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愛してはいけない人
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翌朝、レイラは朝食の時間に、いつも通りに現れた。使用人も居たたまれなさで、悲痛な表情を浮かべている。
「もう大丈夫だろうか?」
「はい、治まりましたので」
「いつもあのようになるのか?」
「大丈夫なケーキもあるのかもしれませんが、概ね苦しくなります。菓子類は出ないと思っていたので、迂闊でした」
「君のせいではない」
菓子は食べないとされていたのに、出してしまったのはこちらの落ち度だ。見ることも出来ないのなら、食べれないのは当たり前のことだ。
「気付いたのは、事件の後でケーキを出された時でした。視界に入った途端に、苦しくなってしまって。でも匂いはしませんし、見ないようにすれば治まります。目も悪いですから」
「すまなかった…」
「いいえ、使用人の皆さんは食べて貰って構わないとしてくださいね」
「ああ、そのように」
その後、菓子類は速やかに使用人で食べるか処分することになった。
レイラは配慮されながら、生活を送り、一年が過ぎていた。妹・ルビーナとだけは文のやり取りをしている。
「レイラ夫人はいかがかしら」
「無事、過ごしております」
クノルに訊ねたのはフルヴィア王女、現在はフルヴィア皇太子妃。レイラとは元々親しいわけではない。
フルヴィアは一方的に悲劇の伯爵家で、被害を受けた令嬢という認識で、レイラも新聞などで顔を知る程度の間柄である。
「それは良かったわ、会うのは難しいわよね?無理にというわけではないわ」
「はい…使用人とも距離を置いて付き合っておりますし、あまり刺激したくないのは確かです」
「そうよね、妹君は懐妊されたと聞いたけど、帰ったりは難しいの?」
「妹君がですか?」
「私も友人からの手紙で知ったの。もうすぐ生まれるそうよ」
「そうでしたか…」
フルヴィアは知らなかったのかと驚いた、食事は一緒にしていると聞いていたが、会話がないのだろうか。
「会話も難しいの?」
「そのようなことはありませんが、言い出し辛かったのかもしれません」
「そうね…私も無神経なことは言えないけど、会わせてあげたい気持ちはあるわ。初産で、お姉様がいたら安心でしょうからね」
年齢はレイラの方が上だが、フルヴィアは学園に通っていたが、レイラは通うことは困難で、家庭教師に教えてもらい、社交も出来ない、親しい友人もいない二人に接点はなく、キア皇国に来てからも、邸から出ないレイラと会うことはない。
「帰って聞いてはみます。帰りたいというのなら、帰らせます」
「苦しそうね、やっぱり離れるのは辛い?」
「喪失感で一杯にはなります。でも唯一の残された家族は妹君だけですから」
クノルは食事の際に訊ねることにした。正直、会話はこの時しかする機会がない。
「妹君が妊娠したと聞いたのだが」
「ええ、そうです。そろそろ生まれると思います。どなたか、経産婦の方にでも祝いを選んで来てはいただけませんか?」
「ああ、それは構わないが…」
「食べる物以外でお願いします」
「分かった、君も帰りたいと思うかい?」
「いいえ、私はいても何も出来ませんから、移動も酷く痛みますし、妹も分かってくれています」
「そうか…だが、生まれたら会いたいと思わないのか?」
クノルは嬉しいような、会いたいだろうという、複雑な気持ちになった。
「そうですね、機会があれば会いたいとは思いますが、妹をこちらに来させるわけにはいきませんから」
その手があったかと思った、レイラを帰すことばかり考えていた、すぐには無理だろうが、しばらくしてであれば、可能ではないだろうか。
「馬車であれば、護衛も付けて、きちんと手配する」
「いいえ、止めてください。母といい、私といい、番だと認められた家系です。失礼ですが、獣人の方が多くいる国には…妹だけでも触れさせたくないのです」
「…あっ」
子どもが生まれたのに、妹君まで番だと言われてしまったら、母君の二の舞になることを恐れていたのだ。
「そうだな、祝いはきちんと選んでおく」
「ありがとうございます」
「もう大丈夫だろうか?」
「はい、治まりましたので」
「いつもあのようになるのか?」
「大丈夫なケーキもあるのかもしれませんが、概ね苦しくなります。菓子類は出ないと思っていたので、迂闊でした」
「君のせいではない」
菓子は食べないとされていたのに、出してしまったのはこちらの落ち度だ。見ることも出来ないのなら、食べれないのは当たり前のことだ。
「気付いたのは、事件の後でケーキを出された時でした。視界に入った途端に、苦しくなってしまって。でも匂いはしませんし、見ないようにすれば治まります。目も悪いですから」
「すまなかった…」
「いいえ、使用人の皆さんは食べて貰って構わないとしてくださいね」
「ああ、そのように」
その後、菓子類は速やかに使用人で食べるか処分することになった。
レイラは配慮されながら、生活を送り、一年が過ぎていた。妹・ルビーナとだけは文のやり取りをしている。
「レイラ夫人はいかがかしら」
「無事、過ごしております」
クノルに訊ねたのはフルヴィア王女、現在はフルヴィア皇太子妃。レイラとは元々親しいわけではない。
フルヴィアは一方的に悲劇の伯爵家で、被害を受けた令嬢という認識で、レイラも新聞などで顔を知る程度の間柄である。
「それは良かったわ、会うのは難しいわよね?無理にというわけではないわ」
「はい…使用人とも距離を置いて付き合っておりますし、あまり刺激したくないのは確かです」
「そうよね、妹君は懐妊されたと聞いたけど、帰ったりは難しいの?」
「妹君がですか?」
「私も友人からの手紙で知ったの。もうすぐ生まれるそうよ」
「そうでしたか…」
フルヴィアは知らなかったのかと驚いた、食事は一緒にしていると聞いていたが、会話がないのだろうか。
「会話も難しいの?」
「そのようなことはありませんが、言い出し辛かったのかもしれません」
「そうね…私も無神経なことは言えないけど、会わせてあげたい気持ちはあるわ。初産で、お姉様がいたら安心でしょうからね」
年齢はレイラの方が上だが、フルヴィアは学園に通っていたが、レイラは通うことは困難で、家庭教師に教えてもらい、社交も出来ない、親しい友人もいない二人に接点はなく、キア皇国に来てからも、邸から出ないレイラと会うことはない。
「帰って聞いてはみます。帰りたいというのなら、帰らせます」
「苦しそうね、やっぱり離れるのは辛い?」
「喪失感で一杯にはなります。でも唯一の残された家族は妹君だけですから」
クノルは食事の際に訊ねることにした。正直、会話はこの時しかする機会がない。
「妹君が妊娠したと聞いたのだが」
「ええ、そうです。そろそろ生まれると思います。どなたか、経産婦の方にでも祝いを選んで来てはいただけませんか?」
「ああ、それは構わないが…」
「食べる物以外でお願いします」
「分かった、君も帰りたいと思うかい?」
「いいえ、私はいても何も出来ませんから、移動も酷く痛みますし、妹も分かってくれています」
「そうか…だが、生まれたら会いたいと思わないのか?」
クノルは嬉しいような、会いたいだろうという、複雑な気持ちになった。
「そうですね、機会があれば会いたいとは思いますが、妹をこちらに来させるわけにはいきませんから」
その手があったかと思った、レイラを帰すことばかり考えていた、すぐには無理だろうが、しばらくしてであれば、可能ではないだろうか。
「馬車であれば、護衛も付けて、きちんと手配する」
「いいえ、止めてください。母といい、私といい、番だと認められた家系です。失礼ですが、獣人の方が多くいる国には…妹だけでも触れさせたくないのです」
「…あっ」
子どもが生まれたのに、妹君まで番だと言われてしまったら、母君の二の舞になることを恐れていたのだ。
「そうだな、祝いはきちんと選んでおく」
「ありがとうございます」
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