【完結】聖女の在り方

野村にれ

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最期の面会1

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 王宮ではリリカをホーリー、マリアール侯爵家、コロゾ子爵家を最後に会わせることが決まり、これがリリカへの罰の一つになるだろうと考えられていた。

「ルッジ辺境伯は、どうするべきか……」

 ルッジ辺境伯家も間違いなくリリカの被害者で、王家主催の集まりや、パーティーなどにはレイジアとローラ、長男であるマリクとジュリエットはやって来るが、メルアは一切、姿を現さなかった。

 誰もわざわざ、メルアがどうしているかなど聞くことなどできなかった。

「発表の文書は送ったが、受け取りましたというだけの返事だったからな」
「今さらと思われたのではないかしら」

 ルッジ辺境伯家だけは発表前にとはいかなかったが、発表と同時に届くように使者を送った。

「メルア嬢は再婚していないのだよな?」
「ええ、責任を感じますけど、こちらからは口は出せませんからね」
「そうだな」

 メルアはシールドと離縁した後、他の誰かと再婚をすることもなく、辺境伯領で暮らしていると聞いていた。

「元気に暮らしていると良いのだけど」
「ご家族と一緒でしょうから、大丈夫だと思いますけど、情報がほとんど入って来ないですからね」

 辺境伯家は王都にタウンハウスはあるが、邸は必要ないために持っていない。

 ゆえに、王都にいても交流することがないために、分からない。

「リリカには会う気があればということにして、事情説明とお詫びを改めてしたいと、伺ってみますか?」
「それね、私たちが向かうべきなんだけど、すぐには難しいものね。でも、断られたらそれはそれで、引き下がりましょう」

 リチア公爵も他の貴族も元より、ルッジ辺境伯に簡単に声は掛けられなかったが、メルアのことがあって、さらに声を掛け辛くになってしまっていた。

 リリカは、まずマリアール侯爵家に会うことになった。

 王宮の一室でマイード、セイラ、シールド、イリアはリリカを待っていた。シールドはどこか緊張しており、一番落ち着いているのはイリアだった。

 事前にホーリーの父親は、エバンジー・ジッソワードという名前で、亡くなっていることはまだ伏せたが、消えたカフェの元店員で、リリカと落ち合って一緒に逃げてたことは聞かされていた。

 当然だが、エバンジーのことは全く知らなかった。

 騎士たちに連れて来られたリリカは、身綺麗であったが、質素なワンピース姿で、手首には手錠がされていた。

 リリカが入って来ると、シールドは思わず立ち上がっていた。

 だが、リリカは皆に近付く前に、その場で膝をつき、身を伏せて、這いつくばって謝罪をした。

「申し訳ございませんでした」
「立ちなさい」

 マイードが声を掛けたが、リリカは激しく首を振った。

「私はマリアール侯爵家の方と、同じ場に座れるような人間ではありませんでした。このままで、このまま謝罪をさせてください」
「そう、か」

 リリカは何の落ち度もない人たちを前に、立ったまま、座って話すなどできないと、顔を、目を見て、自分の愚かさを話すことが辛かった。

 マイードも顔を突き合わせて話をするような関係ではないのだと、立たせることは諦めた。

「マリアール侯爵家の方々には、お世話になったのに、このような裏切り行為を行い、申し訳ございません。許してもらおうなどと思っておりません。私は許されないことをしました」
「君はホーリーの父親のことが好きだったのか?」

 訊ねたのは、シールドであった。

 マイードとセイラはなるべく口を挟まず、シールドとイリアに時間を使ってもらおうと考えていた。

「っ」
「正直に話して欲しい」
「楽になれたのです。何の言い訳にもなりませんが、彼は世話をしていた大事な幼馴染を亡くし、私は子どもができないことで、努力してもどうにもならないことに、お互いが傷を持っていたのです」
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