ワンコとわんわん

葉津緒

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引っ越しわんわん

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にぎやかで楽しくて、最後には帰りたがらない書記さまを隊長さんが無理やり引き摺り去っていった。
俺はというと、新しい部屋で一人になった途端ほんの少しさみしくなった気がして、シャワーも浴びずベッドに潜り込むと珍しく早めの眠りについた。

もちろん一人で。

寝る前には隊長さんに教えられた通り、部屋の鍵を閉めてチェーンもかけた。窓の鍵も確認した。
なのに、どうして。


「わんわ、ん……まだ、眠……」


何故ここに書記さまがいるのだろう。
そしてどうやって部屋に入ったんだこの人。
うひゃああっやめて、あんまりそこ撫でないで、くすぐったいから!


「ひははっ、やめ、やめて書記さま、ふゃっ!?」


向かい合わせで抱き込まれながら、思わず逃れようと首をすくめてしまう。

あまり動くと締め殺されかねないので、助けが来るまで俺は必死に我慢の子。
だがしかし、モゾモゾとちょっと身じろぐくらいは大目に見てほしい。
だって……今の何?
よしよしって感じに首の後ろを撫でられたら、物凄くぞわっとしたんだけど。

気持ち良いような悪いような。
いや、多分不快じゃなかったとは思う。むしろもっと撫でてほし――いや、それは気のせいだと信じたい。
ただ、急にゾクゾクっとして身体中に弱い電気が走ったみたいになって、鳥肌が立ちそうというか立ったというか。
えっ、まさかこれ変な病気じゃないよね。
くすぐったすぎて頭と皮膚の感覚がおかしくなるとか。
それとも単に風邪でも引いて、悪寒がした?

ああっ、ちょっと待って。
俺が自分の健康を心配するあいだくらい、あちこち撫で回すのはやめてください書記さまッ。
てかこれ、本当に寝惚けてるの?
絶対に起きてないか?


「うひぃっ! やややめて、それ本当にくすぐった、ひゃははっアハハハ、やっやめ、書記さまの馬鹿ああぁっ!」


「…………わんわん、やっぱり俺のこと、嫌い?」

「ふ、ぅえ?」

「俺がすぐ迎えに、行かなかった、から。会いに行かなかったから。全部、俺が馬鹿だったせい。ごめん、ね……わんわん。ごめんなさ、い」

「ぐほぉッ!? ち、違います。あの、嫌いとかじゃなくて」


身体中をあちこち撫で回し、くすぐっていた手が止まった。

.
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