【完結】あわよくば好きになって欲しい(短編集)

野村にれ

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もう二度と

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 少し落ち着き出して、話が出来るようになったミファラは、大丈夫だと伝えたが、執事・カールはシュアンに私がいない時に何かあったら、すぐに侍医を呼ぶように言われていたために既に呼んでいた。

「いつ頃からですか」
「一時間前くらいに急に苦しくなっただけです。もう大丈夫です」
「呼吸が苦しくなったのですか?」
「はい、でも今は治まりました。わざわざ来ていただき、申し訳ございません」
「仕事ですから、気にされないでください。今回は久し振りですか?」

 ミファラは何度か息が上手く出来ない状態になって、侍医を呼ばれたことは、ここへ来た最初の時に何度かあり、精神的な問題だろうと判断していた。

「はい」
「今日はゆっくり休んでください」
「ありがとうございます」

 侍医は妊娠中もミファラを診ていたが、その時よりも穏やかになっていることに違和感を感じ、ミファラの部屋を出て、使用人に話を聞くことにした。

「先程のことは事実ですか?」
「ほとんどお部屋にいらしたので、詳しいことは分かりません」
「見た方はいませんか?」

 手の空いている使用人を集めたが、皆、分からないと言い、執事と二人になった。

「何か重い病気なのですか?前と同じではないのですか?」
「同じとも考えられますが、重篤ではないと否定も出来ません」
「まさか…でも前も同じだったではありませんか」

 ぞんざいな扱いになっていたのにも関わらず、重篤と言われると焦り始めた。

「同じに見えても、別の病気ということも考えられます」

 今回は子どもが邸にいるストレスとも考えられるが、症状は久しぶりではない可能性がある。そうだとしたら、別の病気の可能性が高い。

「どうしたらいいのでしょうか」
「公爵様に直接、お話をした方がいいでしょう」
「いえ、私が責任を持ってお話をします」

 侍医はカールが動揺したことを見逃さなかった。そして、それはミファラへの心配ではなく、保身のためではないかと今の言葉で予測が出来た。これまではきちんと看ていたが、今は看ていなかったのだろう。

 これまで真面目に勤めていたことは知っている。だからこそ、このような状態になっていたことに、ミスを知られたくないと焦っているのだろう。

 本人が母親になることを拒んだとはいえ、子どもが生まれたら、用はないと言わんばかりではないかと感じた。

「そうですか、では無理をさせないようにと、診断を書いてお渡ししましょう」
「はい」

 侍医は診断を渡したが、シュアンが訊ねて来るだろうと思っていた。

 シュアンが帰って来ると、執事は呼吸困難になり、侍医に来て貰ったこと、無理をさせないようにすることを伝え、診断を渡した。中身も見たが、おそらく症状が書いてあるだけだった。

 以前も呼吸困難になった際に同じやり取りをしたことがあったために、シュアンも酷く驚く様子はなかった。

「彼女は眠っているんだな?」
「はい、休まれております」
「そうか…」

 シュアンは重い息を吐き出した。

「きっと、前と同じですよ」
「なぜそう言い切れる?」
「何度もあったじゃないですか、確かに苦しそうで可哀想ではありますが、命に係わることではないと」
「そうだといいな」
「そうです、大丈夫ですよ」

 カールはきっと前と同じ症状だと、ただミファラにはゆっくり数日休むように言って、きちんと確認もした。その後は呼吸困難が起こることもなく、ホッとした。

 シュアンは翌日、緊張の面持ちで侍医の元を訪ねていた。

「いらっしゃると思っておりました」
「診断の書き方が違ったから、聞きに来るようにということではないかと思ったのだが、違うのか?」

 侍医はいつも分かり易く書いていたが、今回はわざとカルテのように書き記した。

「いえ、その通りございます」
「やはり何かあるのか?」

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