平凡な365日

葉津緒

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「……可愛らしい、は余計だ」


急に馬鹿らしくなって肩の力を抜いた。
後ろから抱きしめるように俺を拘束する赤髪がホッと息をつく。おい、なんだその反応、人を危険物扱いかよ。
つか、もう離れろ馬鹿力。絡ませた足も退けろ。片足立ちで男に抱きつかれっぱなしとか間抜けすぎるわ。



「眼、大丈夫か?」

「カラコン落とした。ちょっと見つからねーかも」


片目を手で押さえる俺に、離れ際そっと耳打ちする赤髪。
ナイフが掠ったときに黒のカラコンを片方落としたのだ。よって、さっきお喋り野郎が見た俺の眼は金色。額からの出血と、吸血鬼の仮装が相俟ってそりゃあ化け物じみた姿に映ったことだろう。

さり気なく探してみるが周囲には見当たらない。どこ行ったよ俺の黒目。


「副会長さま!」「ど、どうしよう……意識が」


と、そんな悠長な場合じゃなかったわ。副会長が気を失っているらしい。とりあえず頭は動かすなよお前ら。そんで一人は自分の服を着直せ、目に毒だから。

仲間の怪我を見慣れている青髪が副会長に近寄る。


「大丈夫そうだけど早めに医者に見せたほうがいいな。特にこの人と君に使われた塗り薬は違法性が高い、と思う」


そう判断すると、いつの間にかリーダー格の不良から回収した『媚薬』入りの小瓶を摘んで見せた。


「常習性も高いはずだから、病院でちゃんと診てもらわないと中毒になるよ」

「!?」

「……なあ、アンタらさっき俺に言ったよな。助けてくれてありがとう、って。じゃあ、今まで同じ目に遭って最後まで誰にも助けてもらえないままの奴らはどうなるんだ? 撮影されて脅されて薬まで使われたら、多分一度きりじゃ終わらないだろ。学園辞めたって逃げられないよな。
それをこいつらは慣れ切って当たり前のようにバカ笑いしながらやってた。きっと何度も何度も、アンタらの依頼に金までもらって」

「ど、どうしてそれ」「い、依頼したのは僕達じゃない!」


そう叫んでから慌てて口を塞いでもなぁ。
俺を見る目も明らかに変わったし。何故知っているのか、どこまで知られているのか、邪魔な人間は排除しなきゃ――ってとこだろう。
ああ、やっぱり言うだけ無駄か。
自分は悪くない、襲われた奴らが悪い、生徒会の皆様に近付こうとするからだザマーミロ、くらいにしか感じないんだもんな。
だけどその理屈だと


「大好きな副会長サマが巻き添え食って襲われて、他の被害者と全く同じ目に遭ったとしても『自分達のせいじゃない、副会長サマが不運だったから悪いんだ』って思うのか?」

「そんな、こと」「……っ」


「話し合い中すまないが狐からの知らせだ。どうする?」


スマホを片手に、青髪が割り込んできた。
さっきから何かやってんなと思えば、ずっと嘘つき野郎と繋がってたのか。

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