幼なじみ祭

葉津緒

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「てめえ……ふざけんなチビガキ、誰が嫁だ! アオは俺の可愛い可愛い若奥さんになって、恥ずかしがりながらも毎朝『行ってらっしゃいのチュー』をしてくれる予定なんだよ。昼は手作りの愛妻弁当、夜はアオ自身を美味しく頂いちゃうからな。どうだ羨ましいだろ」

「い、行ってらっしゃいの……夜はアオ自身を美味しく……ゴクリッ……って、う、羨ましくねーし! だったら俺なんか」



礼音と健斗の口喧嘩(妄想自慢?)に、あぜんとする一同。
むしろよっぽど仲が良いのでは、とも思える光景に渦中のアオはぐったりしながら既視感を覚えた。
そういえば昔、幼稚園でこんなやりとりを毎日見ていたような――。


『アオちゃんは僕のなの!』

『違うよ、アオちゃんは僕のだもん。大人になったら結婚して、ずうっと二人で一緒にいるんだから。ね、アオちゃん』

『そんなの絶対だめ、アオちゃんは僕と一緒に遊ぶの! お前なんか嫌い、アオちゃんから離れてよ!』

『うるさい、お前こそあっち行けばチビ!』


まだ幼い頃の可愛い健斗くんの姿が脳裏に浮かぶ。
アオを取り合ってする口喧嘩の相手は、同じ幼稚園で一つ年下だった子。

当時から二人はよく、こんな風に騒いでいたっけ。名前は確か――
そこまで考えて、はっと思い当たる。


「え? あの、もしかして礼音くんって……おーちゃん?」

「俺のことやっと思い出してくれたんだな、アオ!」

「ふん、やっぱお前かよ糞チビ。しつこくアオに付き纏いやがって。つか何だそのだせー姿」

「チビじゃねー! ていうかお前、お邪魔虫『けんと』だな。また俺のアオにちょっかい出しやがって……せっかく俺が変装までしてアオを独り占めしてたのに!」


「変装?」と信者たちが声に出す暇もなく、礼音は自分の頭にあったモジャモジャな毛と、ぐるぐるの瓶底眼鏡を外した。
中から現れたのは、ふわふわの金髪と美少女のような愛くるしい素顔。
予想外の可愛さに目を丸くする親衛隊・不良・ヒラ風紀委員たち。
対照的に「げっ」と不快感を示したのは、転入生信者である筈の美形たちだった。


「れ、礼音、お前マジで幼稚園の時の」

「いつも私たち、いえアオ君の後ばかり追ってきた」

「くそ生意気な」「『おーちゃん』だったの!?」

「……その金髪、顔……間違い、ない」


転入生の正体に愕然とする生徒会役員の面々。
アオは、口ぶりから『おーちゃん』を知る彼らの様子に疑問を抱く。



「おい礼音、一体どういうことだ。今まで我々にアオの居場所を仄めかし、まるで貴様がアオの近親者かそれに近い存在であるが如き振る舞いを……まさか騙していたのか!?」

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