【完結】永遠の愛にはイロドリを

野村にれ

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喪失感

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 人は神から誕生を祝って、ギフトを授かって生まれて来る。

 ロングリノ王国でも、皆がギフトを持っていた。

 だが、目がいい、鼻が利く、舌が敏感など五感が多少優れた個性程度のものから、他者には絶対に出来ないようなギフトを持って生まれて来ることもあった。

 遺伝するものではなく、ランダムだと言われているが、使い方によっては人を傷付けることもあるが、ギフトで人を殺したりすることは出来ない。同時に、人を生き返らせることも出来ない。

 チェルシー・フェルニナも、珍しいギフトを持つ者であった。

 チェルシーは、一年前に騎士であった夫・ロインを亡くした未亡人だった。

 ダークブロンドの髪色に、ダークブルーの瞳、目に留まるような美貌を持ち、美しくないと言われても、負け惜しみにしか聞こえない風貌であった。

 だが、中身は快活で、育った環境によって少し意地悪でもあった。

 目の細いロインは、ライトブラウンのくせ毛の髪質で、ふんわりとした可愛らしい風貌で、二人が並ぶとお似合いに見えて来るほど、二人は公の場ではいつも一緒で、とても仲の良い夫婦であった。

 ロインは集中豪雨の災害支援に行っていた先で、二次災害に巻き込まれた不幸な事故であった。

 ロインは穏やかで、優しい男であった。チェルシーはロインよりも一つ年上で、チェルシーが家を支えていた。

 結婚して二年が経っていたが、二人には子どもはいなかった。

 チェルシーはロインの死で絶望というものを、初めて知ることになった。

 励まされても、その時はそうよねと思っても、ふとロインがいないことに喪失感を感じるという日々を送ることになった。

 だが、誰よりもロインが仕事に誇りを持っていたことを知っており、悲しい気持ちも、喪失感も当然だったが、ロイに恥じないように前を向いて生きて行こうと、一年経つ頃にはようやく思えるようになっていた。

 ロインがフェルニナ伯爵家を継ぐ予定だったが、ロインの弟であるリオイが継ぐことになった。

 二人は仲の良い兄弟で、チェルシーとも仲が良く、義両親もリオイの妻・エイミーもチェルシーを慕っており、このままフェルニナ伯爵家にいて欲しい、横に邸を建てればいいと言い出すことになった。

 流石に自分だけのために建てることは申し訳なく、せめて家だけは別にさせて欲しいと、義両親やリオイが見付けて来た丁度売りに出ていたフェルニナ伯爵家から近い、庭付きの小さな邸に引っ越すことになった。

 まさにスープの冷めない距離である。

 ロインと二人で使っていた物も移動し、ロインの残してくれたお金とチェルシーのお金で購入したが、他の者は義両親とリオイとエイミーが引っ越し祝いだと足りないものを購入してくれた。

 チェルシーはあまりに早く人生を共に歩む相棒は失ったが、心の中には笑顔のロインが生き続けている。それに二人で飼っていた三匹の犬、三匹の猫もいる。

 生家であるトートレイ伯爵家と折り合いが悪いわけではなかったが、個性の強い家族であったために戻る選択肢はなかった。

 だが、ある日、チェルシーは買い物に行った先で、学園で同級生だったシルヴァル・フォストに声を掛けられることになった。

「チェルシー嬢」
「フォスト様、こんにちは」

 シルヴァルはフォスト侯爵家の嫡男で、ブロンドの髪にブルーの瞳で、精悍な顔立ちをし、目立っている存在ではあった。

 だが、チェルシーとは挨拶を何度かした程度であり、わざわざ声を掛けるような間柄ではない。

「少し話がしたいのだが、よろしいだろうか」
「話ですか?」
「ああ、大事な話なんだ」
「は、い」

 チェルシーは護衛を連れているシルヴァルと共に、喫茶店の個室で向き合うことになった。護衛は扉の前で待っているので、実質二人きりであった。

「大事な話とは何でしょうか?」
「実は私には愛する人がいるんだ」
「はあ」

 恋愛相談でもされるのだろうか、私の知り合いなのだろうかと、チェルシーはやる気のない返事をするしかなかった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

お読みいただきありがとうございます。

またも新しい話を書きたい気持ちが沸き上がり、
現在、連載中の一作に終わりの目途が立ったので、
書き始めたいと思います。

いずれ書いてみたいと思っていた契約結婚にまつわる話です。

本日はスタートダッシュとハッピーホワイトデーということで、
1日2話、投稿いたします。次は17時です。

よろしければ、どうぞよろしくお願いいたします。
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