ワンコとわんわん

葉津緒

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【番外編】逃亡わんわん

逃げました。

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『わんわん』が補佐となってから約一週間。
なぜか生徒会室内では、役員たちがちょっぴり揉めていた。


「……遅せぇ、あいつらはまだ来ねーのか!?」

「慌てなくてもじきに来ますから少し落ち着いて下さい会長」

「は? しっかり落ち着いてるだろーが。生意気な口きいてんじゃねーぞ、一年!」


まだ放課後になったばかりだというのに、書記とわんわんの到着が遅いことに苛々する俺サマ会長。それをいさめているのはやや毒舌気味な、一年生庶務。


「でもやはり心配ですね、わんわん君。一昨日あんなことがあったばかりですし」

「絶対あれは会長が悪いよねー。おかしな校内放送とかするから全校生徒に追いかけられて。かわいそうに、わんわん君よっぽど怖かったんだよー」

「は!? バカ犬(書記)が青い顔して『わんわん、何処にもいない……!』っつーから見かけた奴はいねぇか、わざわざ俺様が聞いてやったんじゃねーか」


不安そうにため息を吐くのは通称『微笑みの王子様』こと副会長。そして不満げにむう、と口を尖らすチャラ男会計。
親切心から当然のことをしたまでだ、何が悪い。と胸を張る会長の言葉に対し

あれのどこが「親切」だよ!

というツッコミは口に出すだけ無駄な気がして、誰も反応しない。
かわりに会長含めこの場にいる全員が、一昨日の出来事を思い返すのだった。



 ***



一昨日の放課後。

連日書記さまにべったり張り付かれ嫌気がさしていた、わんわん。書記親衛隊の目をかいくぐり奇跡的な逃亡に成功した彼は、数日ぶりに一人の時間を楽しんでいた。

本来なら寮の自室に隠れそのまま引きこもりたいところだが。
すでに補佐就任一日目には書記さまが持つスペアキー(わんわんと同室の友人Aが渡したらしい)で難なく部屋への侵入を許してしまっている。
今ではむしろ危険地帯と言って良いだろう。

このため寮へは向かわずに校舎内を、それも人の少ない場所を選んで逃げ歩く。
たまにすれ違う生徒達からはチラチラと視線を感じるものの、もはや恒例行事と化した生徒会室内での行為……書記さまに抱きつかれ、ブラッシングやマッサージと言いながらあちこち、くすぐったり撫でられたり……にくらべたら何てことはない。

久々の解放感を味わって、
今にもスキップしながら鼻歌の一つでも披露しちゃいそうな状態、のわんわんだった。

が、そんなとき。
生徒会(会長)より緊急のお知らせと称した、校内放送が流れだす。

『あー、全校生徒に告ぐ。書記のノラが逃げ出した。誰でも良い、ノラを見つけ次第その場で無傷のまま捕獲しとけ。んで生徒会に連絡しろ。
捕まえた奴への謝礼は後日、俺様が直々に出してやる。とにかく早い者勝ちだからな、つーことで本気だせテメーら!』


…………それはもう一瞬で学園中が、わんわんパニックである。

.
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