平凡な365日

葉津緒

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数時間後。
せっかく良くなった体調が悪化し、再び熱で寝込んだのは自業自得だろう。

『すみませんでした。あれは熱で頭が完全にバカになってたんです。どうかあのときのことは全部、一切合切忘れてください。一生のお願いです!』

と必死のメッセージを送り、あとは返事を見るのも聞くのも怖くてスマホの電源を切りっ放しにしといたら後日、寮監室への呼び出しがあった。
連絡がつかないから不安になって、との理由であの日仲良くなった寮監さんに直接あの人が電話をしたらしい。

……結局そこで俺は逃げ切れないことを悟ったのだった。
忘れてはもらえなかったが、代わりに、あの日俺がやらかしたとんでもない失礼な言動をあの人は笑いながら許してくれて。

『あんときのお前マジ可愛かったわ。なんならもっと普段から俺に甘えても良いんだぞ?』

なんて、からかわれたりもしたけどね。
それとあの可愛らしいパジャマはあの人の手みやげだったそうだ。
つまりあの日、俺の汗を拭って下着まで着替えさせてくれたのも……そんなことまであの人にやらせちゃったのかよ俺!

『まあ気にするな』

って、無理です。気にしますよさすがに高校生にもなって恥ずかしいです。くっそー。
よし決めた、もう絶対人前で寝込けねぇ。


『ふうん? なら、これからお前が寝込むのは俺と二人っきりのときだけだな』

「へ?」


ははは、と電話の向こうで愉快そうに笑うあの人の声が聞こえて。それはまるで幸せな夢の続きのように思えたんだ――。





という思いがけない出来事のおかげでうっかり忘れてたけど。
あの旧校舎事件の被害者達から俺に関する証言は一切無く、『女吸血鬼』については薬で錯乱した加害者側の妄想扱いとなったそうだ。
親衛隊くんらが上手く副会長に言ってくれたんだろうな。面倒臭いことにならなくて良かったわ。ふう。


……けれどそれは俺の独り合点だったらしい。

あのとき、まだ完全には意識を失っていなかった副会長が俺の“頼み事”を聞いていたことや、救出されたあとは被害者の親衛隊くんらとの接触が無いまま自身の判断で『女吸血鬼』が今回の件に全く関わっていないと証言したこと。
現場で無くした黒のカラコンを偶然副会長が見つけていたり、救出に駆け付けた親衛隊幹部らの本気の泣き顔を見て何故か


『一人で大丈夫なんですか』

『副会長お一人で行動されてて大丈夫なのかな、と。えっと……親衛隊とか誰か信頼できる人が一緒じゃないと、その。一人でいるのは危ないですよ』


ミスコン前にそう話し掛けてきた一人の生徒の言葉を思い出していたなんて。

.
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