さよならの代わりは

野村にれ

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婚約の申し込み6

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 それからアスリーナは優秀さを活かして教科書や論文、問題集を預かって、邸で翻訳を仕上げて、出版社に持って行くという暮らしになった。

 社交的ではなく、風当たりの強いゼアンラーク侯爵家で、アスリーナには見合った仕事であった。

 ジュージとサミラも、ようやく自身に焦点のあったアスリーナの姿にホッとした。

 元より真面目で、勉強が好きな子だったと、手の届かない相手に恋をしただけなら良かったが、叔母が王太子妃だったことが希望を持ってしまった。

 今さら何を言っても仕方ないが、ララスが不正をしてまで王太子妃にならなければよかったと思わずにはいられなかった。

 掃き溜めの領地は母から手紙が来るが、領地でも責められていること、父は執務に逃げており、ギクシャクしながら、三人はどんよりと暮らしているという。

 母は何か希望のあるような言葉を求めているのだろうが、ジュージが苦労している嫌味の籠った手紙を送れば、謝罪の手紙が届き、しばらく静かになる。

 両親はやるべきことはやってくれているが、ララスが引き継ぐのならこのまま領地で暮らさせるか、文句を言うようなことがあれば、修道院に入れるつもりでもいる。

 王家ではミジュリーの願いに驚くことになったが、またスチュワート王太子殿下への婚約はさすがに何の因果かとしか思えなかった。

 コレドールはエディードとセラリアにも報告し、モルゾフ王国にも念のために知らせておく方がいいのではないかということを相談した。

「そうだな、報告だけは上げておこう」
「そうね、許可していないのに勝手に使われてはたまらないわ。でも、まさかこちらにまた頼んで来るなんてね……」
「知らなかったんだよな?」
「知らないから頼んで来たのでしょう?」
「そうだよな」

 モルゾフ王国もスチュワートのためにもララスのしたことは公表されていないが、どこかから洩れたのかと考えてしまうくらいであった。

「スチュワート王太子殿下の名前が出た時に驚きました」
「あちらも婚約を考えていたとはね」
「既に断られているのかもしれません」
「それで、こちらに口添えをと思ったのね。あなたすぐに送りましょう」
「ああ、そうだな」

 エディードはすぐにエルゲリータ王国のミジュリー王太子妃から、このような話があったという手紙を使者に持って行かせた。早くしなければ、あちらが再度送る可能性もあったからである。

 するとモルゾフ王国から確かにアリーシャ王女との婚約の申し込みがあったが、断っていることが知らされることになった。もしもオペリーク王国の口添えがあると言われても、信用しないこととすると返事があり、ホッとした。

 これで口添えの件はエルゲリータ王国が、勝手に利用しても不可能となった。

 小さな変化だが、深刻な問題が発生していたが、気付いているのは僅かな人間だけであった―――。

 ララスはゼアンラーク侯爵家の領地にいたが、両親には同罪であるために怒鳴られはしなかったが、どうしてこんなことになったのかと、小言や溜息をつかれたりという日々であった。

 私は悪くない、私だって子どもを産みたかった。

 産んでいたらこんなことにはならなかった。産みたくなくて、産まなかったわけではないのに皆、酷いと思っていた。

 だが、責められたのは子どもを産めなかったことではなく、不正についてなのにララスは子どもを産めないことを責められたとすり替えていた。

 ララスは妊娠がなかなかできない時に、やっぱりと思っていた。

 酷い生理不順で、これは妊娠にも関係するかもしれないと言われて、ショックだった。治療をすればいいと言われたが、順調になることはなかった。

 生理不順は医師が目で見るわけではないために、順調になったと嘘をついた。
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