幼なじみ祭

葉津緒

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立ち入り禁止の古い校舎棟。
その端にある空き教室で。
『親衛隊』に所属する可愛らしい外見の少年たち数名、に囲まれて怯える少年が一人。
いたって平凡な容姿の彼は、BL王道学園における所謂『嫌われ脇役』くんだ。

要するに現在、親衛隊による制裁真っ只中――。


「平凡のくせに転入生を利用して生徒会の皆様方に近付くとか許せない」

「身の程知らずなバカには、罰として今から徹底的に痛めつけてあげなきゃね」

「じゃあ、お前たち頼んだよ。殴るなりヤるなり好きにして構わないから」


親衛隊の合図で扉が開き、教室内に入って来る大柄な男たち。
かなり着崩してはいるが同じ制服姿だ。


「おー任せとけ。つってもこんな平凡相手じゃ俺の勃たねぇし、サンドバック決定~」

「別に顔見なきゃいいんじゃね? 俺は突っ込む穴さえ有ればオッケー。ま、お前がぼこった後で俺がヤってやるよ」

「おいおい、それじゃあ平凡くんが可哀相過ぎるだろぉ? だったら俺はヤりながら殴ってみるわ」


ぎゃははは、と下品な笑い声をあげる不良たち。
平凡な少年一人を制裁(暴行)する為に、わざわざ親衛隊が雇ったらしい。


「や、嫌だ……だ、誰か助けて……ッ!」


顔色を失くしカタカタと震える少年。
恐怖のあまり足に力が入らず、今にも溢れそうな涙で視界が滲む。
親衛隊に両腕を掴まれ逃げることも出来ず、たとえ大声で助けを呼んだとして、一体誰がこんな場所に来てくれるというのか。

まさに絶体絶命である。



「――――アオ? まさかお前、アオなのか?」


そんな緊迫した空気を微塵も感じさせない、謎の声がこの場に響く。
発したのは、最後に教室へ入って来た美形不良くんだった。


「は?」「アオ?」「え、何?」


親衛隊および他の不良たちを一切無視して、興奮気味に駆け寄る美形不良くん。


「いや、間違いない絶対アオだろ! なあ俺のこと覚えてないか、ほら幼稚園でよく一緒に遊んだ、健斗(けんと)だよ」

「けん、と……え、本当にけんと君? 僕より小っちゃくて女の子みたいに可愛くて、あの泣き虫だった?」


「は?」「え?」「泣き虫……」


いきなり感動の再会を果たした、幼なじみ二人の姿。ア然とする目撃者たち。
頬を染め愛おしそうに『アオ』を見つめるのは、美形不良――改め健斗くん。


「やっぱりアオだ、うわマジか。すげー嬉しい! つか泣き虫だったとか言うなよ恥ずかしいだろ」

「あ、ごめん。でも懐かしいな、けんと君に会えるなんて。えっと……あれから元気だった?」


そして何やら思い出話が始まった。
所在なげな周囲の皆さん。
え、この場合どうすんの?
と誰一人言い出せない微妙な雰囲気に、教室中が包まれる。

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