幼なじみ祭

５

「おい、そこのお前！　何で勝手に蒼に触ってんだよ、蒼は俺のだぞ。さっさと手を離せ――ぐあッ」

「礼音！」


「け、けんと君！？」


怒鳴りながら近付いた転入生が、健斗に蹴り飛ばされた。
倒れ伏す彼を心配し駆け寄る美形たち。


「テメエ……よくも礼音に蹴り入れやがったな、絶対に許さねえぞ！」

「大丈夫ですか礼音！？　さては平凡、これはあなたの差し金ですね。やはりあなたという人は、何て汚らわしい」

「しっかりして礼音ー、悪者の不良と平凡は」
「僕らが退治してあげるからねー」

「平凡、きらい。不良、死……ね」


日頃の習慣からか、被害者である筈の平凡少年を一方的に厭悪し罵る生徒会連中。

爽やかスポーツマン美形くんは流石に口汚い言葉を発しないものの、明らかに軽蔑の眼差しを向けている。
一匹狼くんは今にも二人（アオと建斗）まとめて殴りかからんばかりの殺気を放つ。



「お前たち、ここで何をしている！」


緊迫の場面でさらに現れたのは、学園内「抱かれたい」ランキング第二位の風紀委員長さま。ちなみに一位は生徒会会長である。

残念なことに委員長も転入生信者だ。
つまり彼もまた、転入生を追いかけて来たのだろう。
その後ろで息を切らしているのはヒラの風紀委員たち。
見回り途中で突然走り出した委員長に、理由も分からずついて来てしまったようだ。


「ハッ、てめえにしては珍しく都合の良い時に来たな。そこの平凡と不良が礼音に暴行しやがったぞ、俺様が見ている前でたった今」

「何だと？」

「会長だけじゃありません、私たち全員が証言します。その平凡が不良を使って礼音を傷つけたんです」

「僕らもこの目で見たよー。心配してここに来た礼音を他人に蹴らせるなんて」
「最初から知ってたけど本当に卑怯な平凡だよねー」

「平凡……最悪。退学に、する」


会長と風紀委員長の会話に続けて、副会長・双子会計・片言書記が発した言葉に内心オロオロしながらも、立場上身動きのとれない親衛隊。
出来るものなら今すぐ逃走したいが、教室出口を風紀委員らに塞がれひたすら存在を消そうと息を潜める不良連中。

そんな彼らを見て大体の状況を察したのは、委員長を除くヒラ風紀委員たちだった。

――を完全無視し、平凡少年と美形不良を今すぐにでも退学にさせてやろうと睨み付ける、転入生信者ども。


「た、退学……」


射殺すような視線と言葉。
これまでの疲労も重なりショックを通り越して、何となくそれも良いかと諦めの気持ちになるアオ。

だが


「ふ……はははっ！　こいつは良いな。俺が思ってたのとは違うけど、なかなか笑える。いや、むしろ想像以上だ」

「け、けんと君？」

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