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第二章 再会(神子視点)
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※若干シリアス、そして変態注意。
魔王が消えたあと。
奇跡的に誰一人命を落とさずに済んだとはいえ、謁見の間にいるほぼ全ての人間が恐怖で青ざめていた。
その中をニコニコ笑いながら歩くマリ。すげーな、あいつ。
恐ろしい魔王(今日は何故か馬鹿っぽかったが)と対峙したばかりなのに、怯えるどころか逆に嬉しそうに見える。
……俺と再会したから?
なんて、それはねーか。
マリが俺たちに会って喜ぶはずもない。むしろ憎まれて当然のことを散々やってきたんだしな、くそっ。
今のあいつは何も覚えていない様子だったが、きっといつかは思い出してしまうだろう。
俺がついさっき、マリの姿を目にした瞬間全ての記憶を甦らせたように。
というか、なんだあれ。
マリのやつ、あんな綺麗で可愛かったか?
いや、今の姿は驚くほど全く昔と変わらないのだが。
以前は常に控え目で困ったような、少し悲し気な微笑みを見せる奴だった。
感情を乱さず言葉を選んで慎重に話す。
間違っても俺らを睨んだり逆らうような真似はしない。
そんな彼を俺はずっとつまらない奴だと思っていた。見かけるたびに苛つき、殴り、蹴りつけたこともあった。
――あの頃の自分を殺してやりたい。
知らぬまにかけられた“呪い”のせいとはいえ、俺は他の者に心を奪われ、操られるまま盲目的にマリを憎悪し、蔑み、虐げ続けたのだ。
魔王との戦いで肉体を失いこの世界から弾き出される、あの日まで。
異世界に生まれ変わると俺はその記憶も忘れてしまった。
ただ、代わりに物心つく頃からずっと同じ夢を見続けてきた。何度も何度も。
会ったことのない仲間と自分が血に塗れ、黒く禍々しい強大な力を持つ“存在”と戦う場面。そこで誰かが泣き叫んでいる。
あまりにも悲しく痛々しい悲鳴。
優しく声をかけ、抱きしめ慰めてやりたいのに俺の身体は動かない。
やがてその人は決断してしまう。
全てを諦めたかのような、泣き笑いの表情で告げるのだ。
(やめ……ろ、やめてくれ!)
そして夢はいつも、制止しようとする自分の声で目が覚めて終わる。その繰り返しだった。
夢を見たあとは胸が締め付けられる。その意味も理由も分からず、いつのまにか俺は“彼”を好きになっていた。
会うことも話すことも触れることもできない、居もしない相手をだ。自分でも滑稽すぎて、最初から悲恋だと分かっているはずなのに何故――。
とか思っていたんだけどな。ハハ、違うじゃねーか。
召喚の儀式によってこちらの世界に戻され、夢の中の人物と同じ顔を見た瞬間全てを思い出した。
(ああ、マリ……マリだ!)
懐かしさと後悔、悲しみや怒り、そしてそれらを遥かに上回る喜びと愛しさ。
記憶と感情がごちゃ混ぜになって狂いそうだったが。
決して会えないはずの彼に、たとえ死んでも再び会いたいと願ったお前に、マリが今俺の目の前で存在してくれる現実に、泣きたくなるほどの幸福感を味わった。
「やっと会えた、マリ」
ずっと、お前に会って謝りたかったんだ。
そして今度こそ間違えない。
俺はお前を必ず……。
なんて、人の一世一代の告白(謝罪とプロポーズ)を邪魔しやがって、あのクソ魔王!
何が伴侶だ契約の花嫁だ。マリはこの俺が一生責任持って幸せにしてやることに決めたんだよ!
ふざけんじゃねぇぞ、てめえも一回死んで魔族やめてから出直してこいや。
だいたい、なんだこの結界。マリに抱きつけねーじゃねぇか!?
くそっ、くそっ、目の前にいるのに。めちゃくちゃ可愛い顔してマリが俺を待ってるっつーのに。
あああ、体当たりしてたらマリが面白がって指で弾きだした。
「えいっ」とかちょっ、マジ可愛いなそれ。直前に見せられた笑顔と手招きの仕草なんてもう、ちょっと勃ちそうに……いや実際少し反応してたわ。ごめんマリ、でも異世界にいたときの俺のおかずはずっとお前だったわけだし。
それよりなんか、マリの指で攻撃されるとちょっと興奮する。痛てぇけど確実にさっき以上に反応してるし。やっべ俺、Mじゃねーよな?
段々嫌そうな(気持ち悪いものを見るような)表情になっていくマリもたまらねぇ……。
***
「おい、鼻血が出てるぞ。拭け」
「あ?」
「仮にも神子を名乗る立場の人間が、あまり見苦しい真似をするな。そして二度とマリに近づくなこの変態、わきまえろ」
「チッ、偉そうに指図しやがって。てめえのほうこそマリに手ぇ出してねーだろうな?」
「ふん、我は今、マリの父であるぞ。父親が我が子に手を出すなどありえぬ。――だが。例えば愛する我が子に家族としての口づけをしたり、ときには共に湯などに入り健やかな成長具合を見守るためしっかりと身体の隅々を観賞……いや、あくまでも医師の健康診断的なものだからな?
その際ちょっとした悪戯心でマリのアレをナニしてしまい、湯中りする息子に父が責任を持って朝まで添い寝し目覚めたマリが恥ずかしそうに『父上、大好き』なんて言うかもしれんが……それも全て、仲良き親子の微笑ましい肌と肌の触れあいの範囲ではなかろうか。ハアハア、素晴らしい。そうだ今すぐ実行しなくては」
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魔王が消えたあと。
奇跡的に誰一人命を落とさずに済んだとはいえ、謁見の間にいるほぼ全ての人間が恐怖で青ざめていた。
その中をニコニコ笑いながら歩くマリ。すげーな、あいつ。
恐ろしい魔王(今日は何故か馬鹿っぽかったが)と対峙したばかりなのに、怯えるどころか逆に嬉しそうに見える。
……俺と再会したから?
なんて、それはねーか。
マリが俺たちに会って喜ぶはずもない。むしろ憎まれて当然のことを散々やってきたんだしな、くそっ。
今のあいつは何も覚えていない様子だったが、きっといつかは思い出してしまうだろう。
俺がついさっき、マリの姿を目にした瞬間全ての記憶を甦らせたように。
というか、なんだあれ。
マリのやつ、あんな綺麗で可愛かったか?
いや、今の姿は驚くほど全く昔と変わらないのだが。
以前は常に控え目で困ったような、少し悲し気な微笑みを見せる奴だった。
感情を乱さず言葉を選んで慎重に話す。
間違っても俺らを睨んだり逆らうような真似はしない。
そんな彼を俺はずっとつまらない奴だと思っていた。見かけるたびに苛つき、殴り、蹴りつけたこともあった。
――あの頃の自分を殺してやりたい。
知らぬまにかけられた“呪い”のせいとはいえ、俺は他の者に心を奪われ、操られるまま盲目的にマリを憎悪し、蔑み、虐げ続けたのだ。
魔王との戦いで肉体を失いこの世界から弾き出される、あの日まで。
異世界に生まれ変わると俺はその記憶も忘れてしまった。
ただ、代わりに物心つく頃からずっと同じ夢を見続けてきた。何度も何度も。
会ったことのない仲間と自分が血に塗れ、黒く禍々しい強大な力を持つ“存在”と戦う場面。そこで誰かが泣き叫んでいる。
あまりにも悲しく痛々しい悲鳴。
優しく声をかけ、抱きしめ慰めてやりたいのに俺の身体は動かない。
やがてその人は決断してしまう。
全てを諦めたかのような、泣き笑いの表情で告げるのだ。
(やめ……ろ、やめてくれ!)
そして夢はいつも、制止しようとする自分の声で目が覚めて終わる。その繰り返しだった。
夢を見たあとは胸が締め付けられる。その意味も理由も分からず、いつのまにか俺は“彼”を好きになっていた。
会うことも話すことも触れることもできない、居もしない相手をだ。自分でも滑稽すぎて、最初から悲恋だと分かっているはずなのに何故――。
とか思っていたんだけどな。ハハ、違うじゃねーか。
召喚の儀式によってこちらの世界に戻され、夢の中の人物と同じ顔を見た瞬間全てを思い出した。
(ああ、マリ……マリだ!)
懐かしさと後悔、悲しみや怒り、そしてそれらを遥かに上回る喜びと愛しさ。
記憶と感情がごちゃ混ぜになって狂いそうだったが。
決して会えないはずの彼に、たとえ死んでも再び会いたいと願ったお前に、マリが今俺の目の前で存在してくれる現実に、泣きたくなるほどの幸福感を味わった。
「やっと会えた、マリ」
ずっと、お前に会って謝りたかったんだ。
そして今度こそ間違えない。
俺はお前を必ず……。
なんて、人の一世一代の告白(謝罪とプロポーズ)を邪魔しやがって、あのクソ魔王!
何が伴侶だ契約の花嫁だ。マリはこの俺が一生責任持って幸せにしてやることに決めたんだよ!
ふざけんじゃねぇぞ、てめえも一回死んで魔族やめてから出直してこいや。
だいたい、なんだこの結界。マリに抱きつけねーじゃねぇか!?
くそっ、くそっ、目の前にいるのに。めちゃくちゃ可愛い顔してマリが俺を待ってるっつーのに。
あああ、体当たりしてたらマリが面白がって指で弾きだした。
「えいっ」とかちょっ、マジ可愛いなそれ。直前に見せられた笑顔と手招きの仕草なんてもう、ちょっと勃ちそうに……いや実際少し反応してたわ。ごめんマリ、でも異世界にいたときの俺のおかずはずっとお前だったわけだし。
それよりなんか、マリの指で攻撃されるとちょっと興奮する。痛てぇけど確実にさっき以上に反応してるし。やっべ俺、Mじゃねーよな?
段々嫌そうな(気持ち悪いものを見るような)表情になっていくマリもたまらねぇ……。
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「おい、鼻血が出てるぞ。拭け」
「あ?」
「仮にも神子を名乗る立場の人間が、あまり見苦しい真似をするな。そして二度とマリに近づくなこの変態、わきまえろ」
「チッ、偉そうに指図しやがって。てめえのほうこそマリに手ぇ出してねーだろうな?」
「ふん、我は今、マリの父であるぞ。父親が我が子に手を出すなどありえぬ。――だが。例えば愛する我が子に家族としての口づけをしたり、ときには共に湯などに入り健やかな成長具合を見守るためしっかりと身体の隅々を観賞……いや、あくまでも医師の健康診断的なものだからな?
その際ちょっとした悪戯心でマリのアレをナニしてしまい、湯中りする息子に父が責任を持って朝まで添い寝し目覚めたマリが恥ずかしそうに『父上、大好き』なんて言うかもしれんが……それも全て、仲良き親子の微笑ましい肌と肌の触れあいの範囲ではなかろうか。ハアハア、素晴らしい。そうだ今すぐ実行しなくては」
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