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小さな子供のようにわんわんと大声をあげて泣き出す礼音。苦笑を浮かべながらも優しく抱きしめ、よしよしと頭や背中を撫でさするアオ。
その姿はまるで聖母のように眩しく清らかだった、とこの場にいた者は後に語る。
「あーあ、何だよこいつマジで全然成長してなかったのかよ。これじゃただママの気を引きたいだけの甘ったれな糞餓鬼だろ、阿呆らしい」
二人のやりとりを見た後では健人の言葉に同意する他なく、一部の者はそんな子供に踊らされていた己を恥じた。勿論それで全てを納得できるかどうかは別の話だが。
「おい、聞いてんのか糞チビ。さっさと泣き止んでアオから離れろ」
「……やだ。アオは俺のだもん」
「ああ!?」
「アオ助けて~健人がいじめるぅ」
「てめえ、ふざけんなよ! だまされんなよアオ……アオ?」
「え。アオ……?」
伸ばされた手を避け、アオにしがみつく礼音。
だが、ぐらりと傾いだ身体は気付けば異常に熱く、礼音の腕の中で苦しそうな呼吸を繰り返していた。
「アオ!!」
意識を失ったアオを奪い返し、必死に呼びかける健人。泣き叫ぶ礼音。駆け寄るその他の幼なじみ達。ハッと我に返りすぐさま救援を呼ぶ風紀委員らなど。
幸いにもアオ本人はその後の阿鼻叫喚地獄絵図を知らない。
救急車が呼ばれようが治療のためだから離しなさいと言われようが「嫌だ絶対に離れない。俺が離したらアオが死んでしまう」と拒み続け「本気で殺す気か!」と怒鳴られ、ようやくアオから離れた健人。
泣きながら何度も「ごめんなさい」「アオが死んだら俺も死ぬ!」と繰り返す半狂乱の礼音。
その他、蒼白な顔で思い詰める者や、中には壁や床に頭を打ち付け血を流しながら自身を罵ったり、泣きながら頭を抱えたり――。
駆けつけた教師や学校医、救急隊員たちはそんな恐怖の現場に薬物使用の疑いを持った。が、検査の結果当然シロだったため思春期特有の集団パニックだろうと結論づけられた。
一方、病院へ運ばれたアオは風邪(※嫌がらせで度々バケツやホースの水をかけられたことが原因)をこじらせ肺炎になりかけていると診断された。
当初は数日間の入院予定も、極度の体力低下(※ストレスによる睡眠不足や疲労の蓄積、食欲不振からの栄養失調など)のため回復が遅れ、退院後の療養期間も含めて復帰までに数週間を要することとなる。
***
あれから。
連絡を受けて急遽帰国したアオの両親、学園サイド、周囲の大人たちを巻き込むなんやかんやがあって、全ては大きく変化し始めた。
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その姿はまるで聖母のように眩しく清らかだった、とこの場にいた者は後に語る。
「あーあ、何だよこいつマジで全然成長してなかったのかよ。これじゃただママの気を引きたいだけの甘ったれな糞餓鬼だろ、阿呆らしい」
二人のやりとりを見た後では健人の言葉に同意する他なく、一部の者はそんな子供に踊らされていた己を恥じた。勿論それで全てを納得できるかどうかは別の話だが。
「おい、聞いてんのか糞チビ。さっさと泣き止んでアオから離れろ」
「……やだ。アオは俺のだもん」
「ああ!?」
「アオ助けて~健人がいじめるぅ」
「てめえ、ふざけんなよ! だまされんなよアオ……アオ?」
「え。アオ……?」
伸ばされた手を避け、アオにしがみつく礼音。
だが、ぐらりと傾いだ身体は気付けば異常に熱く、礼音の腕の中で苦しそうな呼吸を繰り返していた。
「アオ!!」
意識を失ったアオを奪い返し、必死に呼びかける健人。泣き叫ぶ礼音。駆け寄るその他の幼なじみ達。ハッと我に返りすぐさま救援を呼ぶ風紀委員らなど。
幸いにもアオ本人はその後の阿鼻叫喚地獄絵図を知らない。
救急車が呼ばれようが治療のためだから離しなさいと言われようが「嫌だ絶対に離れない。俺が離したらアオが死んでしまう」と拒み続け「本気で殺す気か!」と怒鳴られ、ようやくアオから離れた健人。
泣きながら何度も「ごめんなさい」「アオが死んだら俺も死ぬ!」と繰り返す半狂乱の礼音。
その他、蒼白な顔で思い詰める者や、中には壁や床に頭を打ち付け血を流しながら自身を罵ったり、泣きながら頭を抱えたり――。
駆けつけた教師や学校医、救急隊員たちはそんな恐怖の現場に薬物使用の疑いを持った。が、検査の結果当然シロだったため思春期特有の集団パニックだろうと結論づけられた。
一方、病院へ運ばれたアオは風邪(※嫌がらせで度々バケツやホースの水をかけられたことが原因)をこじらせ肺炎になりかけていると診断された。
当初は数日間の入院予定も、極度の体力低下(※ストレスによる睡眠不足や疲労の蓄積、食欲不振からの栄養失調など)のため回復が遅れ、退院後の療養期間も含めて復帰までに数週間を要することとなる。
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あれから。
連絡を受けて急遽帰国したアオの両親、学園サイド、周囲の大人たちを巻き込むなんやかんやがあって、全ては大きく変化し始めた。
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