平凡な365日

葉津緒

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回想9.5

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私の好きなあの子でしたらこんなとき

「俺が一緒にいて助けてやるよ、だって親友だからな!」

と間違いなくもっとグイグイ来たはずです。
も、もちろんこんな初対面の平凡なんかにグイグイ来られても迷惑でしかありませんが。


とにかく考えれば考えるほど彼の反応はちぐはぐで、おかしな点が多い。
素直に言葉のみを聞けば、まるで親切心からごく当たり前のことを『普通』に話していたようにも思えます。
けれど本当に?
彼の言動に裏は無いのか?
あるとしたら余程の演技力ですね。

もし本当に無いのだとすれば、
君は――。



「え、副会長さま? うわっ本当に来た。いや、あああの駄目です今トイレの中は立ち入り禁止ですから!」

「……ミスコン再開が遅れているそうなので様子を見に来たのですが」


考え事をしながら歩いてるうちにどうやら目的地まで来ていたようです。
妙に慌てたイベント実行委員に呼び止められ、思考は中断。
というか立ち入り禁止?
出場者たちが用足しのついでに中で着替えでもしているのでしょうか。更衣室も兼ねた控え室を用意してあったはずなのに、迷惑な話ですね。

別の実行委員が、トイレの中から出てくるミスコン出場者たちに早く会場へ戻るよう声をかけています。
しかし皆よほど我慢していたのでしょう。
女装姿なのにやたらと男臭い、スッキリした表情をしています。それも何故か赤面しながら。


「?」

「あ、あの。間もなくイベントは再開できると思いますので、どうぞ副会長さまも会場へお戻りください」

「残りの出場者はここにいる人たちで全員でしょうか」

「えっと、いえ、確か向こうのトイレにもまだ数人行っているはずです。こちらに入りきれなかったみたいなので」

「ではそちらを確認してから戻ります」

「は? ちょっと待っ、副会長さま!」


持ち場を離れられない実行委員たちを残し、次は『向こうのトイレ』を目指して歩き出します。

今戻ったところで再び待たされるのは明らかですし。
これ以上あの席でただじっと二人の姿を見せつけられ、その苦痛に耐え続けるのは真っ平です。
せめてイベントが再開するギリギリまで離れていたい。あの子が自分以外の誰かに甘える様子など知りたくない。これ見よがしな会長のドヤ顔にニヤケ顔なんて……。

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