【完結】愛しくない、あなた

野村にれ

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【テイラー】判明

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「すまないが、しばらく時間が掛かる」
「何かあったのですか?」

 テイラーはメロディもすぐに連れて来られると思っていたが、ローズミーのように何かあるのかと考えた。

「メロディは、侯爵家に後妻として降嫁しているため、今迎えに行かせた」
「そうだったのですね…」

 ローズミーがいたように、皆、妃として残っていると考えていた。

「他の妃もですか?」
「いや、降嫁したのはメロディだけだ。彼女が唆したのか?」

 テイラーは何も答えずに、鋭い目を向けるだけであった。

「あ、いや、すまない」
「陛下が謝ることはありません!」

 テイラーに敵意を持った目を向け、口を挟んだのは、イオリクであった。

「イオリク…アイルーン・デリアを殺したのはローズミー、ペジリー、ラオイ医師であることは判明している」
「…な」

 イオリクは今日、何が行われているかも、全く知らされていなかった。ゆえにテイラーを見付けて、歯がゆい気持ちを持ったくらいであった。

「自白剤を使ったから間違いない」
「…自白剤を」

 イオリクも自白剤を使ったと聞いて、否定することは出来なくなった。イオリクがパクパクしていると、医師の方が騒がしくなり、カーズが報告をした。

「陛下、ラオイの机からアイルーン様のカルテが見付かったそうです」

 多くの書類と一緒になっていたために、ようやく見付かったのである。

「そのまま、調べてくれ。医師の見解を聞きたい」
「は!」

 ディオエルは指示を出すと、イオリクに向き直った。

「カルテも見付かった。疑似番のために、アイルーンの血を抜いていたそうだ」
「疑似番?血を?そんな…だから」

 言葉は続かなかったが、だから重度の貧血だったのかと理解した。

「お前は、疑似番を聞いたことがあったか?」
「番の血を輸血するというものですよね?」
「知っていたのか?どこで知った?」

 ディオエルは聞いたことすらなかったことであり、イオリクの周りにも番の研究をしている者がいたということも聞いたことはなかった。

「ディオエル様のために番のことを調べている際に、古い論文で読みました」
「どこにある?」
「王宮の貸出不可の書庫だったはずです」
「そうか」

 そんなところに、ペジリーとローズミーが行くはずがない。万が一行っていれば、貸出不可の書庫なら証拠も残っているだろう。

「でも一度も上手くいかず、今は行ってはならないとされているもののはずです」
「それを三人、いやまだ関わった者がいるかもしれないが、三人は行っていた」
「だから、ローズミー妃は妊娠したということなのですか?」
「ああ」
「そんな…」

 イオリクは、ローズミーの妊娠は奇跡だと信じていた。可哀想なことにはなったが、ローズミーの愛が、子どもを授けたのだと思っていた。

 病を患い、あのような姿になってしまっても、イオリクにとってはローズミーへの思いは何も変わっていなかった。

 子どもが無事に生まれていればと、アイルーン・デリアの時は死ぬなら子どもを産んでからだったら良かったのに、役立たずめとしか思わなかったが、ローズミーについては何度も何度も思っていた。

 だが、今も大事にしてあげて欲しいというのは、見た目も精神的にも難しいとは理解はしている。

 他の者がもう病院に入れるべきだと言い出したこともあったが、それでも追い出すようなことはしないのは、子どものことがあったからだと思っていた。

「テイラー嬢は、事実を述べていたことが証明された」
「…そ、うですね」

 イオリクは事実を告げられても、テイラーに謝罪する気持ちは持っていなかった。だが、テイラーの方を見ることは出来なかった。

「メロディ元妃も関わっているのですか?」
「ペジリーとローズミーが知り得たと思うか?」
「…い、いいえ」

 さすがにイオリクも、二人が知っているとは思えず、否定するしかない。

「私は唆したのは、お前かとも思った」
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