幼なじみ祭

葉津緒

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「くそッ、俺様が料理教室に通って学んでくるまでお前らちょっと待て!」

「……」

「俺、料理は苦手だから休みの日にアオくんと外食デートとか行きたいね」

「なるほど、それだ!」


「アオの弁当なら俺がいつでも作るし、外食デートとかふざけんな誰が行かせるかよ。つか何でわざわざ五分も早く出て来てんのに当たり前にいるんだよお前ら。見張ってんのか?」

「ふん。やはりお前のしわざだな健人、小賢しい真似を」

「ズルいぞ健人め」「この卑怯者ぉ」

「そう何度も同じ手には引っかかりませんよ」


ギャーギャーわーわーと朝から騒ぎまくる美形連中。
一般の生徒たちも近くを普通に歩いており当然見られているのだが、全く気にする様子は無い。
日常風景過ぎてもはや周囲も慣れっこ。オロオロするのは小心者のアオだけだ。


「アオの、独り占め、だめ」

「やっ!」


健人の隙をついてアオに触れようと伸ばされた手がパシンと弾かれ、皆の動きが一斉に止まる。


「あっ、あの……ごめんなさい。僕もう、行きますね」

「待てアオ! チッ、お前ら追ってくるなよ」


急に駆け出したアオと追いかける健人。
動けない者たちが見つめる先で、腕を掴まれ振り向きざまに抱きしめられる姿は震えているのだろうか。
あやすように優しく背中を撫でながら耳元で何かを囁く健人。対して、小さく頷き震える手が目の前の胸にしがみつく。
やがて落ち着いたのかそっと相手の胸を押しやった後、こちらにお辞儀をするアオ。その隣で健人が睨みつけてくる。

そうして今度こそ二人は校舎へと歩き去り――残念ながらこれもまた時々見かける日常風景の一つだった。


「うう……。アオに、叩かれた」

「やってしまいましたね。焦りは禁物だと分かってはいるのですが」

「アオちゃん、まだ僕らのこと怖いんだよね」
「何で健人だけあんな幸せなポジションにぃ!」


触れようとした瞬間、ビクリと怯えたアオ。
あれは暴力を受けたことのある者が見せる条件反射なのだろう。
一定の距離を置いての会話なら問題無いが、それ以上近付くことはまだ許されない。
それはつまり(触れることの出来る健人を除いて)アオの心からの信頼を勝ち得ていない何よりの証拠だった。

そして今日もまた、自分たちのやらかした罪の重さに打ちのめされる。


「まあでも、自業自得なんだよね」

「くそおおっ」

「いや、だがまだ終わりじゃねぇ。少しずつアオも慣れてきてるんだ。反省と償いとアオへの愛が未来を作る!」

「愛」

「愛って……プッ」

「わ、笑ってんじゃねーよ。言っておくがこれは本気だ。俺様の愛は全てアオのものだからな」

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