ワンコとわんわん

葉津緒

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【番外編】逃亡わんわん

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 ***



「わんわん!」

「ひいぃ!? って、しょ……書記さま?」


いきなり覚えのある温もりに包まれ、驚くわんわん。
瞳を開くと、自分を強く抱きしめる書記さまがいた。
それから少し遅れてやってきたのは、額に汗をかき、ライト片手に息を切らす美形集団。


「おい馬鹿犬、あいつはいたか!?」

「ハァハァ、待ってよ会長ー……って、あ。わんわん君見つけたー!」

「ふぅ、わんわん君が無事で良かったです。怪我はありませんか?」

「さすが先輩、わんわん君の居場所を匂いだけで特定するなんて凄い特技ですね!」

「はぁふぅ、書記さま親衛隊員に連絡。書記さまが無事、わんわん君を保護。繰り返します……」



不思議に思う。
さっきまで孤独で真っ暗闇だった目の前が、暖かくて明るい華やかなものへと変化していく。

それはまるで奇跡のようだった。

けれど、なんだか夢か幻を見ている気がして、ぼーっと彼らを眺めるわんわん。
その冷え切った身体を書記さまが優しく撫でさすり、強く強く抱きしめた。


「わんわん……遅くなって、ごめん。もう怖く、ない。大丈夫、大丈夫……!」

「書記さま……っ……」



 ***



「あのあと、わんわん君ってばキュウキュウ泣きっぱなしで可愛かったよねー。まぁワンコ書記が抱っこしながら必死で慰めてて大変そうだったけど」

「よほど心細かったのでしょうね、かわいそうに。どんなに私達が話しかけても泣きやむことができませんでしたから」

「でも、ポロポロ泣きながら先輩に一生懸命しがみついてる姿はちょっと微笑ましいなぁって思いました。わんわん君、泣き疲れて結局そのまま眠っちゃいましたし。やっぱり先輩と一緒だと安心するんでしょうか」

「…………チッ」


一昨日の出来事を振り返る役員たち。
ちなみに
それぞれ脳内では『迷子になった犬とその飼い主、感動の再会』的な場面を重ねていたりする。

そのはずなのだが。


「会長さっきから怖い顔してるけど、どうかしたー?」

「あ? どうもしてねーよ。つか、お前だって変なツラしてんぞ」

「はぁ? 何それブジョクー? 俺の顔のどこが変なんだよ、いじめ反対ー」

「いつ俺がテメエを虐めたよ、何時何分何秒!」

「うっわー会長ダサ、それ言っちゃうんだ」

「な、テメ!?」

「ああもう、黙りなさい二人とも!」

「先輩たち本当に遅いですねぇ……」



泣きながらしがみつく、わんわん。
それを愛しそうに抱きしめていた、書記。

二人の姿を思い出すたび、なぜかチクッと胸の辺りが痛む気がするような。
個人差は多少あるものの自分でもよく分からない原因不明のモヤモヤを感じる者、数名。

彼らがその理由に気づくのは、残念ながらもうしばらくあとのことである。



【逃亡わんわん/END】
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