平凡な365日

葉津緒

文字の大きさ
87 / 92
回想11

しおりを挟む
「なんだか楽しそうだな」

「だって、嬉し。こんな幸せな……俺、貴方に会いたかった」

「そうか俺もだ。毎日お前に会いたかったよ。今はこうして会えてとても嬉しい」

「……うん」


ほらね、やっぱり。だって俺の欲しい言葉をくれる。あの人の特別な笑顔を見せてくれる。
これって昨日頑張ったご褒美かな。じゃあ、夢なら良いかな。素直に甘えても構わないよな?

夢の中の“あの人”がベッドに腰掛ける。
「少しだけ起こすぞ」と背中を支えられながら、だけど力の入らない俺の身体をあの人の胸にもたれ掛かるようにして座らされる。


「急いだせいでこれくらいしか用意できなくて悪いな。ほら可愛い口を開けろ、アーン」

「あ……むぐ」

「どうだ?」

「……ん、おいひ。好き」


ひんやりとして美味な懐かしい味が口一杯に広がった。これって俺の大好物、あの人の手作り特製プリンアラモードだ。凄い。夢なのに再現力抜群でめちゃくちゃ得した気分だ。
ねえ、もっと欲しい。ちょうだい? だめ?


「ぐっ、やばい……可愛い……なんだこの甘えたがり仔猫ちゃんモード。ほ、ほら、だめじゃねーから安心しろ。アーン」

「あー? むぐ」


なんだろう、最初のほうの呟きがよく聞こえなかった。まあ、夢だし気にしなくてもいいか。
だけどせめて顔を見たくてそっと振り仰げば。目が合った数秒後に「うっ」と変な声を出したあの人が口元を押さえて顔を背けてしまう。

やだ、こっち見て。俺のことずっと見ていて。目を離さないでほしいんだ。
お願い。
今だけで良いから俺のそばにいてくれる?
もっともっと優しくして大事な宝物みたいに抱っこもしてね。俺はきっと貴方から心配されたい。俺を誰よりも愛してほしい。ずっとずうっと、こうしていたい。


「っ、だから、なんだこの普段とのギャップ……素直すぎてヤバイだろ。潤んだ目で不安そうに見詰めてくるとか、すがり付きながらメチャクチャ可愛いおねだりしやがってくそっ、俺に襲われたいのかこいつ……!
こ、こら、あんまり抱きつくなよ。せっかく持ってきた食い物がこぼれるだろ、おっと」


「ん、もったいない」

「――――ッ!?」


零れたクリームを舐め取ろうとあの人の指を咥え、そのまましゃぶってみる。


「んっ、んう、ふあ……ぁ」


もっと舐めたかったのに口の中から指が抜かれてしまった。残念。


「お、お前…………はああ、ったく勘弁しろよ。一種の幼児がえりかこれ? 熱で不安定になってるのかもなマジで俺以外の野郎にゃ死んでも見せらんねーわ、極悪すぎて洒落にならねぇ。確実にヤられる!」

.
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

笑わない風紀委員長

馬酔木ビシア
BL
風紀委員長の龍神は、容姿端麗で才色兼備だが周囲からは『笑わない風紀委員長』と呼ばれているほど表情の変化が少ない。 が、それは風紀委員として真面目に職務に当たらねばという強い使命感のもと表情含め笑うことが少ないだけであった。 そんなある日、時期外れの転校生がやってきて次々に人気者を手玉に取った事で学園内を混乱に陥れる。 仕事が多くなった龍神が学園内を奔走する内に 彼の表情に接する者が増え始め── ※作者は知識なし・文才なしの一般人ですのでご了承ください。何言っちゃってんのこいつ状態になる可能性大。 ※この作品は私が単純にクールでちょっと可愛い男子が書きたかっただけの自己満作品ですので読む際はその点をご了承ください。 ※文や誤字脱字へのご指摘はウエルカムです!アンチコメントと荒らしだけはやめて頂きたく……。 ※オチ未定。いつかアンケートで決めようかな、なんて思っております。見切り発車ですすみません……。

百合豚、男子校に入る。

BL
百合をこよなく愛する男子高校生・眞辺恵。 母の歪んだ価値観により共学への進学を断たれ、彼が入学させられたのは―― 男同士の恋愛が“文化”として成立している、全寮制男子校《私立瑞嶺学園》だった。 この学園では、生徒会長は「抱かれたいランキング」で選ばれ、美貌こそが正義とされる世界。 それでも眞辺は決意する。 生徒会長になり、この学校を“共学”に変え、間近で百合を拝むことを。 立ちはだかるのは、顔面至上主義の学園制度、性に奔放すぎるイケメンな幼馴染、そして彼らに憧れ恋をする生徒たち。 さらに何故か、学園の人気者たちに次々と目をつけられてしまい――。 百合を拝むため男子校を変えようとする異端者が、歪んだ王道学園を改革する物語。

風に立つライオン

壱(いち)
BL
BL非王道全寮制学園の生徒会役員の主人公。王道転入生によって学校内の秩序や生徒会の役割だとかが崩壊した。金、地位、名誉、名声、権力、全てを手にしている者になったつもりでいたのは誰だったのか。 王道を脇役に主人公は以前出会った生徒会長の父との再会、恋人だった義父の病んでそうなカンジに眩暈がしそうだった。

目立たないでと言われても

みつば
BL
「お願いだから、目立たないで。」 ****** 山奥にある私立琴森学園。この学園に季節外れの転入生がやってきた。担任に頼まれて転入生の世話をすることになってしまった俺、藤崎湊人。引き受けたはいいけど、この転入生はこの学園の人気者に気に入られてしまって…… 25話で本編完結+番外編4話

オム・ファタールと無いものねだり

狗空堂
BL
この世の全てが手に入る者たちが、永遠に手に入れられないたった一つのものの話。 前野の血を引く人間は、人を良くも悪くもぐちゃぐちゃにする。その血の呪いのせいで、後田宗介の主人兼親友である前野篤志はトラブルに巻き込まれてばかり。 この度編入した金持ち全寮制の男子校では、学園を牽引する眉目秀麗で優秀な生徒ばかり惹きつけて学内風紀を乱す日々。どうやら篤志の一挙手一投足は『大衆に求められすぎる』天才たちの心に刺さって抜けないらしい。 天才たちは蟻の如く篤志に群がるし、それを快く思わない天才たちのファンからはやっかみを買うし、でも主人は毎日能天気だし。 そんな主人を全てのものから護る為、今日も宗介は全方向に噛み付きながら学生生活を奔走する。 これは、天才の影に隠れたとるに足らない凡人が、凡人なりに走り続けて少しずつ認められ愛されていく話。 2025.10.30 第13回BL大賞に参加しています。応援していただけると嬉しいです。 ※王道学園の脇役受け。 ※主人公は従者の方です。 ※序盤は主人の方が大勢に好かれています。 ※嫌われ(?)→愛されですが、全員が従者を愛すわけではありません。 ※呪いとかが平然と存在しているので若干ファンタジーです。 ※pixivでも掲載しています。 色々と初めてなので、至らぬ点がありましたらご指摘いただけますと幸いです。 いいねやコメントは頂けましたら嬉しくて踊ります。

【完結】我が兄は生徒会長である!

tomoe97
BL
冷徹•無表情•無愛想だけど眉目秀麗、成績優秀、運動神経まで抜群(噂)の学園一の美男子こと生徒会長・葉山凌。 名門私立、全寮制男子校の生徒会長というだけあって色んな意味で生徒から一目も二目も置かれる存在。 そんな彼には「推し」がいる。 それは風紀委員長の神城修哉。彼は誰にでも人当たりがよく、仕事も早い。喧嘩の現場を抑えることもあるので腕っぷしもつよい。 実は生徒会長・葉山凌はコミュ症でビジュアルと家柄、風格だけでここまで上り詰めた、エセカリスマ。実際はメソメソ泣いてばかりなので、本物のカリスマに憧れている。 終始彼の弟である生徒会補佐の観察記録調で語る、推し活と片思いの間で揺れる青春恋模様。 本編完結。番外編(after story)でその後の話や過去話などを描いてます。 (番外編、after storyで生徒会補佐✖️転校生有。可愛い美少年✖️高身長爽やか男子の話です)

そういった理由で彼は問題児になりました

まめ
BL
非王道生徒会をリコールされた元生徒会長が、それでも楽しく学校生活を過ごす話。

寂しいを分け与えた

こじらせた処女
BL
 いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。  昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。

処理中です...