【完結】私は運命なのですか

野村にれ

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運命

 運命の人に巡り合う。

 前世で離ればなれになってしまった者たち、死がふたりを分かった者たちが、もう一度出会うこと。獣人の血を持つ者は番という存在に出会うこと。

 そのような相手をと出会うことを、時が経つにつれて、相手のことを「運命」と表現するようになっていった。

 運命のふたりが出会うことは、ルジュン王国では尊いことであるとされている。

 それはレイフォード国王陛下とエリーララ王妃陛下の運命の出会い、紆余曲折ありながら、可愛い子どもたちにも恵まれて、国も平和を維持しながらも、豊かになっていった歴史があった。

 エリーララは子爵令嬢で、王太子だったレイフォードとは身分差があった。

 レイフォードから声を掛けられたが、エリーララも彼が運命の相手だと感じてはいたが、王太子である彼に自分では力不足だと婚約を辞した。

 だが、レイフォードも諦めなかった。自分の立場は分かっているために王太子を辞めるとは言わなかったが、それでもエリーララではない相手と結婚したいとは思えなかった。

 そして、エリーララは努力する人であった。レイフォードのためならば何でもする覚悟はあるが、認めてもらってから婚約をしたいと伝えて、努力を重ねた。

 言語や知識、マナーや礼儀、下位貴族では足りない部分を一生懸命に身に付け、レイフォードをその姿を見守りながら支えた。

 そして、エリーララは当時の国王夫妻や貴族たちにも認められるようになった。

 この話は特に若い女性は一度は通るというほど、憧れることであった。それは特に下位貴族令嬢には顕著で、結婚相手によって人生は変わると考えるようになる。

 それでエリーララのように自分も努力をしようと考える令嬢はいいが、何もしなくても愛されれば逆転できると考える令嬢もいる。

 時は巡り、エレット公爵家のエドワースは運命の相手に出会うことになった。

 ダークブラウンの髪に、丸みのあるアーモンド型の少し垂れたブラウンの瞳に、鼻筋が通り、僅かに口角の上がっている口元、一目見た瞬間に、思わず駆け寄って、腕を引いて抱きしめてしまい、「きゃあぁぁぁ」と悲鳴を上げられてしまった。

「な、なんでしょうか」
「すまない」

 抱きしめられたロミは腕の力が緩んだ隙に一歩下がった。驚いて悲鳴を上げてしまったが、相手が誰かは知っていたために冷静に問い掛けた。

「私に何か感じないか?」
「いえ、どなたかは存じておりますが、何か御用でしょうか」

 エドワースはロミが誰かは分からなかったが、背も女性にしては高く、身なりもきちんとしていることから、もしかしたら下位貴族、平民かもしれないと思ったが、話し方から貴族だろうことは感じた。

「名前は?」
「ベルブルー伯爵家のロミと申します」

 ベルブルー伯爵家は知っていたが、ロミのことは社交界でも見たことがなかった。

「婚約者は?」
「恋人がおります……」

 抱きしめられ、名前を聞かれ、婚約者の有無を聞かれるということは、自分に不都合なことが起きていることは察し始めていた。

「婚約者ではなく?」
「そ、そうです」

 それでもロミの立場では、エドワースに失礼なことはできない。それでも、視線をそらして、エドワースには怯えている様子に見えた。

「すまない、驚かせたことも、矢継ぎ早に聞き過ぎたことも」
「はい……失礼してよろしいですか」
「あっ、ああ……」

 ロミは深く頭を下げて、足早に去って行ってしまった。

「エドワース様……どうされたんですか、急に走り出して、私の鈍足では早過ぎて追い付けませんよ」

 従者であるジストが息を切らしながら、駆け寄って来たが、既にロミの姿は見えなくなっていた。

「運命を見付けた……」
「何ですと?」


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お読みいただきありがとうございます。

新しい話を書きたい、また番の話を書きたい、
悲しい話が書きたい発作が始まりました。

ただまだ他の連載作品もあるので、長編に向けて、
前日譚のような話をなるべく短めに書きたいと思っております。

本日は初日ということと2月22日(にゃんにゃんにゃん)ですから、
1日にゃん(2)話、投稿させていただきます。次は17時です。

どうぞよろしくお願いいたします。

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