ワンコとわんわん

葉津緒

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第一部 ワンコとわんわん

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なんでいきなり興奮してんの、書記さま!?
再びギュウギュウ抱き締められ、頬擦りやら頭やお腹の他あちこち撫でられたりくすぐられたり。
圧迫されて痛いだけならまだしも、うっかりおかしな声が出ちゃうからやめて。恥ずかしいからぁぁあ!

そんな俺達を眺め、ため息を吐く隊長さん。
ハッ、そうかまだこの人がいたんだ。
この中で唯一まともそうな彼なら、書記さまと『補佐』の件から俺を助け出してくれるかも……という期待は瞬時にして裏切られた。
目が合った途端、にっこり笑って


「補佐、頑張ってくださいね」


と応援(最後通告)されたのだ。がっでむ。
書記さまの力加減と諸々のちょっかいについては叱ってくれたけど


「話し合いに集中できないので、わんわん君を鳴かせないでください」


って、言い方ちょっとおかしくない?



 ***



「差し出がましいこととは思いますが」


そう切り出す隊長さん。
平凡な人間が、補佐とはいえ突然生徒会入りするのだ。それは今後確実に親衛隊の嫉妬や反感を買い、制裁につながることを意味している。
その上、ついさっき俺を抱えて走りまわる書記さまの姿が複数の生徒達によって目撃されている。余計な勘繰りや勝手な妄想、あらぬ噂が学園中に広まるのも時間の問題。
こうなった以上、全校生徒への発表はなるべく早いほうが良い。

そして書記さま親衛隊には秘策がある……とのことだった。秘策って何?


「ねぇ、だったらいっそ親衛隊を解散させちゃえばー?」

「火に油を注ぐ結果となるだけです。おやめください」

「無理やり解散させた場合、わんわん君への逆恨みが怖いですよね」

「わんわん、危険になるの、ダメ」

「しかしこのままだと結局わんわん君に被害が……」


「あ、あの、俺は別に補佐やりたくな」


「大丈夫です。今回の件については書記さま親衛隊の全員が協力致しますから。多少、予定とは異なりますが……我々にお任せいただければきっと上手くいくはずです」

「チッ、失敗するんじゃねーぞ」

「わんわんは俺が、絶対に、守る!」

「そうですよ先輩。だから生徒会辞めないでくださいね」

「では至急、わんわん君の補佐就任に関する手続きを――」



「いや、だから補佐なんか本当に嫌なんですけどー……。おーい、聞けよこら」


結果的に俺の嘆願は全員揃って完全無視。
ひ、ひどいっ。



こうして、
場所と設備さえあれば今すぐ全校生徒への説明(説得)が可能だという隊長さんの言葉で、急遽全校集会が行われることとなった。
ちなみにすっかり忘れていたけれど、書記さまが呼び出された本来の目的・役員会議は後回し。良いのかそれで……。

昼休みが終わるとすぐに、教室からの移動を指示された生徒たち。
しかも集合場所は体育館ではなく、全校生徒が入れるシアターホール。一体何事かといぶかしく思うのも当然だろう。
(今更だが、この学園にはセレブな生徒が多いためか一般家庭の俺から見て驚くような施設も普通にあったりする。未だに慣れないけど)


やがて書記さま親衛隊員ら全面協力の下、それははじまった。

.
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