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リリィの願い
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「ミレイ、こんなところで何してたんだよ……心配したんだから」
少年は肩で息をしながらミレイの前に立った。
ミレイはにっこりと笑った。でもその笑顔の奥に、どこか遠くを見つめるような影があった。
「お兄ちゃん、やっぱり来てくれたんだね。うれしい……」
「当たり前だろ。ミレイが『迎えに来て』って手紙を残してったんだから」
少年――彼の名前はユウキ。
ミレイの“兄”ではなかった。でも、ミレイが初めて「お兄ちゃん」と呼んだ人だった。
ミレイは手に持ったうさぎのぬいぐるみ、リリィを見つめた。
「リリィがね、『今日なら帰れるかも』って言ったの。だからここに来たの」
「ぬいぐるみが、喋ったのか……?」
「ううん、リリィはね、ずっと私の心の声を映してくれるの。
本当は私、ずっとずっと怖かった。
この街に飲まれてしまいそうで。記憶が少しずつ、薄れていくのがわかって……」
ユウキは一歩前に出て、そっとミレイの頭に手を置いた。
「もう大丈夫。俺が来たから。ミレイのこと、ちゃんと外の世界に連れ戻すよ」
その言葉に、ミレイの目がふるふると揺れた。
泣きたいけど泣けなかった。そんな日々が、ずっと続いていたのだ。
「ありがとう……でもね」
ミレイは少しだけユウキの手を払って、そっと後ろを振り返る。
「この路地の奥に、“試練の扉”があるの。そこを抜けないと、戻れないんだって。
そしてその扉は、“ふたりで一緒に越えること”が条件なんだって」
「ふたりで……?」
「そう。私と……お兄ちゃんと。ねぇ、行ってくれる?」
ユウキはしっかりとうなずき、ミレイの小さな手を握った。
「もちろん。ミレイをひとりにはしない」
その瞬間、リリィの目のバツ印が、うっすらと光った。
まるで、それが――扉の鍵になったように。
そしてふたりは歩き出した。
夜の路地の奥、忘れられた世界のさらにその先へ。
運命の扉の向こうには、一体なにが待っているのか――
少年は肩で息をしながらミレイの前に立った。
ミレイはにっこりと笑った。でもその笑顔の奥に、どこか遠くを見つめるような影があった。
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ミレイの“兄”ではなかった。でも、ミレイが初めて「お兄ちゃん」と呼んだ人だった。
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「リリィがね、『今日なら帰れるかも』って言ったの。だからここに来たの」
「ぬいぐるみが、喋ったのか……?」
「ううん、リリィはね、ずっと私の心の声を映してくれるの。
本当は私、ずっとずっと怖かった。
この街に飲まれてしまいそうで。記憶が少しずつ、薄れていくのがわかって……」
ユウキは一歩前に出て、そっとミレイの頭に手を置いた。
「もう大丈夫。俺が来たから。ミレイのこと、ちゃんと外の世界に連れ戻すよ」
その言葉に、ミレイの目がふるふると揺れた。
泣きたいけど泣けなかった。そんな日々が、ずっと続いていたのだ。
「ありがとう……でもね」
ミレイは少しだけユウキの手を払って、そっと後ろを振り返る。
「この路地の奥に、“試練の扉”があるの。そこを抜けないと、戻れないんだって。
そしてその扉は、“ふたりで一緒に越えること”が条件なんだって」
「ふたりで……?」
「そう。私と……お兄ちゃんと。ねぇ、行ってくれる?」
ユウキはしっかりとうなずき、ミレイの小さな手を握った。
「もちろん。ミレイをひとりにはしない」
その瞬間、リリィの目のバツ印が、うっすらと光った。
まるで、それが――扉の鍵になったように。
そしてふたりは歩き出した。
夜の路地の奥、忘れられた世界のさらにその先へ。
運命の扉の向こうには、一体なにが待っているのか――
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