【完結】あわよくば好きになって欲しい(短編集)

野村にれ

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私の恋、あなたの愛

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 距離を取っても、ルノーを思い出すことはなくなったわけではなかった。でも彼にとっては友人が一人減っただけだろうと思うと寂しくもあった。

 マイニーから聞いた後、告白をしてしまう前に、女性がやって来て去ってから、ルノーにわざと聞いたことがあった。

「恋人は作らないの?」
「恋人は要らない。僕には面倒なだけだから」
「そっか」
「うん、運命の相手とか、一人だけとか、楽しく過ごせたらそれでいい。でもシエルは素敵な恋をしたらいい。誠実な相手がいいんでしょう?」
「うん、そうだね」

 前にルノーに、どんな人が好みか聞かれた時に、誠実な人と答えていた。その言葉に嘘はない。

「番とか?」
「それはない。番とかじゃなくて、誠実な人がいいな」

 獣人を先祖に持つ以上、番という繋がりがこの国にはある。

 見た目はヒトと何も変わらないが、血筋の影響を受け継ぐ者や、優れた特徴を持つ者もおり、優生者と呼ばれる。

 優生者は、嗅覚が優れている者が多く、それは唯一の番を見付けるためだと言われており、ルル王国でも番探しのパーティーも公に開かれている。

 このパーティーは、両者がパートナーを求めているパーティーであるため、求めない者は参加しない。

 そして番というのは他者には分からない感覚であったが、近年は詐欺などの事件も起こり、唾液から番であるかは判別できるようになった。

 先祖の血が薄くなっている影響や、元々番への感覚が薄い獣人もおり、番ではなくていいという者や、家の関係で婚約者がいたり、番とは関係なく好きな人がいる場合は、その相手と結婚する者も増えている。

 番と結ばれなくても、抑制剤を服用すれば、衝動は抑えられる程度になっているため、攫ったりその場で襲ったりということはない。

 そして三十歳を過ぎると、番になっていない番は、徐々に認識できなくなると言われており、女性側は子どもを産むと、男性側は認知できなくなることが多い。

「きっと君は幸せになるよ」
「ルノーはならないの?」
「僕は自由でいたい」
「番が現れても?」

 ルノーが優生者かどうかは知らないが、番が見付かったら、夢中になるのかもしれないと思った。

「僕も番は興味ないよ」
「じゃあ、色んな人と?」
「うん、恋とか、愛とか、感情が絡むと疲れるからね」

 その言葉に本当に彼は割り切った相手と、自らの意思で、関係を持っているのだと実感した。どうやって相手を見付けているのだろう?どうやって誘っているのだろう?と思ったが、聞いても苦しくなるだけだから聞かなかった。

 割り切った相手が、本気になったら捨てられてしまうのかもしれない。

 でももしかしたら、その中に本気になる相手もいるかもしれない。

 考えれば考えるほど辛くなっていった。だからこそ、言ってしまったのだ。私の恋を終わらせるために。

 学年が上がって、学舎が変わると全く会うこともなくなった。シエルも目の前のことで精一杯で、思い出すことも減り、マイニーには失恋に効くのは、時間と新しい恋だと言われてはいたが、そんな余裕もなかった。

 マイニーは恋人が今はおらず、番探しパーティーにも出席するそうだ。私は番は要らないので、参加はしない。

 パーティーの翌日、マイニーはが鼻に皺を寄せて、おかしな顔をしていた。番だとでも言われたのだろうか?それにしても、微妙な顔である。

「何かあったの?」
「言おうか、言わないでおこうか迷ったけど、失恋は癒えているよね?」
「もう思い出すこともほとんどないかな」
「じゃあ、微妙かな」
「恋人でも出来たって?それでも変わらないよ?」
「あの男、パーティーに参加してたの!ビックリしちゃった!」
「ええ!」
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