【完結】私は運命なのですか

野村にれ

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儀式

「許可が下りました」

 エドワースとロミについて調査が行われた。不仲であることも出ず、エドワースの訴えている元恋人のことも仕方のないことだった、ロミも納得していると、無理矢理に婚約したわけでもなかった。

 ロミがどう思っているかまでは分からないが、それは調査対象でない。

「そうですか……」

 教会で結果を聞いたエドワースとジストは、できると言われるとそれはそれで動揺していた。

「どちらで行いますか?邸の方がよろしいでしょうか」
「そうですね、人がいない時に来ていただくことはできますか?」
「可能です。事前に睡眠薬を服用していただくようになりますので、先にお渡ししておきますね」

 小さな紙袋に入った粉薬を渡し、エドワースが受け取ってジストに渡した。

「はい」
「後は予定が決まったら、昼ならば朝、夕方ならば昼に薬を服用してください」
「分かりました」

 そして、家族が出払っている日が分かったために、その日にエドワースは休みを取って、忘却の儀式を行うことにした。

 使用人には司祭様が昼過ぎに用事で来るとだけ伝え、案内するように告げた。ロミには朝に薬を服用してもらい、まだ後戻りはできるが、エドワースは行うことを決めていた。

 薬が飲み物に混ぜられていたロミは眠いからと部屋で休んでおり、使用人はジストによって遠ざけていたために、エドワースとジストと司祭だけが知る中、忘却の儀式が行われた。

 ロミはナイン・ミグリンの記憶は封じられた。

 目覚めたロミはどんな顔をするのか、エドワースは緊張していたが、眠ったことに謝罪はしていたが、何も変わらなかった。

 だが、エドワースはロミはもうナインのことを覚えていないこと、嫁いでから気を使っているのか、友人たちにも頻繁に会うことはなく、会ってもエドワースの手前、周りもナインの話を出すようなこともない。

 それだけで心はスーッと落ち着いていた。これでナインがどう思っていようと、ロミは彼を覚えていない。

 エドワースはロミに積極的になり、溺愛するようになっていた。ロミも穏やかになったエドワースに、ビクビクすることもなくなっていた。

 それから、妊娠が分かり、エドワースも大感激した。ロミの体調を気遣い、過保護なくらいだったが、無事に第一子フォードが生まれた。

 エドワースは記憶のことは見て分かるわけではないのに、ロミの記憶からナインがいない。元恋人などいないことが心を穏やかにし、あれほど病んでいたことが嘘のようだった。

 司祭にも落ち着いたことを報告すると、それは良かったと安堵してくれた。

 だが、エイクが首を傾けたように、ロミの変化にエドワースも気付いた。

「ロミ、生クリームは苦手ではなかったか?」
「いいえ、そんなことありませんよ?」

 優しく微笑むロミに勘違いではなく、生クリームのケーキを食べた後は何度も何度もお茶を飲んでいたのを見ていた。苦手なのか問うと、実は食べられないわけではないが、あまり得意ではないと話していた。

 それなのに、ロミは無理することもなく平気な顔で食べている。

 子どもを産んだことで変わったのだろうかとも思ったが、そんな様子すらない。何か忘却の儀式の弊害なのかとも思ったが、味覚についてであるためにそこまで深刻には考えなかった。

 そもそも、ロミの嫌いな物については妹たちのように詳しくもなかった。

 それからロミはエドワースの横で微笑み、話をすればなんでも聞いてくれて、同意してくれる。一番の理解者になっていった。

 だが、ふと何でも肯定してくれること、ドレスなども選ばないこともあって、自分の意思がないのかと疑問を持つようになった。

 その日はフォードに会いにエイクとライアがやって来ていた。

 エイクは学園を卒業してから、王宮で文官として働くようになっていた。ライアも卒業する年になって、エイクと同じ道を目指して無事に合格した。

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