平凡な365日

葉津緒

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回想9

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あー……多分、皆トイレに行ったってことだろ、大混雑中とか言ってたし。
あと最後に「くそ餓鬼」つったか、こら。


――ちょっと待て。
そういや肝心のあいつは何処だ。


「おい、アリスもトイレに行ったのか」

「アリスだぁ? 生徒会の奴等と向こうの審査員席にいるだろうが」


指差す方向。つまり舞台を見れば、確かにいやがった。
会長の膝の上に座るアリスが。
何考えてんだあの自意識過剰コンビ、転入生と糞会長は。


「あれじゃなくてもう一人のほう」

「はあ? 知らないし、そんなん俺がいちいち把握しとかなきゃ駄目なわけ。大体さっきからなんなのお前、好き勝手に人を煽って舞台混乱させて。
女装イベントだから色気振り撒いて客盛り上げるのは構わねーよ、むしろ正解。
ただし限度ってもんがあるだろ。興奮しすぎた客が暴れでもしたらイベント自体が中止、全部パアになるの理解してっか!? もっと周りを見ろ糞」

「兄ちゃん先輩いぃ、すとっぷ! はいこれ鏡、そこに何が見える? 絶対さっきから自分のキャラ設定忘れちゃってるよねっ」


突如、実行委員が手鏡をつき出した。
向かい合う俺らの眼前に、手のひら大サイズのそれ。
制服内ポケットから取り出すのが一瞬見えたけど、今までよく割れなかったな。

鏡面を見つめ何故かピタッと動きを止めるセーラー服美少女。
そこに映る自身の姿に驚いたような表情を浮かべ……だが次の瞬間、それはにっこりと愛らしい笑顔に変わった。

 
「フフッやだなぁ、僕ちょっと興奮しすぎちゃったみたい。ごめんねー吸血鬼さん。でもぉ本当にこれからは気をつけてね」


うん?


「えーっともう一人のアリスさんだっけ。ここにいないんなら多分皆と一緒にお手洗いにでも行ったんじゃないかなぁ、吸血鬼さんのお友達?」

「いや違う、けど」


なんだこの変わりよう。
悔しいが、はにかむような笑顔にキュンとくる。
しかし舞台にいたときと比べ、ツンデレ具合が異なるし当然さっきまでの巻き舌野郎とは全くの別人すぎる。
つまりこれって演技、だよな。
もしくはまさかの多重人格……あ、さすがにそれはねーな。


「女吸血鬼さん! あのっすみません、兄ちゃん先輩キレると柄が悪くなっちゃうんです。でも今、ミスコン仕様に戻りましたから安心してください!」

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