【完結】愛しくない、あなた

野村にれ

文字の大きさ
187 / 344

【テイラー】喪失2

しおりを挟む
「平民として裁く点だけは必ず叶えます」
「ですが、それでは……重い罪にならないのではありませんか?」

 シュアリアはギリシスが関与していても、重い罰を望んでいた。

「罰はそうですが、番であることも、アイルーン様の記憶も明かさない方法で考えておりましたが、明かしていいのならば、イオリクはもう竜帝国では生きてはいけないと思います」
「番殺し……ということですか」

 シュアリアは自分で口にしながら、ゾクリをした。

「はい、イオリクは平民でも、皇帝陛下の番を殺したということになりますから」
「それは……」
「しかも、アイルーン様の生まれ変わりと言ってもいい存在だとしたら」

 テイラーは自分がいなくなって、問題になった場合、番が消えたというだけでは足りないなら、アイルーンの記憶を持っていたことを告げて、納得してもらおうと考えたのだろうと、息をのんだ。

「生き地獄だと思います。そもそも、既に公爵家には話をしてありますから、御父上が許すはずがないのです」
「ですが、番には否定的だと」
「番にはそうですが、ディオエルを崇めてらっしゃいます。そのような方の番を、自分の息子が殺したと聞けば、許すはずがありません」
「亡き者にする恐れはないのですか?」

 そこまで崇めているのならば、許せない気持ちと、家を守るために亡き者にするのではないかと考えた。

「大丈夫です。ディオエル様が戻るまで、接近禁止にしております。あの家は力もないですし、物理的な力がある者でもありませんから」
「そうですか、それならば良かったです。こちらも監視付きで、覚悟するように話しておりますので」
「はい、葬儀にも参列させないと聞きました」
「当然です。どの面下げて、見送るというのです!」

 ライシードは、シュアリアの怒りも当然だと思った。エレサーレも塞ぎ込んでおり、皆がテイラーのこれからの未来を奪ったことを、後悔という言葉では足りないほど、感じているのだと、口にしなくとも分かった。

「その通りですね」
「はい、悼む資格などありません。皆で、静かに、次の人生は記憶があっても、なくても、幸せになって欲しいと、願うことしかできないのです……あの人にはそんな気持ちはないでしょう」
「そうですね……今度は記憶などない方がいいのかもしれませんね。今回は犯人は明らかですから、自分の人生を、自分だけの人生歩んで欲しいと思います」

 テイラーにアイルーンの記憶があったのなら、きっと次の人生もあるはずだと、ライシードは心から願うように口にした。

「はい……テイラー嬢だけの人生を歩んで、欲しいですわね」

 シュアリアはそう言いながら、涙が堪えられなかった。

 エレサーレもその言葉に、そんな未来があればいい。いや、ないとおかしいと思っていた。

 デリア侯爵邸では、明日葬儀を行うことを教会に話を付けたルーベンスが、邸に戻ってからエイク子爵へ手紙を書いて、届けさせることにした。

「会いたいと言ったら、どうしますか?」
「夫妻だけなら許可しよう」

 夫妻とは何度も会っており、ライシードの話からも、一刻も早く会いたいと言い出す可能性は高いと考えていた。だが、テイラーがどう思うか分からないが、話を聞く限り、ラオナには来て欲しくなかった。

「では、夫妻にだけ知らせて、妹君には明日知らせるように言いましょうか」
「そうだな、そうしてもらえるか」
「はい」

 騎士たちに行ってもらうことにし、夫妻だけがそのままやって来るか、返事が来るのを待つことにした。

 ルーベンスが再び、テイラーの眠る部屋にいると、エイク子爵夫妻がやって来たという。だが、すぐにここへ通すことはしたくなかった。

 まずは話を聞いてからにしようと考えて、応接室で話すことにした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

さようなら、わたくしの騎士様

夜桜
恋愛
騎士様からの突然の『さようなら』(婚約破棄)に辺境伯令嬢クリスは微笑んだ。 その時を待っていたのだ。 クリスは知っていた。 騎士ローウェルは裏切ると。 だから逆に『さようなら』を言い渡した。倍返しで。

間違えられた番様は、消えました。

夕立悠理
恋愛
※小説家になろう様でも投稿を始めました!お好きなサイトでお読みください※ 竜王の治める国ソフームには、運命の番という存在がある。 運命の番――前世で深く愛しあい、来世も恋人になろうと誓い合った相手のことをさす。特に竜王にとっての「運命の番」は特別で、国に繁栄を与える存在でもある。 「ロイゼ、君は私の運命の番じゃない。だから、選べない」 ずっと慕っていた竜王にそう告げられた、ロイゼ・イーデン。しかし、ロイゼは、知っていた。 ロイゼこそが、竜王の『運命の番』だと。 「エルマ、私の愛しい番」 けれどそれを知らない竜王は、今日もロイゼの親友に愛を囁く。 いつの間にか、ロイゼの呼び名は、ロイゼから番の親友、そして最後は嘘つきに変わっていた。 名前を失くしたロイゼは、消えることにした。

【完結】これをもちまして、終了とさせていただきます

楽歩
恋愛
異世界から王宮に現れたという“女神の使徒”サラ。公爵令嬢のルシアーナの婚約者である王太子は、簡単に心奪われた。 伝承に語られる“女神の使徒”は時代ごとに現れ、国に奇跡をもたらす存在と言われている。婚約解消を告げる王、口々にルシアーナの処遇を言い合う重臣。 そんな混乱の中、ルシアーナは冷静に状況を見据えていた。 「王妃教育には、国の内部機密が含まれている。君がそれを知ったまま他家に嫁ぐことは……困難だ。女神アウレリア様を祀る神殿にて、王家の監視のもと、一生を女神に仕えて過ごすことになる」 神殿に閉じ込められて一生を過ごす? 冗談じゃないわ。 「お話はもうよろしいかしら?」 王族や重臣たち、誰もが自分の思惑通りに動くと考えている中で、ルシアーナは静かに、己の存在感を突きつける。 ※39話、約9万字で完結予定です。最後までお付き合いいただけると嬉しいですm(__)m

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

【完結】旦那様、どうぞ王女様とお幸せに!~転生妻は離婚してもふもふライフをエンジョイしようと思います~

魯恒凛
恋愛
地味で気弱なクラリスは夫とは結婚して二年経つのにいまだに触れられることもなく、会話もない。伯爵夫人とは思えないほど使用人たちにいびられ冷遇される日々。魔獣騎士として人気の高い夫と国民の妹として愛される王女の仲を引き裂いたとして、巷では悪女クラリスへの風当たりがきついのだ。 ある日前世の記憶が甦ったクラリスは悟る。若いクラリスにこんな状況はもったいない。白い結婚を理由に円満離婚をして、夫には王女と幸せになってもらおうと決意する。そして、離婚後は田舎でもふもふカフェを開こうと……!  そのためにこっそり仕事を始めたものの、ひょんなことから夫と友達に!? 「好きな相手とどうやったらうまくいくか教えてほしい」 初恋だった夫。胸が痛むけど、お互いの幸せのために王女との仲を応援することに。 でもなんだか様子がおかしくて……? 不器用で一途な夫と前世の記憶が甦ったサバサバ妻の、すれ違い両片思いのラブコメディ。 ※5/19〜5/21 HOTランキング1位!たくさんの方にお読みいただきありがとうございます ※他サイトでも公開しています。

王宮侍女は穴に落ちる

斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された アニエスは王宮で運良く職を得る。 呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き の侍女として。 忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。 ところが、ある日ちょっとした諍いから 突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。 ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな 俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され るお話です。

処理中です...