話をかけてきたのかは分からない。

眉を下げながらそう話したあと、彼女は仕事があるので失礼します、と私に会釈し去っていった。
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