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婚約2
「恋人とは話ができたのですか?」
「ご両親と話をして来ました」
エレット公爵家側もさすがにしばらく時間が掛かるだろうと思っていたために、あまりに早い返事に驚いていた。
「恋人は留学しており、連絡も取っていないような関係だったようで、恋人なんて言っておりましたが、その程度の関係だったということです。そんな娘をもらっていただけるのならば、私としては感謝しかありません。あちらとも穏便に話はついておりますから、心配いりません」
高笑いが聞こえそうなほどベルブルー伯爵は上機嫌であった。
ただそれでもエレット公爵家にも好都合であったために、エドワースとロミの婚約は成立した。
「娘も20、いや、21歳?ですから、結婚式も早々にいたしましょう」
両親も依頼した調査書をエドワースに見せてもらっていたために、伯爵がロミに興味がないことは知っていたが、年齢も分かっていないのかと察した。
しかも、結婚を急いでいるのは家から早く出したいだけだろうとしか思えなかったが、逆にロミを早めに出してあげた方がいいのではないかと感じるほどであった。
「公爵家にも慣れていただいた方がいいでしょうから、学びも兼ねていらしていただくことはできますでしょうか」
「それはよろしいですね、すぐにでもやりましょう」
「いえ、それはお仕事もあるでしょうから」
「すぐに辞めさせますから、大丈夫ですよ」
「それは、さすがにセルリッツ侯爵家に失礼でしょう」
「っえ、あ、そうですね、ははははは」
おそらくロミがセルリッツ侯爵家で働いていたことも忘れていたのだろう。すっかり伯爵は信用ならないと判断されることになった。
婚約が決まりつつあることはエドワースにも伝えられていたが、嬉しい反面、本当に良かったのだろうかと思ってもいた。
そして、ロミがエレット公爵邸を訪れる日になった。
付き添って来たのは伯爵ではなく、伯爵夫人であった。
伯爵夫人は申し訳なさそうに夫はどうしても仕事でと話していたが、むしろいなくて良かったと思っていた面々は歓迎した。
改めてそれぞれに自己紹介をし、初めてロミの姿を見た両親とデイルースは、大人しそうではあるが、口角が上がっているおかげか可愛らしいと好意的であった。
特に母親は控えめなロミを磨けば光る逸材だと見抜き、着飾って美しくしようと張り切っていた。
そして、エドワースとロミはあの街中で会った以来、初めて顔を合わせた。
「婚約を申し込んだ私がこんなことを訊ねるのもおかしなことだが、婚約には納得しているのだろうか」
「はい」
ロミは小さく頷き、目も合わせない様子にエドワースは戸惑うしかなかったが、ロミにとってはこの前、急に抱きつかれた男でしかないために、無理もないだろうと受け入れていた。
「そうか、恋人とは話せたのか?」
「いっ、いいえ」
ロミは今度は小さく首を振った。
「それはいいのか?」
「ずっと連絡が取れていなかったものですから」
「そうか」
最後に会って話をしたと聞いたら、それはそれで不愉快な気持ちにはなったが、会っていないと聞くとそれでいいのかと矛盾した気持ちになった。
「申し訳ありません」
「いや、恋人のことを責める気はない。私もいたことがある」
番がいる可能性を考慮して、エドワースには婚約者はいなかった。それでも、多くはないが恋人ができたことはあった。
「今はいないのですか?」
「いや、いない」
「そうですか……」
婚約を申し込んでいるのだから、いないに決まっていると思いながらも、ロミが残念なのか、嫌な気持ちなのか、表情が変わらなさにエドワースには分からなかった。
「あの、私が本当に運命なのでしょうか?」
初めてロミがエドワースの目を見て、問い掛けた。その瞳にはやはり怯え、恐怖が浮かんでいるように見えた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
本日もお読みいただきありがとうございます。
本日も1日2回、投稿させていただきます。
次はいつもの17時です。
珍しく穏やかに書いておりますが、
少しずつ毛色が変わって来ます。もうしばらくお待ちください。
どうぞよろしくお願いいたします。
「ご両親と話をして来ました」
エレット公爵家側もさすがにしばらく時間が掛かるだろうと思っていたために、あまりに早い返事に驚いていた。
「恋人は留学しており、連絡も取っていないような関係だったようで、恋人なんて言っておりましたが、その程度の関係だったということです。そんな娘をもらっていただけるのならば、私としては感謝しかありません。あちらとも穏便に話はついておりますから、心配いりません」
高笑いが聞こえそうなほどベルブルー伯爵は上機嫌であった。
ただそれでもエレット公爵家にも好都合であったために、エドワースとロミの婚約は成立した。
「娘も20、いや、21歳?ですから、結婚式も早々にいたしましょう」
両親も依頼した調査書をエドワースに見せてもらっていたために、伯爵がロミに興味がないことは知っていたが、年齢も分かっていないのかと察した。
しかも、結婚を急いでいるのは家から早く出したいだけだろうとしか思えなかったが、逆にロミを早めに出してあげた方がいいのではないかと感じるほどであった。
「公爵家にも慣れていただいた方がいいでしょうから、学びも兼ねていらしていただくことはできますでしょうか」
「それはよろしいですね、すぐにでもやりましょう」
「いえ、それはお仕事もあるでしょうから」
「すぐに辞めさせますから、大丈夫ですよ」
「それは、さすがにセルリッツ侯爵家に失礼でしょう」
「っえ、あ、そうですね、ははははは」
おそらくロミがセルリッツ侯爵家で働いていたことも忘れていたのだろう。すっかり伯爵は信用ならないと判断されることになった。
婚約が決まりつつあることはエドワースにも伝えられていたが、嬉しい反面、本当に良かったのだろうかと思ってもいた。
そして、ロミがエレット公爵邸を訪れる日になった。
付き添って来たのは伯爵ではなく、伯爵夫人であった。
伯爵夫人は申し訳なさそうに夫はどうしても仕事でと話していたが、むしろいなくて良かったと思っていた面々は歓迎した。
改めてそれぞれに自己紹介をし、初めてロミの姿を見た両親とデイルースは、大人しそうではあるが、口角が上がっているおかげか可愛らしいと好意的であった。
特に母親は控えめなロミを磨けば光る逸材だと見抜き、着飾って美しくしようと張り切っていた。
そして、エドワースとロミはあの街中で会った以来、初めて顔を合わせた。
「婚約を申し込んだ私がこんなことを訊ねるのもおかしなことだが、婚約には納得しているのだろうか」
「はい」
ロミは小さく頷き、目も合わせない様子にエドワースは戸惑うしかなかったが、ロミにとってはこの前、急に抱きつかれた男でしかないために、無理もないだろうと受け入れていた。
「そうか、恋人とは話せたのか?」
「いっ、いいえ」
ロミは今度は小さく首を振った。
「それはいいのか?」
「ずっと連絡が取れていなかったものですから」
「そうか」
最後に会って話をしたと聞いたら、それはそれで不愉快な気持ちにはなったが、会っていないと聞くとそれでいいのかと矛盾した気持ちになった。
「申し訳ありません」
「いや、恋人のことを責める気はない。私もいたことがある」
番がいる可能性を考慮して、エドワースには婚約者はいなかった。それでも、多くはないが恋人ができたことはあった。
「今はいないのですか?」
「いや、いない」
「そうですか……」
婚約を申し込んでいるのだから、いないに決まっていると思いながらも、ロミが残念なのか、嫌な気持ちなのか、表情が変わらなさにエドワースには分からなかった。
「あの、私が本当に運命なのでしょうか?」
初めてロミがエドワースの目を見て、問い掛けた。その瞳にはやはり怯え、恐怖が浮かんでいるように見えた。
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本日も1日2回、投稿させていただきます。
次はいつもの17時です。
珍しく穏やかに書いておりますが、
少しずつ毛色が変わって来ます。もうしばらくお待ちください。
どうぞよろしくお願いいたします。
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