【完結】あわよくば好きになって欲しい(短編集)

野村にれ

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私の恋、あなたの愛

36(終)

「どういう、こと?」
「パリム子爵夫妻には、私を含むフロランツア侯爵家に接触禁止となっていたのです。それを破れば、母の持参金を返す約束になっていたのです」

 マリアもルーカンもフロランツア侯爵家からの持参金がいくらかは知らないが、高額であることは分かる。

「母は持参金を離婚時に返せばあの時点で、没落まっしぐらでしたから、返さなくていいと言ったのです。私は信じられませんけど、フロランツア侯爵家もお金に困ってはいませんでしたからね、接触禁止の約束で承諾したのです。でも私が餌を撒けば、すぐに釣れたでしょうね、でもしなかっただけ」

 パリム子爵、ランダー夫人を煽ることは簡単に出来たが、しなかった。あの日、勝手に突っかかって来て、自滅した。

「あの夫人も今からでも逃げるかもしれませんね、結局、お金があったから、あると思ったから、押し掛けて来たんですよね。まあ、逃げても借金は半分ずつになっていますから、追って来ますけどね」

 弁護士がきちんと、パリム子爵とランダー夫人の折半で、借金としている。買い物が出来なくなり、使用人がいなくなり、邸もいずれ取り上げられることだろう。

 息子の方は知らないが、キューミュアは耐えられないだろう。

「マリア夫人にとって、やっぱり地位やお金があってこその番なのでは?」
「違うわ!」
「ではルーカン様と一緒に静かに暮らせばいいじゃないですか」
「そ、それは…」
「あなたたちは実際、運は良かったと思いますよ。ルノーはまだ親だと思っているもの。私はとてもではないけど、パリム子爵を父親だとは思えない、死んでもそうかとしか思わない」

 借金苦で死ぬかもしれないが、どうでもいい。

「依存であっても、仕方がなくても、番によって一人になって、苦しみから解放されなかった人もいるのです」
「…あ」

 マリアとルーカンはソフィーに連れられて帰って行った。四人は今さらだが、それぞれに離縁することになった。

 ソフィーは実家に戻り、デビットはルリアーナが継いだら隠居し、マリアはルーカンと結婚する気らしいが、ルーカンは貴族の暮らしを手放せず、結婚する気は特になかったようで、揉めている。マリアとルーカンは似た者同士だった。

 フロランツア侯爵家以外の者は知らないが、母・シルフィーは病死に近い自殺である。苦しさから解放されようと、薬の過剰摂取で、亡くなった。ソフィーを助けたというのが嘘のように、あんな男を最期まで愛していたからこそ、弱ってしまった。

 私では救えなかった。

 だから、私は番にはならない。番だと求められ、逃げられなければ殺して、マイニーにはここまでしか言っていないが、その後に自殺しようと思っていた。

 まさかこんな形になるとは思わなかったが、ルノーには絶対に番だと扱わないことを約束させた。扱った時点で、偽装結婚も終わりだと言ってあり、表向きは守ってくれている。

 そう、表向きなのだ。ルノーも自由にするように言ってあるが、あの頃が嘘のように女性と遊ぶこともない。

 子どもたちにはいいことではあるが、私としては時には自由に過ごして欲しいと思い、私も男性と食事に出掛けている。相手は看護師や医師で、デートではなく、飲み会である。そのことをルノーが、苦しく思っている分かっている。

 でも私にとってルノーは、憎むべき番というものになってしまった。前の友人のような関係性にはなっているが、二度と好意を持つことはない。 

「恋人は要らない。僕には面倒なだけだから」「楽しく過ごせたらそれでいい」「僕は自由でいたい」「恋とか、愛とか、感情が絡むと疲れるからね」と言った時、私の苦しかった気持ちの仕返しもしているのかもしれない。

 だって、あなたの本当はあの頃の気持ちで、愛だと思っている気持ちは番によって作られた偽物だから。


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最後までお読みいただきありがとうございます。

今回もハッピーエンドとは言い難いことになり、
見切り発車で始めてしまったので、
思ったより長くなってしまいました。

次の話をどうしようか、まだ考え中です。

ひとまず、ありがとうございました。

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