160 / 344
【テイラー】沈黙
しおりを挟む
「話ができて良かった……後は危機を脱してくれれば」
「ええ、本当に」
「大丈夫よ、きっと、神様は二度もこんなことをしないわ」
ナナリーの言葉に、ルーベンスとベルサートも医師たちも頷いた。
「マークのことも、見てたのね」
「ああ……向こうは気付くことはなくとも、テイラーは分かっているのだから」
「ナナリー、何か言い掛けていなかったか?」
ベルサートはナナリーが『でも』と言っていたことから、気になっていたが、あの場では聞くことはしなかった。
「そうなの、でも言わない方がいいのかもしれないと思って」
「マークのことか?」
「ええ、でもここで話す話ではないわ。少し、隣で話しましょうか。お医者様、何か少しでも変化があれば呼んでください」
「はい、すぐにお呼びします」
ナナリーとルーベンスとベルサートは、すぐ隣の部屋に移った。
「簡潔に話すと、上手くいっていないそうなの」
「え?」
「番なのにという言葉は、当てはまらないことを私たちは知っているからな」
「そうですね」
番なのにという言葉が思わず出てしまう話ではあったが、そんなことは関係ないことはここにいる三人には痛いほど分かっていた。
「あなたにも、お義父様にもわざわざ話すことでもないと思っていたの」
ナナリーは結構前にその話を掴んでいたが、二人には話してはいなかった。
「まあ、今更だよな」
「アイルーンのことは関係あるのかい?」
アイルーンが殺されたということは、ミリオン王国でも報じられたので、間違いなくマークの耳にも入っている。
「いえ、その前からよ。正確には上手く隠していたけど、早い段階からということらしいわ。私はあなたが知るように、関わっていないでしょう?でも、友人伝いに聞いたのよ。あの妻、アーシャだったかしら?大人しいのだけど、実際は粘着質っていうのかしら?嫉妬深いというのか」
二人もマークの妻・アーシャのことは知っていたが、そんな風には見えなかった。
だが、上手くいっているのも癪だったが、上手くいっていないのではないか。いや、でも番だものなと思っていた。
「番だからではなく?」
「彼女の本質じゃないかしら?だけど、マークは違うわけよ」
「温度差があるということか?」
「そういうこと!それでギクシャクしていて、テイラーが見たのは表面上ってことよ。でも幸せそうで良かったと言っていたでしょう?だからこんなことを今、聞かされてもねと思ったの」
「そうだな」
元気な状態だったら、話していたと思うが、こんな時に上手くいっていないと言われても、テイラーはざまあみろという気持ちにはならないだろう。
「子どもがいないでしょう?」
マークとアーシャは既に結婚したが、子どもには恵まれなかった。後継者は、マークのきょうだいの子どもに決まっている。
「その影響もあるってことか?」
「そうではないかと思うのよ。あの二人には番だからと期待もされていただろうし、でもできなかったことで、マークは責めたりするような質ではないだろうけど、追い詰められたのではない?」
「こういうことを聞きたくはないが、妻の方が原因なのか?」
「そうらしいわ」
マークのことは当時は忌々しい気持ちだったが、ディオエルの番だと分かって、その気持ちが薄れていた。
だが、アイルーンが亡くなり、ペナルティが終わっても、再びマークのことは視界に入れたくはなかった。
そして、アイルーンが殺されたことが分かり、ディオエルや犯人たちへの怒りが勝るようになった。ゆえにマークについては、親しくする気はないが、無視するほどではないという関係性であった。
ナナリーはテイラーの元へ戻り、ルーベンスとベルサートは執務室に向かった。
王宮に戻ったディオエルたちとエレサーレは、シュアリアに会いに行き、エレサーレがテイラーについて報告を行った。
「ええ、本当に」
「大丈夫よ、きっと、神様は二度もこんなことをしないわ」
ナナリーの言葉に、ルーベンスとベルサートも医師たちも頷いた。
「マークのことも、見てたのね」
「ああ……向こうは気付くことはなくとも、テイラーは分かっているのだから」
「ナナリー、何か言い掛けていなかったか?」
ベルサートはナナリーが『でも』と言っていたことから、気になっていたが、あの場では聞くことはしなかった。
「そうなの、でも言わない方がいいのかもしれないと思って」
「マークのことか?」
「ええ、でもここで話す話ではないわ。少し、隣で話しましょうか。お医者様、何か少しでも変化があれば呼んでください」
「はい、すぐにお呼びします」
ナナリーとルーベンスとベルサートは、すぐ隣の部屋に移った。
「簡潔に話すと、上手くいっていないそうなの」
「え?」
「番なのにという言葉は、当てはまらないことを私たちは知っているからな」
「そうですね」
番なのにという言葉が思わず出てしまう話ではあったが、そんなことは関係ないことはここにいる三人には痛いほど分かっていた。
「あなたにも、お義父様にもわざわざ話すことでもないと思っていたの」
ナナリーは結構前にその話を掴んでいたが、二人には話してはいなかった。
「まあ、今更だよな」
「アイルーンのことは関係あるのかい?」
アイルーンが殺されたということは、ミリオン王国でも報じられたので、間違いなくマークの耳にも入っている。
「いえ、その前からよ。正確には上手く隠していたけど、早い段階からということらしいわ。私はあなたが知るように、関わっていないでしょう?でも、友人伝いに聞いたのよ。あの妻、アーシャだったかしら?大人しいのだけど、実際は粘着質っていうのかしら?嫉妬深いというのか」
二人もマークの妻・アーシャのことは知っていたが、そんな風には見えなかった。
だが、上手くいっているのも癪だったが、上手くいっていないのではないか。いや、でも番だものなと思っていた。
「番だからではなく?」
「彼女の本質じゃないかしら?だけど、マークは違うわけよ」
「温度差があるということか?」
「そういうこと!それでギクシャクしていて、テイラーが見たのは表面上ってことよ。でも幸せそうで良かったと言っていたでしょう?だからこんなことを今、聞かされてもねと思ったの」
「そうだな」
元気な状態だったら、話していたと思うが、こんな時に上手くいっていないと言われても、テイラーはざまあみろという気持ちにはならないだろう。
「子どもがいないでしょう?」
マークとアーシャは既に結婚したが、子どもには恵まれなかった。後継者は、マークのきょうだいの子どもに決まっている。
「その影響もあるってことか?」
「そうではないかと思うのよ。あの二人には番だからと期待もされていただろうし、でもできなかったことで、マークは責めたりするような質ではないだろうけど、追い詰められたのではない?」
「こういうことを聞きたくはないが、妻の方が原因なのか?」
「そうらしいわ」
マークのことは当時は忌々しい気持ちだったが、ディオエルの番だと分かって、その気持ちが薄れていた。
だが、アイルーンが亡くなり、ペナルティが終わっても、再びマークのことは視界に入れたくはなかった。
そして、アイルーンが殺されたことが分かり、ディオエルや犯人たちへの怒りが勝るようになった。ゆえにマークについては、親しくする気はないが、無視するほどではないという関係性であった。
ナナリーはテイラーの元へ戻り、ルーベンスとベルサートは執務室に向かった。
王宮に戻ったディオエルたちとエレサーレは、シュアリアに会いに行き、エレサーレがテイラーについて報告を行った。
4,622
あなたにおすすめの小説
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
砕けた愛
篠月珪霞
恋愛
新婚初夜に男に襲われた公爵令嬢エヴリーヌは、不義密通の罪を被せられた。反逆罪に問われた彼女の一族は処刑されるが、気付くと時間が巻き戻っていた。
あなたへの愛? そんなものとうに、砕け散ってしまいました。
『悪役令嬢は、二度目の人生で無言を貫く。~処刑回避のために黙っていただけなのに、なぜか冷徹宰相様から「君こそ運命の人だ」と溺愛さています~』
放浪人
恋愛
「もう、余計なことは喋りません(処刑されたくないので!)」
王太子の婚約者エリスは、無実の罪を着せられた際、必死に弁解しようと叫び散らした結果「見苦しい」と断罪され、処刑されてしまった。 死に戻った彼女は悟る。「口は災いの元。二度目の人生は、何があっても口を閉ざして生き延びよう」と。
しかし、断罪の場で恐怖のあまり沈黙を貫いた結果、その姿は「弁解せず耐え忍ぶ高潔な令嬢」として称賛されてしまう。 さらに、人間嫌いの冷徹宰相クラウスに「私の静寂を理解する唯一の女性」と盛大な勘違いをされ、求婚されてしまい……!?
「君の沈黙は、愛の肯定だね?」(違います、怖くて固まっているだけです!) 「この国の危機を、一目で見抜くとは」(ただ臭かったから鼻を押さえただけです!)
怯えて黙っているだけの元悪役令嬢と、彼女の沈黙を「深遠な知性」と解釈して溺愛する最強宰相。 転生ヒロインの妨害も、隣国の陰謀も、全て「無言」で解決(?)していく、すれ違いロマンティック・コメディ! 最後はちゃんと言葉で愛を伝えて、最高のハッピーエンドを迎えます。
公爵令嬢の辿る道
ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。
家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。
それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。
これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。
※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。
追記
六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。
婚約者が聖女を選ぶことくらい分かっていたので、先に婚約破棄します。
黒蜜きな粉
恋愛
魔王討伐を終え、王都に凱旋した英雄たち。
その中心には、異世界から来た聖女と、彼女に寄り添う王太子の姿があった。
王太子の婚約者として壇上に立ちながらも、私は自分が選ばれない側だと理解していた。
だから、泣かない。縋らない。
私は自分から婚約破棄を願い出る。
選ばれなかった人生を終わらせるために。
そして、私自身の人生を始めるために。
短いお話です。
白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』
鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」
公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。
だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。
――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの?
何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。
しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。
それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。
そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。
温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。
そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。
「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」
「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」
離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。
そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。
私の手からこぼれ落ちるもの
アズやっこ
恋愛
5歳の時、お父様が亡くなった。
優しくて私やお母様を愛してくれたお父様。私達は仲の良い家族だった。
でもそれは偽りだった。
お父様の書斎にあった手記を見た時、お父様の優しさも愛も、それはただの罪滅ぼしだった。
お父様が亡くなり侯爵家は叔父様に奪われた。侯爵家を追い出されたお母様は心を病んだ。
心を病んだお母様を助けたのは私ではなかった。
私の手からこぼれていくもの、そして最後は私もこぼれていく。
こぼれた私を救ってくれる人はいるのかしら…
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 作者独自の設定です。
❈ ざまぁはありません。
前世の旦那様、貴方とだけは結婚しません。
真咲
恋愛
全21話。他サイトでも掲載しています。
一度目の人生、愛した夫には他に想い人がいた。
侯爵令嬢リリア・エンダロインは幼い頃両親同士の取り決めで、幼馴染の公爵家の嫡男であるエスター・カンザスと婚約した。彼は学園時代のクラスメイトに恋をしていたけれど、リリアを優先し、リリアだけを大切にしてくれた。
二度目の人生。
リリアは、再びリリア・エンダロインとして生まれ変わっていた。
「次は、私がエスターを幸せにする」
自分が彼に幸せにしてもらったように。そのために、何がなんでも、エスターとだけは結婚しないと決めた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる