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第二章『楽園の遊戯』
chapter18「祭りの終わり1」
しおりを挟む「しっかし、久々に白熱したわね~。楽しかった~」
「うん、今日も楽しかった!」
制限時間ギリギリ、帰宅時刻までにゲームは無事終了し、僕たちは夕闇の赤紫に染まる空の下、電灯に照らされた帰り道を歩いていた。
いつもの町並みが過ぎ去っていく中、タケシがポツリと言い放つ。
「確かに、やべぇくらい楽しかったな。今日のは特に」
振り返り、チラリとトールを見るタケシ。
トールは後ろの方で、無言のまま歩み続けていた。
まだ話に加わるまでには慣れていない様だ。
「うん。それは間違いないね」
「それというのも」
「今日の奇跡のMVP様のおかげよね~」
みんなで振り返り、トールを見る。
「?」
「うんうん、今日のMVPは間違いなく神倉君だよね」
「……そうなのか?」
「…それに引き換えタケシは……」
「うぇ?」
「あれは無いよね……」
遺跡探索物の戦闘主体だと言われていたにも関わらず交渉系キャラを作り、あまつさえ、情報は無いとGMが言っているにも関わらず街で情報を得ようとする。
せっかく身に着けたスキルを使いたい気持ちはわかるんだけどね。
で、特に出す情報も無いのにすさまじい達成値を出してくれちゃったもんだから、アキラが仕方なく折れて、アドリブで本来のルールには無い、謎の情報ポイントというボーナスポイントを用意してくれた訳なんだけど……。
「いやぁ、麻耶っちこそアレは無いっしょ、聖印を買い忘れるとか無いわー。俺が街中で遊んでいるうちに気づいたからよかったものの、アレこそバッドエンドフラグだったんじゃね?」
神聖魔法を使うためには聖印というアイテムが発動体として必要となる。これは大抵のファンタジー系TRPGの不文律と言って良い。他の魔法でもそれは一緒で、発動体が無いとそもそも魔法を使うことができない。そういったルールのゲームは多い。
そして、意外とそれを買い忘れてしまう、という事は初心者でなくても起こりうる。
発動体とスカウトツール。買い忘れにはご注意を。かくいう僕もやらかした事があったりするあるあるミスの一つだ。
「あ~、アレはね~。今回ちょっとネタに走り過ぎたかもね~。そういや神聖魔法って聖印なんてものが必要だったわね~、なんて。あっはっはっはー……反省」
「アレは防具をできる限り頑丈にしようとした結果だ。ミスとはいえ、まぁありがちで仕方の無い範疇だろう。致命的ではあるがな」
「あるぇ~? 何で俺だけフォロー無し? なんか扱い酷くねぇ~?」
「いやだって。ダンジョン突入直後のアレはさぁ~」
「まさか正体不明に何の策略も無くバンザイ突撃するとはな……」
「まぁ、予想通り相手がゴブリンだったから良かったものの」
「ボコボコにされてるし」
「うるふぇ~! アレはダイス目が振るわなかっただけだっつの~」
「アレを運のせいにしてたら、奇跡がいくらあったって足らんだろうに」
「最低限、雑魚くらいは余裕で倒せる程度に次からはもうちょっと真面目に組んだ方がいいよ」
「う~い」
「戦いとは、戦いが始まる前からすでに始まっているのだ。キャラメイクを軽んじる者はシナリオ中に泣く羽目になる。良い勉強になっただろう」
「いや、軽んじてはいねぇよ? 趣味に走ってるだけで」
「いや、それを軽んじているとだな」
「まぁまぁ」
結局あの後。どうなったかというと。
先にも延べたとおり、タケシが無駄に魅力を駆使した情報収集で自由に使える万能ボーナスを手に入れ、ダンジョン突入後は想定通り僕のキャラが罠を発見、解除しつつ最深部へと向かう。
途中の雑魚はヒーヒー言いながらも撃破できた。
火力不足のこんなパーティでも、カバーと回復が優秀なおかげで何とかなった訳だから、やっぱり仲間って大事だなって思う。
例えたった一人が突出して強くたって、バランスのよい連携のとれたチームには勝てない。
まぁ、だからといって趣味に走って適当なスキルに塗れた面子がいて得する場面は少ないんだけどね。
それはさておき。
――いざ最深部。ボス戦だ。
ゴブリンの群れの中に一人違和感をまといながらも佇む謎の青年。
タケシが手に入れた情報ポイントを使い、青年が何者かを知ることでボーナスを得て戦闘を有利にする。
……意外とこの辺、タケシもある意味MVPだったりするんだけどね。
さて、戦闘開始。
タケシの超絶美少女のスーパースキルコンボで取り巻きのゴブリンが一瞬で蒸発。
……あれ? 思い返してみるとタケシめっちゃ活躍してない?
あ、ちなみにゴブリンって何? って思っている人に説明すると。
ゴブリンというのは西洋の妖精の一種なんだけど、可愛らしいフェアリーみたいなのとは違って醜い姿の悪戯者。
で、ファンタジーのRPGに出てくる際は大抵、普通の人間よりやや小柄で筋肉質な、俊敏で邪悪な亜人種として描かれる。
亜人っていうのは、人型の怪物みたいなものだと認識してもらえれば大体オーケー。
狼男とか猫耳少女なんていうのも亜人に入る。まぁ、人間っぽいけど人間じゃない、人間に近い別種族って感じ。
で、大体ゴブリンって奴はTRPGにおいては雑魚として描かれる。
まず、知性が低いため野蛮なため、文明が進んでいないので装備が整っていない。けど肉体的には俊敏でやや優れる分、その戦闘力はなかなかに侮れない存在だ。
一般人から見れば強敵だけど、よく鍛錬を受けた武装兵からすればわりと雑魚。大体そんなイメージだ。
で、ボス。ゴブリンに起動させられ善悪の判断もわからずに従っている魔導型ホムンクルスの青年の全体魔法攻撃が放たれる。
欠点として射撃型にしていたため、精神力による抵抗ではなく、素早さによる回避で被害を無効化できたため、僕のキャラクターは奇跡的にも回避にして生き延びた。
そして身を挺してリョウのキャラが麻耶嬢のナイスガイをカバーリング。一撃必殺レベルの攻撃から守るため、倍化したダメージを耐え切った。そして……。
魔法抵抗力の高いトールのキャラはギリギリ戦闘不能で生存。けどタケシのキャラはなんと、ダメージダイスがおかしな出目になってしまいなんと即死。
留美子飛びした挙句、車田落ちして見事死亡確認となるのだった。
まぁ、最近のゲームの世界は温い設定が多いから、大抵は死んでも蘇れたりするんだけどね。
もちろん、大量の借金を背負うことになるのだけど。
それはともかくとして、戦闘開始10秒でいきなり大ピンチだ。
「アレは久々に全滅したかと思ったよな」
「うん」
「このシナリオ、バランス大丈夫? って思った」
「いや、あそこで情報ポイントを使い尽くせば即死にはならずにすんだんだぞ?」
「あぁ、アレはな」
「タケシのキャラ、もうやること無いからって」
「おう、これはこれでおいしいかなって。チームのために犠牲になったんだぜ」
「……そうだったのか」
アウェイクポーション。つまりは、死んでない限り戦闘不能を回復できるアイテムを僕のキャラが使用し、トールのキャラを蘇生する。そして麻耶嬢のナイスガイ必勝奥義の全体ヒール。使用回数制限で限定された起死回生の一手でなんとか体勢を整える。
トールの魔法攻撃が強力な一撃を叩き込み、何とか戦闘を均衡へと持っていく。
が、ここで悪夢の如き悪癖が発動。
――GMアキラ、致命的な場面でクリティカルを発生。
そう、36分の1でしか発生しない、超強力な奴をお見舞いしてくれたのだ。
この一撃でカバーリングしたリョウが一撃で戦闘不能に。僕のキャラは運よくギリギリ戦闘不能で済む。
「それにしても、TRPGでああいう展開になったのは久々だね」
「すごい展開になったよな」
トールはなんと、ここで反射防壁の使用を宣言。ダメージを無効化した上で跳ね返す。
そして、運命の魔法攻撃!
……本当、ダイスの女神ってどうしてこう、おふざけが好きなんだろうね。
――まさかのファンブル発生。
攻撃は不発。こちらはもはや後衛二名以外動けない。絶望的な大ピンチである。
そんな時、トールがこう言ったのだ。
この攻撃、失敗を“あえて放たなかった結果”という事にできるか?
どういう事だ?
情報ポイントを使用して、調べた結果、ユメリアと同型機の兄さんだった、という事にしたい。
……なん、だと……。
その上でさらに情報ポイントを使用。説得を試みたいのだが。
なんと、絶望的な状況を覆す、後付け設定からの無理やりハッピーエンドを申し出たのだ。
……普通は無理なんだけど、アドリブで本来無いルールとして出した情報ポイントを曖昧かつ万能にしてしまったアキラの失態とも言える。
……ルール上、本来ならば不可能なのだが……情報ポイントの定義を定めていなかった以上、可能、か。
ただし、失敗した場合、この戦闘に勝っても実の兄を殺した事になるユメリアは一生消えないトラウマを受ける事になる。
それでも、実行するか?
無論だ。そこに救えるチャンスがあるのであれば、手を差し伸べない理由などない。
まるで主人公のような勇ましい宣言の後、トールは熱い説得ロールを行う。
そして、情報ポイントをガン乗せした運命のダイスロール。
「ダイスの女神って時々凄い事するよね」
「うん」
「まさかの」
「1足りた」
「クリティカルとかファンブルじゃなく、情報ポイントのボーナス込みでギリギリ成功だもんね」
「アレ絶対誰に話しても創作乙って言われるよなぁ」
「ヌコヌコ動画のリプレイ風だったら絶対信じてもらえない奴ね」
望んで従っていた訳ではない、洗脳されていた兄は、妹の心からの説得により心を取り戻す。
犯した罪は償わなければ、と口にする兄に、逃げてしまえばいい、と申し出る妹。
そこからはそれぞれの道。
パーティは解散となり、ホムンクルスの兄妹は当ての無い旅に。
蘇生で借金を背負ったタケシの萌え萌えキャラがラストのオチに残されたけど、満場一致の声で『体売れば?』の一言でセッションは無事終了するのだった。
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