幼なじみ祭

葉津緒

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「いえ、こちらは大丈夫ですよ。どうぞお気遣いなく。さあ我々は風紀室へ行きましょうか副委員長?」

(ふぁほほへいほほ!)※アオの警護を

(全く問題ありません。彼の警護は担当の者たちがちゃんとやりますから)


途中ひそひそと何事かを話していたようだが、腕を引かれ反対方向へと歩き出すアオには分からない。
心配そうな眼差しに気付いた副委員長が、大丈夫の意味を込めて手を振って見せる。と少しは安心したのか小さく手を振り返してくれるアオ。
その姿が遠ざかっても止まぬ鼻血を垂れ流しながら、副委員長は呟いた。


「……ふあはひぃ、ひゃはい」※可愛い、やばい


やばいのはお前だろと風紀委員たちは思った。
運悪く居合わせた数名の一般生徒らは、何も見なかったことにした。賢明な判断である。

(何でこの人はアオさんが関わるとポンコツになっちゃうかな。まだ、自分も幼なじみだって言えてないし。例の騒動の頃から困っていたアオさんを何度か助けたりしてたのに今もこっそり警護し続けてるだけって。無害なストーカーもどきかよ、あーもうじれったい!)

部下がそんなことを考えているとは露知らず。
手を振るアオの姿を脳内リピート&妄想中の鼻血まみれ男、もとい副委員長はそのまま風紀室へと引きずられて行くのだった。



その出来事を。
密かに遠くから見ていた者がいる。
忌々しそうに、けれどそれを誰にも悟られぬよう小さく呟く。

「調子に乗りやがって。礼音くんがあんなことになったのは全部アイツのせいだ。アイツだけは絶対に許さない、必ず思い知らせてやるからな。待っていろよアオ……!」


だが一方で、その強い悪意の気配を察知した者もいる。

(やっぱいるな。場所まではさすがに分からねぇが、案の定俺が離れたんで油断してやがる)

階段の踊り場から数段昇った死角となる場所で、気配を消していたのは先ほど別れた筈の健人。
実は一週間ほど前からアオへと向けられる不快な視線を感じていたのだが。自分が隣にいるとすぐ消えてしまうため、わざと離れて様子を窺(うかが)っていたのだ。

(風紀の副委員長様にアオを任せるのは本意じゃねぇが、使えるもんは使わなきゃな。まあどうせ手出しなんか出来ねぇだろうし。あの変態ヘタレっぷりじゃあなぁ)

幼稚園時代を思い出す。
いつも遠くから眩しそうに、羨ましそうにアオたちを見つめていた幼き頃の副委員長。それは木や柱の陰からだったり、部屋の扉の隙間からだったり。「こいつ忍者か何かなの?」と幼い健人が思ったほどだ。

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